飛んで火に入る夏の虫

 外で蝉が鳴いている。ミーンミーンと耳障りな鳴き声が、全開にした窓から入り込んで、鼓膜に突き刺さる。東京コンクリートジャングルだとは思えない程、ここは僻地だ。夏になると蝉が煩いのは、もはやここでは普通のことだ。
「あっちーんだけど、この部屋」
「だったら自分の部屋に戻ったら」
「やだ」
 傑の提案に、隣に座る親友兼恋人はぷるぷると首を横に振った。動きに合わせて白い髪が揺れる。ちらりと視線をやれば、首筋に薄らと汗が浮いている。それはきっと自分も同じだ。首の辺りはずっとべたべたしているし、何なら脇やら背中やらも汗で湿っている。不快な湿度と気温がじっとりと身体に纏わり付いて、座って報告書を書いているだけでも次々と汗が出て来る。
 部屋の端から懸命に風を送ってくれる扇風機だけでは、もはや真夏の暑さに対処出来ない。扇風機から送られて来る風は生温く、室内の暑い空気を無駄に掻き回しているだけだ。空気が淀んでいる。
 爽やかな夏なんて言い出したの誰だよ、と思う。爽やかさなど欠片もない。ただひたすらじめじめじとじとの不快な季節だ。日差しもきつい。
「エアコンいつ直るんだよ」
「業者も混み合ってるらしくて明後日まで来れないみたい。あと二日はこのまま」
「まーじーでー?」
 悟はうげっと思い切り顔をしかめて見せた。綺麗な顔が台無しである。台無し……の筈だが、どんな表情をしていても可愛いと思ってしまうのは、なかなかにヤバいと自分でも思う。暑いからだろうか。今なら全部暑さの所為と言い訳しても許されるだろうか。
「ていうか、暑いんだったらそんなにくっつかなくてよくない?」
 任務の報告書を書くでもなく、悟はさっきからやたらと傑の近くに座って肌の何処かを必ず傑の肌と触れ合わせている。今は腕同士がくっついている。お陰でくっついた部分だけが余計に暑い。暑苦しい。
「え? 何で?」
 本気で意味が分からないというように、悟がこてんと首を傾げた。汗で濡れた白い首に、やたらと目が行ってしまう。一瞬、舐めたらどんな味がするんだろうと想像してしまった。しょっぱいだろうか。舐めたら悟はどんな反応をするだろうか。煩悩を振り払うように軽く頭を振って、傑は報告書に目を戻した。
「そうだ、夏っぽいことしようぜ」
「……いきなりだね。私今報告書書いてるんだけど」
 夏っぽいことって何だ。花火とか、プールとかだろうか。何にせよ、報告書を書き終わってからだ。と思いながら、悟には目を向けずに暗に今は無理だと告げる。と、いきなり横から伸びて来た手にぐいと手首を掴まれた。お陰で文字を書き損なって、シャープペンシルの黒い線が報告書を斜めに横切った。舌打ちしたくなる。
「さとる、」
「セックスしようぜ!」
「……」
 いきなり何を言い出すんだ、この男は。暑さで頭イカれたんじゃないのか。
 まじまじと悟を見る。普段はサングラスに隠されている特殊な青い目が爛々と輝いている。それはそれは楽しそうに。
「私報告書書いてるんだけど」
 さっきと同じ言葉を冷静に繰り返すも、こういう楽しそうな顔をしている時の悟は聞く耳を持たない。傑の腕を掴んで自分の方へ引っ張りながら、いいからいいから、と言う。全然良くない。
「ねえ、それの何処が夏っぽいことなの? こんな暑い部屋で昼間からセックスなんて」
 狂気の沙汰だ。だが全く乗り気ではない傑にはお構い無しに、悟は「だって夏っぽいじゃん! 暑い時に暑い部屋でセックスなんて、夏にしか出来ないだろ!」と言う。意味が分からない。そんなことする必要が全くない。
 学生が考える『夏っぽいこと』って、もっとこう、爽やかなものじゃないのか。夏祭りとか花火とかプールとか海とか。全然爽やかじゃない爛れたことを、明るく爽やかな笑顔で言わないで欲しい。と、夏なんて全然爽やかじゃないと考えていた癖に、悟の考えを爽やかな方面へ持って行けないかと思案している自分に気付く。でもやめた。馬鹿馬鹿しい。悟の考えを軌道修正するなんて不可能だ。だが悟の考えに付き合う気もない。
 傑ははあ、と溜息を吐いた。悟が突拍子もないことを言い始めた所為で、いや、もしかしたら暑さの所為かも知れないが、軽く頭痛がして来たかも知れない。
「悟、それは駄目だ。こんな暑い時にすることじゃない。熱中症になるかも知れない。セックスしてて熱中症になるなんて間抜け過ぎて悟も嫌だろ」
「それ、正論? 俺、正論嫌いなんだよね」
「は?」
 胡乱げな眼差しを悟に向けてしまった。悟は薄く笑みを浮かべ、挑発するように小首を傾げた。扇風機から送られて来る生温い風が、汗で少し濡れてぺとりと額に貼り付いている悟の前髪を皮膚からぺりっと引き剥がした。首筋を伝う汗がTシャツの生地に吸い込まれていく。Tシャツは、汗で濡れて少し皮膚の色が透けている。
 ムラ、とした。暑さの所為だ。全部暑さの所為だ。
「もしかして正論で論破してヤらないようにするのって、暑さでへばって勃たないから? 傑くんのすぐるくんはそんなショボいの? インポかよ。ウケる」
 ぎゃは、と悟が品のない笑い声を上げた。ぶち、と頭の中で何かが切れる音がした。暑いからだ。


 ずぷんっ♡と一気に奥まで怒張をねじ込む。きゅうう♡と悟のなかが己の勃起に吸い付いて来るのが堪らない。蕩けた顔の悟がベッドの上で身を仰け反らせ、普段決して聞くことのない、傑とこういうことをしている時に傑しか聞けない甲高い喘ぎ声を上げた。
「ッあ♡♡♡あ゛ッ♡や♡♡♡だめ、はあ゛……ッ♡♡♡」
 びゅ♡♡♡びゅ♡びゅるるるるる♡♡♡♡
 白い性器の先から白濁が勢いよく飛ぶ。あまりにも勢いが良すぎて、傑の腹にも悟の腹にも、悟の顔にまで飛んでいる。
「はは……。挿れただけでイッちゃったの? 可愛い」
「う、るさいい……っ! だまれ、ばか、」
 自分の精液を顔に受けて、悟が嫌そうに顔をしかめるのが可愛いから、つい意地の悪いことをしたくなる。だから、悟の唇に付着した白い塊を指で掬って、はあはあと息を乱している悟の中途半端に開いたままの口の中に突っ込んだ。
「ん゛、むぅ゛……ッ♡」
 不味そうに思い切り眉根を寄せる。ふふ、と口から笑みが零れた。悟の涙目がこちらを睨め上げるのは、劣情を煽ることにしかならない。舌に精液を塗りたくるように指を動かしながら、張り詰めたもので悟のなかを掻き回す。ローションが泡立って、ぐちゅぐちゅと濡れた音がした。
「っあ、すぐる……♡ま、待って、」
 傑の腕を掴んで無理矢理口から指を引き離した悟が、狼狽したような声を出す。傑はあえて抗わずに手を引っ込めて、代わりに両手で悟の腰を掴んだ。汗で濡れた肌が、しっとりと手の平に吸い付く。悟の肌は熱く、その熱がこちらに伝わるかのように、傑の頭の中もぐつぐつ沸騰する。いや、というか単に部屋が暑い所為かも知れない。部屋が暑いだけでムラムラするなんて、情緒がないし意味も分からないので、悟の興奮がこちらにも伝わっているのだということにしておく。
「っねえ、今イッたばっか、あ゛ぁ゛♡♡う、」
 浅い場所までずろりと引き抜いたものを、また奥まで埋める。ぱちゅん♡と濡れた音が響いて、悟がびくびくと痙攣した。内壁がきゅうきゅうと竿にも亀頭にも吸い付いて来て、貪欲に精を搾り取ろうとする。頭の奥が、じんじん痺れた。痺れる脳に、ミーンミーンと蝉の声が何処か遠くから木霊する。
 そういえば蝉が鳴くのって、求愛行動なんだよなと、ふとどうでもいいことを考える。ミンミン鳴き続けてセックスして子孫を残して、成虫になった一週間後にあっけなく死ぬ。儚い。儚い生き物の煩い鳴き声を聞いていると、自分も儚い命を生きているような謎の錯覚に陥った。
 暑い夏にセックスしたくなるのは、生存本能なのかも知れない。暑さで死ぬかも知れないから、その前に子孫を残したいという本能。……いや、そんな訳はない。駄目だ。暑いから、暑い時に余計に暑くなるようなことをしているから、脳味噌が茹だって思考が纏まらない。
「私はまだイッてない」
「っで、も、もう、無理ぃ……ッ!♡やだ、やだぁ゛♡♡」
 また悟の性器が硬さを取り戻している。先端に纏わり付いた白濁の間から、とろとろと透明な先走り汁が零れる。膨れた前立腺をごりごりと容赦なく擦りながら、性器に手を伸ばして握る。精液と先走り汁を絡めるようにして上下に扱けば、汗ばんだ手の平が忽ち悟の体液で濡れる。ぐちゅ♡ぬちゅ♡と卑猥な音が立ち、汗を吸って濡れたシーツの上で悟がビクッ♡ビクッ♡と身を跳ねさせた。
「はひ♡い、一緒にするのだめぇ゛♡♡あ゛っ♡♡すぐる、」
「悟が言ったんだろ。暑い部屋でセックスしたいって。自分の言ったことに責任持ってよ」
「も、正論うざい……! だめって♡ひいん゛ッ♡♡♡」
「またイきそう?」
 悟の耳元に唇を寄せて、そっと囁く。悟は赤い顔でぷるぷると首を横に振った。だが敏感な身体はがくがく震えて、なかが熱くうねって必死で快感を貪っている。このままなかを穿ちながら前も一緒に扱いたらすぐイッてしまうだろうからと、珍しく手加減してみようと、傑は性器からするりと手を離した。
「っあ……♡」
 触れて欲しそうに、ねだるように、物欲しそうな目がこちらを見上げる。中途半端な量の餌を気まぐれに与えられて、満腹にはならないままお預けを食らった犬のような、飢えた目。目尻に浮いた涙の味が無性に知りたくなって、べろりと舐めた。しょっぱい味がする。
「すぐる、……ッうあ♡あ、や……ッ♡」
 首筋に浮いた汗を舐める。こちらもしょっぱい。しょっぱい体液が起爆剤になったかのように、腹の中で凶暴なけだものが生まれ、唸る。めちゃくちゃにしたくなる。ぴちゃぴちゃと舐めて、じゅるじゅると吸う。吸った場所の皮膚が赤く色付く。赤い花が咲いたみたいに。悟が身を竦めながらも、期待するように喉を鳴らした。
「すぐ、るう……♡♡も、あついぃ……ッ♡」
「うん。悟のなか、すごく熱い」
 きもちいいよと、耳に声と息を吹き込む。どろどろに蕩かすように、甘い言葉を囁く。そういう意味じゃない、と減らず口を叩くのを、唇で塞いで黙らせる。知ってる。暑い、という意味で言ったのを知ってる。知ってて、わざとなかが熱いといやらしい意味のことを言った。
 ちゅ♡ちゅ♡と吸って、舌を差し込む。悟の精液の味が、まだ少し悟の口の中に残っている。残滓を全部奪うように、口内を貪る。獣のようなキスを続けながら、腰を動かした。
「っんう゛♡う、っんん゛♡♡♡」
 ごり♡ごりゅ♡と前立腺を亀頭で抉る。張り出したカリ首でずりずりと擦る。ぴゅ♡ぴゅ♡と白い性器からカウパーが飛んで、腹にかかる。熱いし、暑い。汗が出て、垂れる。悟の身体に垂れて、悟の汗と混じり合う。ぞくぞくした。汗で濡れた肌と肌が密着して、擦れて、熱を生む。どこもかしこもどろどろで、不潔でしかない。こんな効率の悪い無意味な行為、不快かと思いきや、そうでもない。むしろ快感でさえある。
「すぐ、る♡うあ♡あ゛ッ♡や♡ちくび、だめ♡♡♡」
 つんと勃った乳首をこりこりと捏ねれば、悟はむずがるようにいやいやと首を横に振る。嫌がるようなそぶりを見せる癖に、なかはきゅ♡きゅう♡と媚びるように雄に絡み付く。誘われるままに前立腺をごりゅごりゅと擦りながら少しずつ怒張を奥へ埋める。ほんの少しの抵抗だけで、悟の後孔はぬぷぬぷと太いものを呑み込んでいく。
「だめ、って♡あ゛っ♡あ、こりこり、やら♡」
「嫌? 乳首弄ると、なか締まってきもちいいよ」
「や゛……ッ♡あ゛ッ♡も、もぉ、だめって♡♡ま、たイッちゃう、からあ゛♡♡」
「イけばいいだろ」
 粘膜をずるずる擦りながら、奥への道を少しずつ少しずつ開かせていく。悟に恐怖心を植え付けないように、快感だけを与えるように、少し進めてはまた引いて、またぬぷりと埋める。抽挿を繰り返す度、悟の腰が小刻みに震える。気持ちよくて堪らないという顔をして、必死で快感に抗うようにぎゅっと傑の腕を掴む。
「や、だ、……ッい、いっしょに、」
 理性が焼き切れるような感覚が走る。恋人の可愛らしいおねだりに、頭の奥が痺れる。悟の腰を両手で掴み、容赦なくなかを穿つ。膨れた前立腺を押し潰す。円を描くように、ぐるぐると撹拌する。掻き混ぜられた己の先走り汁やらローションが、ぐちゅ♡ぬちゅ♡♡と卑猥な音を奏でた。聴覚からも視覚からも、興奮材料を得る。目の奥で火花が散る。夏の夜の花火みたいに。
「っあ♡すぐる……♡♡ち○ぽ、きもちい♡ひい゛ッ♡♡ま、混ぜるの、らめ゛♡で、出ちゃ、あ゛ッあ゛っ♡♡♡♡」
「っう、」
 どぴゅ♡どぴゅ♡♡びゅ♡びゅるるるる♡♡♡
 濃くて粘ついた精液が、ほぼ同時に互いの性器から迸る。悟のものは傑の腹にべとりと付着して、傑の出したものは、悟の後孔の奥へと注ぎ込まれる。快感と征服感とが全身を支配した。
「あぁ゛ッ♡で、出て、う♡♡ひ♡あ゛っ♡しゅぐうのせえしあついい……♡♡」
 ビクン♡ビクン♡と嬉しげに痙攣しながら射精を続ける恋人の、なかが搾り取ろうとするかのようにきゅんきゅんと収縮を繰り返す。毒だ、と思った。それか、ドラッグ。中出しは悟の身体に負担になるからしない方がいいと分かっていても、やめられなくなる。ナマの方が気持ちいい。しかも、悟もそう思っている。だから、余計にやめられない。
「あ゛♡う……♡なかだひ、きもちい……♡」
 汗やら精液やらで身体を汚し、ぐたりと身体を弛緩させて濡れたシーツに身を沈める悟の汗で濡れた白い髪が白い額に貼り付くのを掻き分けて、額にも唇を落とす。汗の味が舌先に広がる。とろんと蕩けた目をしてこちらを見上げる悟の口端に、傑の汗が一滴落ちた。はあはあと荒い息を吐きながら、悟が無意識の動作のように、ぺろりと舌でそれを舐め取った。
 挑発する気なんて悟にはなかったかも知れない。だがその仕草はあまりにも卑猥で、脳の奥が感電したようにびりびりと痺れた。
「ッさとる、奥も、」
「っうえ?」
 間の抜けた声を発した相手の後孔から、まだ硬度を保ったままの雄をずるんっと引き抜く。抜かれる時に内壁にカリが擦れる感覚に、ビクンッ♡と悟の身体が反応する。
「っあ♡すぐる、」
 空洞になった穴から、どろりとさっき出した白濁がシーツに垂れた。まだ挿れて欲しそうに、ぬらぬら光る媚肉がひくん♡ひくん♡とひくついている。物欲しげな顔をしている癖に、続けて欲しいとは言いあぐねているような表情の恋人の腰を両手で掴み、ぐいと持ち上げる。
「え、ッな、なに、」
 混乱する悟の両膝の裏側から手を差し入れ、両足を大きく開かせてM字開脚の体勢を取らせた。中途半端に下半身だけ浮いたような体勢で、己の萎えたものがぷらぷら揺れているのが目に入り、羞恥に悟の顔が赤く染まる。後孔が傑から丸見えなのを意識したのか、媚肉がいやらしく誘うように淫猥に蠢く。
「すぐる、……この格好やだ、は、恥ずかしい、」
 ふる、と悟が首を横に振る。思わず微笑みながら、傑はベッドの上に立ち上がった。ぎ、と安物のベッドが軋む。
「私はこの体勢がいいかな」
 一度出してもまだバキバキに硬いままのものを、ひくついている悟の後孔にぬるりと押し付ける。亀頭を真上から入り口に押し当てれば、穴がぴとりと亀頭にキスするように吸い付いた。
「っえ、ちょっと待って、ッあ゛あ゛ー……ッ!?♡♡♡」
 まだ緩んだままの穴に、まだ硬いままの楔を真上から奥まで一気に突き入れた。抵抗もなく奥まで埋まる。どちゅ♡♡と奥の閉じられた扉に亀頭がぶつかって、そのまま強引に開かせて結腸まで押し込めば、ぐぽんっ♡♡と異様な音が部屋に響いた。
「あ゛ッ♡♡ひい゛っ♡♡♡らめ゛♡しゅぐりゅ♡♡お、奥、はいって、ッんや♡あ゛ッ♡」
 ビクッ♡ビクッ♡ビクッ♡とイッてしまったかのように悟の身体が痙攣し、なかがきゅうきゅう収縮して結腸口に嵌まり込んだ亀頭に絡み付く。しかし悟の性器は萎えたまま、精液は出ていない。ぴくぴくと震えながら、ピンクの亀頭から少量のカウパーをたらたらと零している。
「さとる、もしかしてメスイキしてる?」
「や゛♡あ゛ッ♡わ、かんない゛♡うあ♡♡おく、だめ♡♡」
「だめなの? 女の子のま○こみたいになってるけど」
 立ったまま腰を動かして、亀頭を結腸に出入りさせる。カリ首の段差で敏感な結腸口をずりゅずりゅと擦る。ぐぽ♡ぐぽ♡と不自然な音をさせて、悟の身体の一番深い場所を、真上から抉る。壊れたように悟の身体が何度も跳ねた。快感が脳髄まで突き抜けて、思わず熱っぽい息を吐いた。
「や、だ♡ま○こになるのらめ゛♡ぐぽぐぽ、らめってぇ゛♡♡♡」
「もうなってるだろ、これ。恥ずかしいのもとろとろのま○この中ち○ぽでほじられるのも、大好きな癖に」
「ひ、う♡♡しゅき♡♡♡きもひいい♡あ゛ぁ……ッ♡」
 むくむくと悟の性器が硬さを取り戻している。とろりとカウパーが垂れる性器に手を伸ばして、掴んでぐしゅぐしゅと扱いた。楔でなかをぐりゅぐりゅと撹拌し、カリ首を何度も結腸口に往復させる。悟が恍惚の表情で白い喉を仰け反らせた。
「あぁ♡う、も、一緒にするのらめ♡♡ま、またイッひゃう、あ゛♡んッあ、あ゛ッ♡♡♡」
 びゅるびゅると精液が弧を描いて、悟の顔にびしゃびしゃと掛かった。口にまで入り込んでしまったらしく、苦みに悟が顔をしかめる。快感と屈辱とに青い目に涙が滲んだ。綺麗な顔が汚くなって台無しで、台無しなのが可愛い。可愛いから、もっとぐちゃぐちゃにしたくなる。
「さとる、可愛い」
「は、あ゛……ッ♡すぐ、る、も、もうや゛ぇ、」
 精液とカウパーで汚れた亀頭にくちゅくちゅと指を這わせれば、悟が顔を歪めて身悶えた。イッたばかりの敏感な性器への愛撫だけでも堪らないのに、まだがちがちのままの傑の楔で上からどちゅどちゅと前立腺も結腸も叩き潰され、喉の奥から潰れたような汚い声が漏れ出る。
「あ゛ッ♡う゛♡♡ら゛め゛♡♡しゅぐりゅ、だめ出ちゃう、」
「何が出そうなの?」
「わ、かんないぃ゛……♡♡だめ♡もうゆるじ、――はあ♡あ゛っ♡あ゛んッ♡♡♡」
 ぐぽぉっ! と奥まで突き入れ、ぐりぐりと亀頭をしつこく捏ねる。びゅ♡と性器の先から透明な液体が勢いよく出て、一気にびゅーーーー♡♡♡と迸った。当然、重力に抗わずに自分の潮を顔面にびちゃびちゃと浴びることになって、悟が感じ入ったような顔のまま嫌そうに目を閉じて顔を背けた。
「あ゛♡うう、」
「私の、全部飲んで」
 びゅるびゅると濃く熱い精液を垂直に穴の深くに注ぎ込む。あまりにも深い場所へ出している所為で、もう掻き出せないんじゃないかと思うくらい、深くに。妊娠する訳がないのに奥に種付けしているみたいで、恐ろしく興奮した。
「あ♡うう……♡きもちいい♡♡♡」
 ビクッ♡ビクッ♡と悶えながら、悟が中空に視線を彷徨わせる。口端から涎が垂れて、涙と精液と潮とで顔中ぐちゃぐちゃになって、どう見ても、メスだ。
 悟を支配なんて出来る訳がないのに、今この瞬間悟を支配しているのだと錯覚する。悟をこんな風に淫猥なメスに堕とせるのは自分だけだと、優越感が歪んだ支配欲と所有欲に拍車を掛ける。誰にもこの先悟を渡したくない。本音を言うと、誰とも関わって欲しくない。それは無理だから、その歪んだ願望だけは、口に出さずに心の奥にしまい込む。無理だし、言ったら引かれるに決まっている。可愛い恋人に向けるには、あまりにも不健全な感情だ。
「すぐる…………暑い。あと、顔洗いたい。あと喉渇いた」
 ずろりと性器を引き抜けば、ぐしょぐしょのシーツの上にだらりと力なく身を投げ出した悟が掠れた声で言った。じっと、目を眇めて傑を睨んでいる。
 暑い部屋でセックスしたいって、君が言ったんだろ。私は乗り気じゃなかったのに。
 とは、もう言えない。暑い部屋でセックスしたら異様に性欲が増して異様に気持ちいいと、気付いてしまったから。
 でも、窓を開けたままだったのはまずかったかも知れない。絶対誰かに聞かれている。
 といって、窓を閉めたままだと冗談ではなく死ぬ危険性がある。笑えない。いや、ある意味笑える。真夏に暑い部屋でセックスしていて熱中症で死んだなんて笑い話以外のなにものでもない。
 まあ、聞かれててもいいか、と、さっきまで悟に対する独占欲がぶっちぎっていた癖に思う。独占欲が薄れた訳ではない。永遠に悟を手に入れられないのに、悟のいやらしい喘ぎ声だけ聞いて悔しがる人間がいればいいなと、マウントを取るような気持ちになっていた。
 歪んでいるなとは、思う。
 もう暑い部屋でセックスなんて二度とやんねー、とぼやいている恋人に、私はまたやりたいと内心呟きながら、傑は恋人の為に水を取って来ようと床に降り立った。

(終)