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 悟の様子がおかしい。
 だなんて、多分高専のメンバーに話せば「いつもおかしいだろ」と言われてそれでお終いだ。確かに悟はいつもおかしい。と納得してしまう親友ってどうなんだと思いながら、悟にそれとなく何か悩みでもあるのかと訊いてもげらげら笑われるだけだった。 「は? 何、傑くんのお悩み相談室でもやってんのかよ? きっしょ。ビョーキかよ」
「……」
 物凄い言われようだ。  話している時の悟や、授業を受けたり任務に赴いている時の悟は別に普通だ。だが以前のように自分から傑に話し掛けて来るということが減った気がする。それに部屋にも訪ねて来ない。逆にこちらが部屋を訪ねても、今忙しいからと入室さえ断られる。
 もしや、と冷やりとする。もしや嫌われたのだろうか。
 そんなことはないと即座に否定する別の自分がいる。悟と自分は上手くいっている筈だ。親友として。
 何処の世界に親友に手を出す男がいるんだと、もう一人の自分が囁く。親友に抱いてはいけない劣情を抱き、心の内に秘めておくだけに留めればいいものを実際に彼を犯してしまうだなんて、それは、嫌われても仕方ないのではないか。
 でも、悟は傑との行為を嫌がっている様子はなかった、と思う。むしろ悟は傑に触れられると普段は白い肌を朱に染め上げて、普段は絶対に聞くこともない上擦った甘い声を上げる。淫らに腰を揺らし、舌足らずにすぐる、と呼び、口では嫌だなどと宣いながら身体を反応させて――
「おい、うどん伸びるぞ」
 ぬ、と目の前に美しい顔が現れて、行儀悪く箸でそれ、とうどんを指し示す。ハッと我に返った。見れば、手元にあるきつねうどんは殆ど減っていない。箸に絡めたままだった数本のうどんが、つるりと箸から滑り落ちてぽちゃんと器の中へ落下してしまった。
「考え事か?」
 質問している癖に悟はさして興味もなさそうだ。ずるる、と音を立てて勢いよくカレーうどんを啜っている。
 ここは寮の学食だが、今は自分達以外誰もいないようだった。他の皆は任務で出払っているか、外出しているか、或いは部屋で過ごしているのかも知れない。
 傑は溜息を吐き、汁の中へと舞い戻ってしまったうどんをまた箸で数本掴んで持ち上げた。
「別に」
「何考えてたんだよ。エロいことか?」
 うどんを口に含んだ瞬間にすかさず悟に訊き返され、ブフォ、と噴き出してしまいそうになった。必死でうどんを呑み込んで、何事もなかったかのようにまたうどんの中に箸を突っ込む。悟はにやにや笑いながら頬杖をついた。悟の器はもう空になっていた。
「どーせ、女のことでも考えてたんだろ。今夜は誰に会うんだよ。年上の美人OLか? 女子高生か? それか、幼女か八十過ぎた婆さんか? オマエは邪道なゲテモノ食いだもんな」
 暗に、男の自分を抱けるのだから女児も老女も抱けるのだろうと傑を貶している。
 何故、半笑いでそんなことが訊けるのだろう。悟の神経が理解出来ない。いや、元々悟は常識の範疇を越えた人間だ。理解しようとする方が間違っている。のは分かっているのだが、こんなことを臆面もなく傑に訊くということは、傑に他に相手がいることを何とも思っていない証拠だ。――こっちは悟のことで毎日頭が一杯なのに。
「悟」
「あ?」
「今夜は悟と会いたい」
 面食らって綺麗な目を瞬かせる悟に向かってにっこりと微笑む。悟は一瞬ぽかんと傑を見つめていたが、途端にボッ! と音が聞こえて来そうなくらい一気に顔を真っ赤に染めた。自分から仕掛けたとはいえ驚いた。傑のことを何とも思っていないのなら、何故そんな可愛い反応をするのだろう。そういう初心な反応が可愛い所為で、余計に虐めたくなってしまうのに。
「悟、後で私の部屋に来てくれ」
 す、と手を伸ばして悟の白い髪に触れる。悟がビクッと身を竦めた。硝子がここにいたら公共の場でいちゃつくなと怒られてしまいそうだ。だが悟は、ふいと傑から目を背けると傑の手を払いのけた。
「……き、今日は用事あるから無理」
 がた、と椅子を引いて立ち上がり、カレーうどんの器が載ったトレイを持って、返却口へと向かう。
 拒否された。
 呆然とその後ろ姿を見送っていると、悟が振り返って傑を見た。
「つーか、うどんさっさと食わねえと伸びるぞ」
 顔をしかめて言って、すぐに傑に背を向けた。「まあもう伸びてっか。ジジイのダルンダルンに伸びたももひきみてえに」とよく分からないことを言いながら、さっさと食堂を出て行く。
 やっぱり悟はおかしい。その原因を突き止めなければならない。


 まだ昼間は暖かく快適に過ごせるが、流石に十一月にもなると夜は冷える。傑は厚手のジャケットのポケットに両手を突っ込み、ビルとビルの隙間を縫うようにして吹き付けて来た寒風にぶるりと身震いした。気配を殺し、ホシの様子を窺う。
 ビルの向こう側、待ち合わせ場所としてよく利用される時計台の下にホシ――悟は立っている。彼は寒がりなのか、既に初冬のようなハーフコート姿だ。傑と同じようにポケットに両手を突っ込み、ぐるぐる巻きにしたマフラーに顔を半分埋めている。その姿を見て可愛い、と呑気に思っている場合ではなく、こんな待ち合わせスポットに立っているということは、誰かを待っているということだ。
 この辺りは飲食店や商業施設も多いが、同時にホテル街という顔も併せ持っている。時計台の辺りは駅の近くということもあり明るく人通りも多いが、一歩路地へと入り込めば、忽ちラブホテルが林立する迷路のような小路がずっと奥まで続いている。
 ドクン、と心臓が嫌な具合に鼓動する。誰を待っているのだろう、こんな場所で。一体どういう目的で。
 嫌な予感を抱えたままで立ち尽くしていると、時計台の下に一人の女が近付いて来る。女にしては背が高く、細くてスタイルが良い。長い髪はさらさらで、目が少し吊り上がっているが美人だ。
 悟が顔を上げていつものサングラス越しに女を見た。女が悟に手を振った。悟も手を振り返し、そして女が、悟の腕に腕を絡めた。知り合いや友達といった雰囲気ではない。べったりとくっ付いて、悟もそれを嫌がる風でもなく二人で歩き始めた。……恋人同士のように。
 嘘だ。
 目の前が真っ暗になるような気持ちで、傑はその場に立ち尽くしていた。今見ている光景が信じられない。いや、信じたくない。信じたくなかった。悟に彼女がいるなんて。
 呆然自失のまま突っ立っている間に、二人が入り組んだ路地の一角へと消えてしまいそうになっている。傑はのろのろと彼等の後を尾行した。もはやそうしたいからしているというよりも、身体が勝手に動いているだけだ。亡霊のように、二人の後を追う。  少し距離を空けている為、話し声は微かに聞こえるのだが話している内容までは分からなかった。歩いている間も、女は悟にべったりだ。
 何処へ向かうのだろう。この先はホテルしかない。
 案の定、二人は沢山建っているホテルのうちの一つに入ろうとしている。しかもよりによって物凄く外観が酷い。外壁は真っピンクに塗られ、窓がハート型で、入り口の看板にもハートが大量に散らしてある。何やら笑いながら楽しそうに話し、看板を指差してげらげら笑っている辺り、あえて冗談でここにしたらしい。
 何で、と思った。思った時には、自分が気付かれないよう尾行していることも忘れて二人に追い付き、女が絡めているのとは反対側の悟の腕を掴んでいた。
「悟、」
 悟は驚いたようだった。振り返った悟の目がサングラスの奥で見開かれ、口がぽかんと開いている。
「傑……? え、何でここに?」
 間抜け面。傑にこんな現場を見られるとは丸きり想像していなかったという顔。だが、見られて気まずいだとかばつが悪いだとか、そういう感情は一切顔に浮かんでいない。――傑との間にあったことなど、別に何でもないという風に。苛立ちが募った。
「腕、離せよ。痛い」
「ちょっと来て」
 悟の言葉を無視して、ぐいと乱暴に掴んだ腕を引いた。悟がバランスを崩して傑の方へ倒れ込み、反対側の腕を掴んでいた女が驚いたようにパッと腕を離した。お陰で悟を捕えることが出来た。傑は強引に悟の腕を引き、趣味の悪い外観のホテルの自動ドアをくぐる。
「なっ……ちょ、おい、傑!? 何だオマエ、野郎二人でラブホってどうなんだよ!? ウケる!」
 女はぽかんと立ち尽くして二人を見送り、悟は腕を引かれながらげらげら笑っている。笑うとこなのか、と思う。こちらの気も知らずに。
 悟には傑の怒りが理解出来ないらしい。怒っていることにも気付いていないのかも知れない。苛立ちが、どす黒い感情を増幅させた。腹の中にとぐろを巻く巨大な蛇でも飼っている気分だ。


 男二人でホテルに泊まれるのだろうかと思ったが、そこは何の問題もなくチェックイン出来た。
 部屋は壁も床も天井も、ベッドのシーツもピンクだった。ピンクだらけで、目がおかしくなりそうだ。二度とこのホテルにはチェックインするまいと心に誓うくらい酷い。
「オマエさー、何? 女にフラれたのか? それで俺で間に合わそうって訳? 性格悪いなあー相変わらず」
 自分の性格のことを棚に上げてまだげらげら笑いながら、悟は行儀悪く脱ぎ散らかしたコートとマフラーをテーブルの上に放り投げた。傑のコートはきちんとハンガーに掛けられている。
 悟の身体を、物でも扱うようにホテルの一室のベッドに放り投げた。悟はぼふっ! と鈍い音を立てて背中からベッドに倒れ込み、弾みでベッドのスプリングが大きく軋んだ。大して痛くもない癖に「痛っ!」と呻く声が部屋に響く。
 悟の肩を押さえ込み、ぐぐ、と体重を掛ける。悟は不意に笑うのをやめた。無抵抗で、じっと傑を見上げている。ずれたサングラスを外すと、綺麗な目が臆することも怯むこともなく真っ直ぐ傑を見ている。その目から、彼がこの状況をどう思っているのかを読み取るのは不可能だった。このまま犯されてもいいと思っているのか、それとも実はそんなつもりはなく、抵抗しないのも術式を使えばいつでも傑のことなど完封出来ると思っているからなのか。
 確かに、術式を発動されてしまえば傑には為す術がない。身体を押さえ付けていても、無意味だ。その無意味なことをやってしまうくらいに、冷静さを欠いている。
 言葉が出て来ない。真っ黒な怒りと、悲しみと、訳の分からない感情がごちゃ混ぜになって頭の中がぐちゃぐちゃで、自分でも怒鳴りたいのか泣きたいのかさっぱり分からない。血が、耳の奥で激しくドクドクと脈打っていた。
 奇妙な数秒間の沈黙の後、ふっと悟が力が抜けたように笑った。眉尻を下げ、困ったような表情で。
「傑、なあ、こういうのはもう終わりにしよう」
 オマエと身体を繋げるのはもう無しだと、悟がはっきりとそう言った。いつも綺麗な顔をして子供みたいなことを言うギャップの激しい男だと思っていたのに、妙に大人びた口調で。
 ぷつん、と何かが切れた。
 壊したい、という衝動のまま、悟の唇に噛み付く。突然のことに悟の身体が固まった。舌を捻じ込み、無防備な悟の舌を絡め取る。悟の身体がビクッと痙攣した。僅かに力を入れて傑を押し退けようとするのを封じ、悟の細い身体に覆い被さる。
「……っう、」
 悟が苦しげにくぐもった呻き声を上げるが、容赦はしない。更に深く口付けて、抵抗する意志を奪うように舌をきつく吸う。
ぢゅる、と唾液の音をさせて、舌と舌とを擦り合わせる。ビクン、と悟の身体がまた跳ねた。ぎゅうと閉じられた瞼の下、白い睫毛が細かく震える。唾液が、口の端から垂れてシーツに染みを作った。
 キス、などという生易しいもので終わらせるつもりはない。これはまるで肉食獣による捕食行為だ。傑は捕食者で、悟は餌となるか弱い動物だ。その歴然とした力関係を悟に思い知らさなければならないと、謎の焦りが募っていく。
 口内を蹂躙し、ひたすら貪る。悟の身体から力が抜けて、時折ビクと身体を震わせる以外はろくに抵抗もしなくなった。唇を離すと唾液が細い糸のように互いの唇の間を繋ぐ。悟の潤んだ目や赤くなった顔を見下ろしたまま、内心ではパニックに陥っている。
 ――何だ、もう終わりにするって。……その疑問に対する答えは明白だ。傑などもう彼の眼中にはないということだ。だから悟は女とここに入ろうとした。
 別に、付き合おうと傑から言った訳ではないし、悟に言われたこともない。なら悟は自由にしていい。傑には悟の行動を制限する権利がない。ないが、無性に腹が立った。悟が知らない女を抱いていると考えるだけで酷く吐き気がし、おぞましいとさえ感じた。自分以外は誰も、悟に絶対触れて欲しくなかった。
「傑……、も、もう離せ、オマエとは、」
「それ、どういう意味?」
 悟の言葉に被せるようにして訊く自分の声が、自分でも驚く程冷たかった。悟はキスの所為で頬を赤らめながらも、混乱したような顔で見上げて来る。いつもなら可愛いと思うその表情も、傑を苛立たせる。
「は……? だから、そのまんまの意味だよ。オマエとは二度とセックスしない」
 聞くに堪えない言葉だった。
 悟の両手首を掴み、素早く鞄から取り出したロープで縛った。悟は何でそんな物を、と目を見開いて硬直している。拘束した両腕を悟の頭上でベッドの支柱と固定する。
 拘束しても無意味だと分かっている。悟は最強の呪術師なのだから。『俺達は最強』とよく傑のことも自分と同列に語っているが、傑は自分の実力は悟には遠く及ばないことを心の何処かでは知っている。だから、最強を自分に縛り付けておくなんてこと、不可能だ。泣きそうだった。
 だったらいっそ悟が最強じゃなければいいのにと思う。最強じゃなければ縛り付けておけるのに。雁字搦めに束縛して、絶対離さないのに。
「傑、何すんだ、離せ、」
 わざわざ傑に離せと頼まなくとも、悟なら自力で簡単に拘束を解ける筈だ。なのに悟はそれをしない。親友相手には実力行使に出たくないのか、交渉の余地があるとでも思っているのか。悟のその優しさが、弱い奴だと嗤われている気がして虚しい。
「悟さあ、私とするのやめてどうするの。女を抱くつもりかい。抱けると思っているの?」
 泣きそうなのを誤魔化すように薄く笑みを浮かべながら、ぐ、と悟の股間を膝で押し上げる。ごり、と確かに芯のある感触が膝に伝わり、悟の身体がビクリと跳ねた。
「ッ、やめ、」
「私にキスされて勃起してる癖に? こんな身体でどうやって女とセックスするの」
「傑……ッ、」
 ぐり、ごり、と追い上げるように膝で刺激しながら、悟のセーターを胸元までたくし上げる。露わになった乳首を指で摘んで引っ張ると、悟は苦悶の表情でびくびくと身を跳ねさせた。
「や、めろ、傑、っひ、」
 ズボンをずらすと、性器が下着の布地を押し上げている。先端の部分に既に染みが出来て、期待するようにその染みの面積を広げている。卑猥で、可愛くて、くらりとする。指先を染みの部分につつと這わせただけで、悟の身体が敏感にビクンと反応するのも可愛い。
「あ……ッ、すぐる、待、」
「悟……、悪い子には、お仕置きだよ」
 悟の目に、怯えと恐怖と――錯覚ではなければ期待するような色が、同時に浮かんだ。


「ッあ゛……ッ傑、も、やめ゛っ、あ゛ッ」  悟が身動ぎする度、安物のベッドがぎ、と軋む。悟の苦しげで、何処か甘さを含む声に重なるようにヴヴ、と低く唸るようなモーター音が悪趣味な部屋に響き、更にその音を立てている玩具を動かすと悟の粘膜に擦れてぬちゅ、と卑猥な音を立てた。
「っひ、あ、」
 ビクッと悟の腰が大きく痙攣し、次いでどろりとした精液が性器から溢れる。二回目の射精だがまだ濃くて粘度のある白濁が、竿から後孔の方へとたらりと伝い落ちた。そこに埋まっている太いバイブにも白い模様を描く精液に、ぞわりと興奮した。
「ッあ゛……っ」
 悟が快感に喉を震わせながら虚ろな目を傑に向ける。両手を拘束され、セーターは胸元までたくし上げられ、下半身には衣類を何も身に付けていない。その剥き出しの性器は悟の白い精液で汚れ、後孔にはバイブが隙間なく埋まっている。そのバイブをずる、と浅い場所まで引き抜けば、悟はその刺激にも反応する。バイブのどぎついピンク色をした表面を、細かい突起がびっしりと覆っている。突起の一つ一つがローションで濡れて光り、そこにボトルを傾けてまたローションを継ぎ足せば、不気味にぬらぬらと光る凶悪な玩具の雄が出来上がる。
「悟、またイッたの? 随分この玩具が気に入ったみたいだね」
 にこやかに悟に声を掛けながら、ずぷ、とバイブをまた深い場所へ挿入する。イッたばかりで敏感になった悟の身体がまた仰け反って、萎える間もなくすぐ勃起した。
「あ゛ぁ゛ッ、ひ、あ、だめ、ッあ゛っ」
 だめ、と口先だけは嫌がりながら恍惚の表情で腰を揺らすのが可愛くて堪らない。可愛いから、自分だけの物にしたくなる。
「すぐる、……っやだ、も、取って、やだ゛、」
「駄目。取ったらお仕置きにならないだろ」
 懇願をすげなく却下し、ぶるぶる震えるバイブでまた悟の粘膜を好きなように捏ね回した。すっかりバイブの形に拡がった穴は、突起に擦られる度に嬉しげに収縮して悟の身体に快感を叩き込んでいる。一度も触れていないのに、腹に付きそうな程反り返った前が透明な雫を零している。悟が腰を揺らす度に白濁と先走り汁が混ざったものが後孔に垂れ落ち、シーツにも染みを作った。
「だって、……何で、俺、何もしてな、――ッうあ、あ゛ッひあ、あ゛ッ、」
 この期に及んで何でこうされているか分かっていない悟に苛立つ。苛立つから、何度も出し入れしながら気まぐれに前立腺を押し潰した。びゅく、と悟の性器から先走り汁が飛ぶ。喉が仰け反り、またイきそうになっている。
「傑、やら゛、離、っあ、あ゛ッ」
「気持ちよくて堪んないって顔して、どこが嫌なの。ねえ、バイブで奥の方まで犯されるの、悟は好きなんだろ」
 ぐちゅ、ぬぷ、ぬぽ。卑猥な音をさせながら緩み切った穴にバイブを抜き差しする。突起が粘膜をしつこく容赦なく押し潰す。悟は蕩けたような顔で頷いてしまいそうな気配を漂わせている癖に、必死に首を横に振る。
「や、だ……、傑の、……すぐるのちんこが、いい、」
 涙を零し、ひぐ、としゃくり上げる。上擦った声で、多分自分が何を口走ってしまったのかも分かっていない。一瞬、今すぐ玩具を引き抜いて犯してしまいたくなった。悟の中に侵入していいのは自分だけだと、嫌という程思い知らせたくなった。
「私のがいい……? もう完全にメスだな、悟」
 ……その激情に蓋をして、ぐちゅんっとバイブを深い場所に突き刺した。
「あ゛ー……ッっ」
 悟が身を仰け反らせた拍子に、びゅる、とまた白濁が性器から飛び散った。ほら見ろ、玩具でも満足出来るんだろ、と意地悪く嘲笑ってやりたくなる。
「待、ッすぐる、あひ、あ、あ゛、だめ、も、もう出な、」
 イッたからといって手を止めるつもりがない。玩具で後ろを更に拡げるように攪拌しながら、精液と先走り汁でどろどろになった前へ手を伸ばす。竿を握り数回扱いただけで、そこは硬さを取り戻した。悟が身を捩る度、ベッドが軋む。両手首のロープで拘束された部分だけ赤く蚯蚓腫れのような線が走り、白い肌にそこだけくっきりと赤が浮かんで綺麗だな、と思う。
「後ろに玩具突っ込まれて何回もイく身体の癖に、悟が女を抱くなんて無理だよ。分かるだろ? 童貞非処女の悟くん」
「う、あ……っ」
 わざと悟くん、なんて低く呼び掛けながらくすりと嗤う。どろどろの性器の先端にするりと指を這わせ、小さな穴に指先をめり込ませた。ぐちゅ、と精液を塗り込めるようにして抉れば、先走り汁がどっと溢れてただでさえ酷い有様の性器を更に汚す。
「やら、傑、ッあ゛ッんっあ、ッあ゛っ」
「ああそうだね、悟はここ、指で虐められるのが大好きだったね」
「ちが、っひ、ッあ゛ッあ……っ」
 赤くなった鈴口を容赦なく抉る。悟はだらしなく開いた口から意味を為さない喘ぎばかり零しながら、ビク、ビク、と何度も腰を震わせた。色の白い肌とは対照的に、嬲られてそこだけ赤くなった亀頭に精液が纏わり付いている卑猥な光景にぞくぞくする。
「違わないだろ。悟は後ろと先っぽ、同時にされるのが好きなド変態だ」
「ッあ、も、すぐる、……待って、やだ、だめ、で、出る、」
 ぬるぬると指を這わせながら後ろのバイブをぐぷ、ぬぽ、と抜き差しする。悟が目に見えて狼狽えて、必死で身を捩った。
「出ないんじゃなかったの? 悟、何回イくつもり?」
「ごめ、な゛さ……っ、傑、……っも、出ちゃ、う、」
 哀願のような響きを持つ声に加虐心を刺激された。
 ぶしゃ、と間の抜けた音をさせて、傑の指と性器の間から透明な汁が迸った。ぶしゅ、ぷしゃ、と断続的に吹き上がる潮が、悟の腹やシーツにびしゃびしゃと飛び散る。快感と羞恥と困惑が綯い交ぜになったような顔をして、ビクンビクンと腰を震わせる悟の姿が背徳的で扇情的で、眩暈がする。もっと、どろどろのぐちゃぐちゃにしてしまいたいという欲望がどんどん酷くなる。
「悟、イき過ぎだよ。潮吹きまでして、ほんとに悟はどうしようもない悪い子だね」
「あ゛……ッひあ、あ、ごめん、なさ、」
「駄目だよ。謝っても許してあげない」
 まだ時折潮を吹いている性器の先端を左右にぐっと割るようにして、尿道口を露出させる。刺激を与えられ過ぎて敏感になった小さな穴はひくひく震えながらこぽ、と先走り汁だか潮だかもはや分からない体液を噴出させている。その穴にもローションを垂らせば、悟が冷たさに身を竦ませた。
「っひ、」
「悟がこれ以上イかないように、ここ、塞いどいてあげるから」
 細い銀色の棒をすっと取り出し、悟の眼前で引き延ばした。伸縮性の棒が伸びて、最大の長さまで伸びたところでカチリと長さが固定される。伸びた部分は細かな突起にびっしりと覆われている。
 こんな物を普段から持ち歩いている訳では当然ないが、悟を尾行すると決めた時点で色々鞄に突っ込んで来た。それを、まさか悟本人の口からもうしないと言われるなんて思いもせずに。まるで酷く滑稽なコメディのようで、笑える。
「な、何、」
 すす、と棒の先端を尿道口に近付ける。悟は何をされるのか漸く理解したらしい。恐怖に引き攣ったような表情で、一層激しく身を捩った。嫌がる悟の両足に体重を掛けて押さえ付け、剥き出しになった鈴口に棒――尿道バイブの先端をゆっくり押し当てた。
「す、傑、」
「大丈夫、痛くないから」
「む、無理、やめ、――ッあ゛あ゛ぁあ゛あ゛……ッ」
 ずず、と狭い穴に細いバイブを挿入すると、悟が身を仰け反らせて喉が潰れたような悲鳴を上げた。ショックのあまり綺麗な両目からぼろぼろと涙が零れている。だがバイブが刺さった性器は萎えもせず、勃ったままだ。普通はそんな場所にいきなりバイブを差し込まれれば萎えてしまうだろう。勿論、悟が今勃たせたままなのは普通の状態ではないからだ。
「ほら、悟、痛くないだろ?」
「い、痛、やめ、ッあ゛ッ」
「痛い? 気持ちいいの間違いじゃない?」
 思わず反射的に痛いと口走ってしまったらしい悟に向かってゆるりと小首を傾げて見せながら、更に深い場所へと尿道バイブを押し進める。悟の身体がビクッと跳ねて、恐怖に引き攣っていた顔が奇妙に歪んだ。恐怖と快感と、そこで快感を覚えていることへの混乱。色々ごちゃ混ぜになった表情を見下ろして、傑は口端をゆるりと笑みの形に吊り上げる。
「ッあ゛……っ、」
 中で円を描くように回しながらゆっくりと入り口辺りまで引き抜く。じっくり、焦らすように。バイブの表面を覆った突起が狭い尿道内の誰にも触れられたことなどない粘膜を余すところなく擦るように。恐怖よりも悦楽に染まったような顔で、悟がびくびくびく、と腰を震わせる。バイブと尿道口の隙間から、たらりと先走り汁が零れてぐしょぐしょに濡れたシーツへと垂れた。
「すぐる、ッや、やめ、あ゛ッあ、あ゛っ!」
 ぐぷ、とまた奥へ押し込むと、悟ががくがくと身悶えする。そのままイッてしまったかのように痙攣を繰り返すのを見下ろして、くすりと歪んだ笑みを浮かべた。
「悟、まだ挿れただけだよ」
 本当の地獄は――いや、もはや悟にとっては天国かも知れないが――これからだ。
 ぱちんと小さな摘みを指先で弾く。一拍遅れて、細いバイブがヴヴヴ、と低く唸りながら震え始めた。
「――ッあ゛……っ!?」
 悟が目を大きく見開いて声にならない悲鳴を上げた。ビクン、と身体が大きく仰け反る。勃起したままの性器と、そこに突き刺さったバイブがぶるぶる震えながら悟の今まで誰にも暴かれたことのない場所を犯しているのを見るのは、想像以上に性欲を煽られた。
 震えるバイブの先を掴み、ぐるぐると円を描くようにして動かす。悟はどう見ても悦んでいるとしか思えない淫らな表情をして、逃げるように腰を引く。だがそうすると後ろに刺さったままの太いバイブが後孔に余計に食い込んで、ひう、と情けない声が喉奥から漏れた。
「ッあ、あ゛ッ、すぐ、ッやだ、や゛、」
「ヤなの? それ、嫌な時の声じゃないよね」
 悟の竿をぐ、と掴むと、震えるバイブの振動が内側の粘膜からダイレクトに伝わるらしい。悟はビクンビクンと腰を震わせ、恍惚の表情で口端から涎を垂らした。
「っあ゛ー……ッだ、め……っ、」
 出さずにイッたらしく、小刻みに痙攣を繰り返す。浅い場所まで引き抜くと、同時に悟の腰も浮く。競り上がって来る精液を放出するのを期待するみたいに。勿論、悟の期待通りにはしない。もう少しで全て抜けるというギリギリの場所まで引き抜いたバイブを、また悟の狭い尿道にずぷずぷと埋めていく。悟の顔に恍惚と絶望の色とが同時に浮かぶ。堪らなく、征服欲をそそられる顔だ。
「あ゛……ッだめ、それ、っひあ、あ゛……っ、」
 ぷしゅ、と僅かに出来たバイブと尿道口の隙間から先走り汁が少量飛ぶ。出口付近まで近付いていた精液をまた奥へ押し戻される未知の感覚に、悟が混乱したように涙をぼろぼろと零すのが可愛くて堪らなかった。可愛いから、もっと虐めて泣かせたくなる。
 悟の頬を濡らす涙を指で拭う。悟はびくと身を竦ませ、身を捩って逃げようとする。
「すぐる……っ、」
 逃げようとしている癖にすぐる、と呂律の回っていないような舌で縋るように呼ぶ。傑なら助けてくれると健気に信じているような切実な声で。
 悟を助けるなんて、無理だ。悟を助けるということは、二度と悟とこういうことをしないということなのだから。無理だ。手放すなんて考えられないし考えたくない。いつだって悟のことで頭が一杯なのに。
「はは。悟、気持ちよさそうだね。ここ、犯されるのがそんなにイイの? 悟は変態だな」
 ここ、と濡れた亀頭を指で擦れば、悟はひくりと喉を鳴らした。
「ん゛ッ、あ゛……ッ」
「これじゃお仕置きにならないね。ご褒美あげてるみたいだ」
 悟が尿道を犯されて気持ちよくなっているのは、悟に気付かれないようにそこに媚薬を流し入れた所為だ。悟が変態だからではない。むしろ変態は自分だ。でも、そうでもして悟の心を抉って、じわじわと傷付けて殺したかった。二度と自分に逆らおうという気が起こらないくらいに。そんなことをすれば嫌われてしまうと分かっているのに。悟の事になると、理性が働かなくなる。
「や゛ら、ッそれ、も、や、」
 ぶるぶる震えるバイブをまた抜けるギリギリの場所まで引き抜いて、奥へと押し戻す。繰り返す度、悟の声に哀願の響きが混じる。ぞくぞくする。
「傑……、ッあ゛っ、も、イぎだい゛、出しだい゛、ッあ、あ゛ッ」
「もう出ないんじゃなかったの?」
 小首を傾げながらぐるぐるとバイブで攪拌する。隙間から白いものが混ざり始めた先走り汁が垂れた。ぐぷ、ぬぷ、と後ろのバイブも動かして前立腺を擦り上げながら、悟を確実に追い込んでいく。
 射精なんてさせてやらない。出せないのにイッてるような快感だけが果てしなく続くこの甘く苦しい地獄を、延々味わえばいい。
 射精しないままずっとイッているような快感が続くみたいに、悟は恍惚と苦痛とを同時に顔に浮かべて身悶えた。
「出し、たい……ッせいえき、出しだい、おねが、ッあ゛ー……ッ」
「またイッたの? 射精しなくてもイけるんだったら、ずっとこのままでもよくない? このままちんこ壊されて、女の子になっちゃえば?」
「やら゛……ッも、だめぇ゛……ッこひゅらな、ッあ゛ッ傑、すぐる、」
 ヴヴ、と低く振動する玩具をまた尿道の奥へと押し込んだ。見開かれた六眼からぼろぼろと涙が零れ落ちる。時々しゃくり上げながら、悟が震える声で懇願した。
「傑、も、許じで、おねがい゛、」
「じゃあ、私を好きだと言って」
 悟の濡れた目を見下ろして静かに要求する。悟は顔を歪ませ唇を噛んだ。そんなに言いたくないのかと、ショックと苛立ちがまた募る。
「好きだと言わないならこのまま放置するよ」
 言えと命令しているのはこちらだ。主導権を握っているのはこちらだ。なのに、まるでその言葉をねだっているように必死の色が滲む。冷静に命じているつもりなのに、冷静さを欠いている。どうしようもなく不格好だし、狡いと自分でも思う。こんな状況で無理矢理そんな嘘を悟に言わせて、無意味だし虚しくなるだけだ。だが嘘でもいいから好きだと言って欲しかった。偽物の告白でもいいから、悟から好きだと言われたい。
 壊れている。
 手に入らないのなら諦めるしかない。他の物に関してはそれが出来るのに、悟を諦めることが出来ない。いっそ、諦められたら楽なのに。
「悟、言いなよ」
 泣きそうなのを隠すように、ぐちゅ、と奥まで刺さった尿道バイブを揺らす。悟がビクンと痙攣した。
「ッあ゛……っ、……き、」
 観念したように目を逸らし、悟が聞き取れない程の小さな声で呟いた。聞こえない、と底意地の悪いことを言いながら、小刻みに何度もバイブを揺らす。悟が顔を赤くして、身を捩りながら精一杯声を張り上げた。
「すき、……傑が、好き、だから、ッあ゛ッも、もう、取って、お願い、取ってくらさ、」
 あと少しで全て抜けるという場所まで引き上げられていく尿道バイブを悟の目が不安げに追う。また奥へ挿れられて掻き回されたら、と恐怖がありありと浮かんだ顔を見ていると、もう一度奥へ突っ込んでひたすら啼かせたい衝動に駆られる。それを堪えて、バイブを全て抜いた。きゅぽ、と間の抜けた音をさせて栓をしていた物が不意になくなって、悟があ、と小さく声を漏らす。
「ッあ、……」
 ぶる、と身を震わせる悟の性器の先からとろとろと勢いのない精液が流れ落ちた。明らかにバイブを挿れる前よりも赤くなって大きく拡がったように見える尿道口がひくひく震えて、白く濁った精子がとくとくと零れてシーツを汚していく。後ろのバイブのスイッチを切り、ずるりと引き抜く。反射のように悟の腰がビクッと大きく跳ねた。
「すぐる……っ、や、待って、待、」
「何?」
 悟の顔に目に見えて焦りの色が浮かぶ。激しく身を捩れば腕の戒めが余計にきつくなり、ぎ、とベッドが軋んだ。
「や、やだ……、」
 しょわ、と薄黄色の液体が悟の開いたままの尿道口から流れ出た。隠そうと身を丸めようとするのを、咄嗟に両足を押さえ込んで阻止した。しょろしょろと出る尿が既にどろどろの悟の性器もシーツも更に汚し、微かなアンモニア臭が漂う。悟は真っ赤な顔をして、きつく目を閉じている。腕も足も自由にならなくて、隠すものが何もないまま震えている悟に、どうしようもなく劣情を煽られた。
「悟、またおしっこ漏らしたの? 可愛い」
 可愛いと、心の底から本気で思った言葉が口をついて出た。好きな人の尿を出す姿に興奮するなんて、真性の変態だ。尿そのものにというよりも、漏らして羞恥で死にそうになっている悟に興奮する。プライドをへし折られて泣く悟が可愛くて、ぞくぞくと身体中が痺れた。
 ここまでされてもう抵抗もしないだろうと両腕の戒めを解けば、ロープの痕がくっきりと赤く残る両腕で、悟は顔を隠してひぐ、としゃくり上げた。
「俺、は、オマエなんか、嫌いだ」
「……何で、」
 ぐ、とロープの痕がついた悟の腕を掴んで顔の前からどけさせた。涙の浮いた六眼が傑を見上げる。だがすぐにふいと目を逸らしてしまった。
「……るさい。オマエなんか大嫌いだ女が何人もいる癖に気まぐれに俺に手出しやがってこの腐れ外道最低だ嫌いだだからオマエとはもうヤらねえっつってんのに世界一嫌いだ宇宙一嫌いだ好きなんかじゃない嫌いだ絶交だふざけんな馬鹿」
「私は好きだ」
「黙れふざけんな馬鹿アホ死ね――え?」
 思ったことがそのまま口から出てしまった。あ、と思った時にはもう遅い。悟は構わず罵倒を続けていたが、途中で傑が何を言ったのかに気付いて固まった。再び綺麗な目が傑を捕える。かあ、と自分の頬に血が集まるのを感じた。赤面する傑を見て、悟が驚いたように目を見開いている。
 何でこんな、面と向かって好きと二文字を口にするだけで赤くなっているのか。不格好にも程がある。今まで他の女に言う時にはここまで緊張しなかったのに。思う間にどんどん顔が赤く染まっていくのを止めることが出来ない。心臓がどくどくと煩い。
「私は悟が好きだ」
「嘘だ」
「どうして、」
「す、好きだったら他の女と遊んだりしない、だろ、」
 言いながら悟の頬も赤く染まっている。何で、と思う。嫌いなら、嫌いな相手から好きだと言われて赤くなったりしないだろうと。本当に嫌っているのかと確かめるつもりで、す、と悟の赤い頬に手を伸ばして触れた。触れた頬は、やっぱり熱い。びく、と悟が身を竦めるが、振り払いはしない。
 もしかして嫌いというのはフェイクかと、自惚れそうになる。いや、そもそも悟は強力な術式が使える。それを使わずされるがままになっている時点で、おめでたい脳味噌が自分は好かれているのではないかと都合のいいように解釈してしまう。親友を攻撃出来ないというただそれだけかも知れないのに。
「逆だよ、悟。悟の事ばかり考えて苦しいから、気を紛らわせようとしていた」
「何だよそれ。そんなの、信じられる訳ねえだろ」
「……悟は、やっぱり私が嫌い?」
 目を覗き込んで訊く自分の声音が必死で、滑稽でさえある。悟は困ったように眉尻を下げた。
 滑稽で不格好で狡くて、その上計算高い。嫌いかと訊かれて悟が嫌いだと答える筈がないと何処かで分かっているから。分かっていてこういう訊き方をする自分は狡いと思った。だが、なりふりに構っていられない。悟を手に入れたかった。どうしても。
「……き、嫌い、じゃねえ、けど、」
 すす、と悟が恥ずかしそうに目を逸らした。悟から見られていないのをいいことに頬に触れていた手を首筋へと滑らせる。悟は身を強張らせて小さく震えるが、手を振り払わず大人しくしている。
「けど?」
「す、好きとか、俺はそんなのよく分かんねえ……!」
 好きかどうかも分からないのにセックスしていたのか、と呆れるやら驚くやら可愛いやらで、元々爆発寸前だったものが色々限界だ。悟の顔に自分の顔を近付けながら、低い声でまた狡いことを言う。
「悟、私を好きじゃなかったら、私とセックスなんか出来ないだろ」
 自分は好きでもない女とセックスをしておきながら悟を丸め込むようなことを言って、悟の足を左右に開かせる。自身の前を寛げて、張り詰めて血管がビキビキと浮いた雄を取り出した。悟は一瞬我を忘れたようにそれに見入っていたが、恐怖に引き攣ったように喉を鳴らした。
「は……? い、今ヤんのかよ」
「ここはそういう場所だろ」
「い、いやでも俺、もう限界で、つーか漏らして汚いし、」
「大丈夫。悟は強い子だし、汚くないよ」
「ちょっと待、――ッあ゛……ッ!?」
 ぬぶ、と怒張を悟の後孔へと捻じ込んだ。散々バイブに掻き回されて快楽を植え付けられたそこは既に柔らかく熟れた果実のようで、硬くなった傑のものを難無く呑み込んでいく。温かくて柔らかい肉に包み込まれて、意識を全て持って行かれそうなくらい気持ちいい。
「すぐる……ッ」
 きっと、ここは好きな相手には無理はさせられないからと引く場面なんだと思う。だが傑は聖人ではない。散々に乱れた悟の姿を見た所為で、ブレーキの壊れた車が停まれないように、理性が利かなくなっていた。