3

 鏡の中に、美女がいる。真っ直ぐな白い髪と青い目の美少女。髪は顔の輪郭に沿うように少し内巻きになったショートカットで、小首を傾げる動きに合わせてさらりと揺れる。
 クローゼットの両開きの扉の内側についた鏡に向かって悟が笑みを浮かべると、鏡の中の少女も微笑む。艶のある綺麗な唇が、男に媚を売るように弧を描いている。
「はー可愛い。俺世界一可愛い」
 鏡の中の自分の顔に向かってうっとりと呟く。可愛い。今着ているネットオークションを使って手に入れた有名進学校の女子のセーラー服も似合っている。世界一可愛い。どんな男も一瞬で悩殺出来る。ただ、一人を除いては。
 傑の顔を思い浮かべると急に白けた気分になって、悟ははあ、と溜息を吐いた。クローゼットの扉を開け放ったまま、傑のベッドにごろりと仰向けに寝そべる。
 ここは傑の部屋だ。もはや傑の部屋は自分の部屋だ。だから本人がいなくても勝手に入る。傑の部屋は俺の部屋。オマエの物は俺の物。ザ・ジャイアニズム。
 静かだ。皆出払っている。任務も授業もない天気のいい日の昼間に寮にいるのは悟だけらしい。しかも傑の部屋で女装しているだなんて、バレたら死ぬ。だからこそ誰もいない日にこっそりやっている。
 開けたままの窓からは、カーテン越しに秋の柔らかな日差しと、爽やかな風が入り込んで来る。そんな秋晴れの空とは逆に、悟の気分は沈みまくっていた。
「何でさあ、こんな可愛い俺がいるのにあいつ、また適当な女の家とか行くの? やっぱ、俺が男だから?」
 ぶつぶつと喋っていると、またムカついて来る。
 傑はきっと、今頃人の気も知らず悟の知らない女の家だ。今朝、用事がないなら何処かへ遊びに行かないかと傑に誘われて、反射的に断った。傑と目も合わせられないくらい、傑といると平常心を保てないから。そうしたら、傑は特に残念がる風でもなく、じゃあセフレの家にでも行く、としれっと言い放った。
 最悪だ。だが、嫌だ行くななんて引き止めるのはプライドが許さない。引き止めれば間違いなく何故と訊かれて、何故かって、それは傑が好きだからで、
「いや好きじゃねし」
 がば、と起き上がって否定する。誰も返事など寄越さない。当然だ。自分しかいないのだから。
 好きじゃないなら、何で部屋でこっそり女装しているのか、とまた脳内で囁く声がある。傑に女のように扱われたいんじゃないのか、と。
 違う。でも、じゃあ何故わざわざ可愛いとネットで評判の学校の制服なんぞ手に入れて女装しているのか、理由が説明出来ない。
 知らねえよ。理由なんかねえよハゲ。
 誰に向かっての罵倒なのかも分からないまま心の内で吐き捨てて、ごろりと横になった。傑の掛布団を引き寄せて、両腕でぎゅうと抱く。傑の匂いがした。
「……っう、」
 思わず息を止めたがもう遅い。下腹がずくりと重くなる。布団の匂いを嗅いだだけで下半身を反応させているなんて、末期だ。笑える。いや全く笑えない。
 やめろと理性が止める。だがその声に抗うように、手がそろそろと股間に伸びる。紺色のスカートを捲り上げ、これもネットで購入した淡いピンク色の女物のショーツの中に手を入れる。そっと竿を握ると、ぴくん、と肩が小さく跳ねた。
「っあ、」
 やめろ。どうしてもというならせめて自分の部屋に行け。
 脳が警鐘を鳴らすのに、どうせ傑はしばらく帰って来ないんだからいいだろと別の自分が言い返す。その本能の声に促され、握った竿を上下にゆっくり扱く。ぞく、と背筋に快感が駆け抜けて、一度その味を覚えてしまうともう手が止まらなくなった。
「は、ッあ、あ……ッ、」
 身悶えながら数度扱いただけで、すぐに性器が硬く勃起した。露出した亀頭からたら、と零れた先走り汁が、傑のベッドのシーツに垂れる。どう考えてもまずい。だが身体がもっと刺激を欲して、止まらない。女装して傑の部屋で自慰をしているという異常な状況に、訳の分からない背徳感と興奮を同時に覚えた。
「すぐ、る、」
 片手で傑の掛布団を握り締めたまま、敏感な亀頭に指を這わせて先走り汁を掬い取る。身悶えるような快感にびくびくと腰が震えて、ぎ、とベッドが耳障りなスプリングの音を軋ませる。頭の中が霧掛かったように不鮮明なのに、目を閉じると瞼の裏側に傑の顔がくっきりと映し出される。
「あ゛……ッすぐる、ひあ、あ゛っ」
 ちゅぷ、と濡れた指を後ろに差し込めば、身体に電気を流し込まれたみたいにぞくぞくぞくっと背筋に痺れが走った。もはや後ろで気持ちよくなることを覚えてしまった身体には、痛みも異物感もない。それどころか物足りない。すぐに二本目を挿入すると、穴が難無く呑み込んだ。甘く切ないような快感が身体を震わせ、襞がきゅう、と指に吸い付く。奥へと誘い込むような襞の動きに抗わずに指を根元まで突き立てると、身体がベッドの上で弓なりに反る。
「っふあ゛ッ、あ、あ……っ」
 ぐぷ、ぬぷ、と指を出し入れする卑猥な音が傑の部屋に響く。中の空洞を指で埋めるように掻き回し、襞を擦る。とぷ、とぷ、と零れ落ちる先走り汁がシーツにいやらしい染みを広げている。傑のベッドなのに。
 傑のベッドを自身の体液で汚していることに、罪悪感を覚えるどころか余計に身体の奥が疼く。ひく、と喉が鳴り、耐え切れずにもう一方の手をセーラー服の下から差し込んだ。ショーツと揃いのピンク色のブラジャーの隙間から指を差し込み、乳首を摘む。びく、と腰が跳ねて、既にべとべとの性器からまた先走り汁が垂れた。
「あ゛ッ、ん゛っ、あ、あッ」
 つんと尖った乳首をぎゅうと強めにつねると、ビクッと身体が痙攣した。皮膚の薄い乳首の剥き出しになった神経を嬲りながら、自分を追い詰めるようにして後ろに埋めたままの指を動かす。
 あ、同時に弄るの、ヤバい。
 恍惚感に喉が仰け反り、口端から涎が垂れた。
「あ゛……ッひあ、も、イく、」
 ぐ、と腰を前に突き出して、欲を放ってしまいそうになったその時、部屋のドアががちゃりと音を立てて開いた。
「えっ」
 部屋の中と外で同時に発した声が重なる。心臓が止まりそうなまま、いや間違いなく今一瞬心臓が止まったと思いながら目を開ける。ドアの外に、傑が立っている。休みなので私服姿で、驚いたような顔で悟を見下ろし、硬直していた。――無理もない。自分の部屋のドアを開けたらベッドの上で女装した悟が自慰に耽っているのだ。ドン引き以外の何物でもない。
「あ、違う、これはその、」
 何でもう帰ってくんだよ、と思いながら咄嗟に口走るが、続きの言葉が出て来ない。ぶわ、と顔が赤く染まり、額に汗が滲んだ。
 何が違うのやら、その通りだろ、と何処か冷静な別の自分がツッコミを入れる。傑は一瞬呆然と悟を見下ろしていたが、悟が慌てて身を起こそうとすると、不意にドアを閉めると大股で部屋を横切ってベッドへと近付いて来た。その顔から彼が何を考えているのか読み取るのは不可能だ。じっと言葉を発さず見下ろされると、視線で犯されているようでぞくぞくする。ぞくぞくしている場合ではないのだが。
 怒っている、のだろうか。気持ち悪いと思われただろうか。泣きそうになった。
「傑ごめ、も、もう帰るから、」
 顔を伏せて早口で謝りながら起き上がろうとする。と、乱暴に肩を掴まれてベッドに押し倒された。どさ、と鈍い音、ぎ、とスプリングが男二人分の体重で軋む音。ひ、と声にならない悲鳴を上げながら見上げれば、傑は両目をぎらつかせ、歪んだ笑みを浮かべている。
「……っ悟、人のベッドで何してるの。しかもそんな格好で。シーツも昨日替えたばかりなんだけど、」
「ご、ごめ……なさ、」
 犯される、と恐怖で身が竦む筈が、どくん、と心臓が大きな音を立てる。恐いどころか期待するのはどうかしていると思うのに、火照った身体がじくじくと疼く。中途半端なところで手を止めざるを得なかった所為で、余計に。まるでお預けを食らった犬だ。
「君は、そうやって私を弄ぶつもりかい」
 質問の意味が、よく分からない。弄んでいるのはオマエだろ、と思う。だが言い返すより前に、傑の指が、さっきまで自分で指を突っ込んでいた場所にぬぷりと差し込まれる。
「は、――っちょ、待、ッあ゛っ!?」
 指を内側に折り曲げられて、ぐり、と前立腺を擦られる。あまりにもあっさりと弱い場所を探し当てられてしまったことへのショックやらぐりぐりと押し潰される快感やらに頭が混乱し、悟はいやいやと首を横に振りながら身を捩った。
「すぐ、ッあ゛ッ、だめ、あ゛っ」
「だめ? 何処が」
 くす、と可笑しそうに笑いながら、傑が追い打ちを掛けるように指を二本に増やして的確に弱い場所ばかりを責め立てる。指で挟み込まれて押し潰されて、かりかりと引っ掻かれて、とどめを刺すように反対の手で屹立を強く扱かれる。不意打ちで前を触られて、射精直前まで追い詰められていた身体があっけなく陥落した。
「ひあ゛ッ、あ、あ゛……っ!」
 どぷ、どぷ、と白濁が溢れ出る。自分で胸を弄る時に制服を胸元までたくし上げていたお陰で汚れずに済んだが、白い腹が自分がぶちまけた白い精液でどろどろと汚されていく。
 あつい。気持ちいい。眩暈がする。理性が、溶けてなくなる。傑にいいように弄ばれて、玩具にされたい。いやらしいことをいっぱいされて、可愛がられたい。
 思考が既にまともじゃない。
「悟は悪い子だね」
 息を荒げたまま見上げた先にいる傑は歪んだ笑みを浮かべ、心底愉しそうだった。ゾッと、身体が痺れる。何をされるのだろうと期待してしまう。だって悪い子には『お仕置き』が必要だ。もはや傑にされるお仕置きなら、何でも『ご褒美』だと思えてしまう。末期だ。
「ねえ悟、……ちょっと『散歩』に行こうか」
「……ッは……?」
 予想もしていない傑の提案に、悟はぼんやりと傑を見上げたまま間抜けな声を上げた。


 高専の周辺は、大都会東京とは思えない程長閑な光景が広がる。都会の雑踏などとは無縁の郊外の田舎。その田舎の道を、長身の男女が並んで歩く。一人は黒っぽい私服に身を包んだ団子頭の男。柔和で優しげな顔と、耳の大きなピアスがアンバランスだ。だが不思議と似合う。もう一人は都内の有名進学校の制服姿の、白い髪の美少女だ。
「今日は看護師やってるセフレの家に行く予定だったんだけどさ、急に一人欠員が出て出勤になったって言うから予定がなくなったんだ。でも悟が私に構って欲しいみたいだったし、これで丁度良かったね」
「……、」
 隣を歩く傑はまるで天気の話でもするかのようにのんびりとした口調で最低なことを話している。悟は返事をしなかった。
 だったら他の女とでも会えよ、と思う。どうせ他に何人も身体だけの関係の女がいる癖に。何でわざわざ帰って来るんだ。
 構って欲しくなんかねえよ、と言い返したいのに、それが出来ない。下唇を噛んで息を詰めておかないと、変な声が出そうだから。そうやって必死に声を押し殺しているのに、傑は素知らぬふりで、顔を覗き込んで来たりする。
「悟、聞いてる?」
 切れ長の目でこちらを窺い見ながら、傑はポケットの中に入れた片手を小さく動かす。カチカチ、と摘みを操作するような微かな音を耳が拾い、次いで、ヴヴヴ……と低く唸るようなモーター音が、はっきりと悟の耳に届いた。
「っや、やめ、」
 引き攣った声が出る。微弱な振動で絶えず悟を責め苛んでいた小さな卵型の機械が、後ろの粘膜をさっきまでよりも強めの振動で擦り上げる。ビクン、と腰が震えて、せっかく引き結んでいた唇が、勝手に綻んでしまう。
「っあ……ッ、」
 小さく漏れ出てしまった恥ずかしい声に、かあっと頬が赤く染まる。思わず立ち止まり、慌てて口を手の平で覆う。だが傑はやめてくれない。やめるどころか、立ち止まって少し身を屈めた悟を見下ろしながら、またリモコンをカチカチと操作する。ヴヴ、と今度は前に取り付けられた玩具が強めに震えて、悟はビクビク身を跳ねさせながらその場に座り込んでしまいそうになる。
「傑……ッ、や、やだ、」
 身体から力が抜ける。傑に腰を支えられ、嫌だと思うのに振り払うことも出来ない。傑の腕に縋り付いてしまいそうになるが、それは絶対嫌だとプライドが行動を阻む。はあ、と熱っぽい息を吐くと、愉しそうに両目を細めた傑と目が合う。
「どうしたの、悟。そんな泣きそうな顔をして」
 どうしたかなんて自分が一番分かっている癖に、とぼけたことを言いながら、腰に回された傑の手が尻の方へと伸びて来て、スカートの上から割れ目に触れる。悪趣味だ。こんな場所で、どうかしている。だが傑に少しでも触れられると、体温がどんどん上昇する。歯止めが利かなくなりそうで、恐い。
 ぞわぞわと肌が粟立って、支え無しではもう立っていられない。悟は震える手で傑の腕をぎゅっと掴んだ。悟のプライドなど、傑の魔の手に掛かると一瞬でへし折られてしまう。
「も、やだ……ッあ、あ゛ッ」
 嬲られ続ける前からどろりと先走り汁が溢れる。ゴムの中に溜まっていく所為で重みが増すのに、重みに逆らうようにそこは勃起したままだ。スカートを押し上げるようにして、女子にはない筈のものが存在を主張する。倒錯的な光景に、羞恥と屈辱と、認めたくもない官能が背筋を駆けた。
 昼日中の往来で、いくら人通りが少ないからといって、人が全く通らない訳でもないのに。その異常な状況も興奮の材料になっているのかぞくぞくする。悪趣味なのは自分も同じかも知れない。
「傑……ッ、」
 傑に抱き寄せられたまま、殆ど無意識に股間を傑の太腿に擦り付けるようにする。スカートの布越しに、じんわりと快感が生まれて脳髄を蕩けさせる。女物の下着の中に無理矢理納まっている所為で痛い。でも、ごり、とローターが亀頭に擦れて、気持ちいい。痛くて気持ちいい。もう訳が分からない。
「すぐる、っあ、あ゛ッん、あっ」
 もはや声を抑えることも忘れて、傑の太腿を使って自慰に耽る。傑は悟の痴態を見つめながら笑みを浮かべ、悟の頬に手を添えた。頬に触れられただけなのに、ぞわ、と鳥肌が立つ。頬まで性感帯になってしまったように。
「悟、やっぱり君は悪い子だね」
「だ、ってぇ゛……ッ、も、無理、」
「まだ我慢して」
 悪魔は、優しい声で甘く囁く。その甘い声が致死量の毒となり、悟をどろどろに溶かしてしまいそうだ。
 手を引かれて、強引に歩かされる。何処へ行くんだと訊きたくても、例によって変な声が漏れそうで訊けない。近くにある公園に子供を連れて行く途中だと思しき母親が、すれ違いざまにちらりと悟の顔を見る。何しろ悟は可愛い。嫌でも目立ってしまう。だがスカートの前を押し上げているブツが彼女の目に入ってしまうのではと肝が冷える思いしかしない。
 傍から見れば手を繋いで歩くカップルにでも見えるのだろうか。片方は女遊びが趣味のクズ男で、もう片方は女装した男なのに。そのクズ男と手を繋いでいるのが嬉しいだなんて、最悪だ。


 高専の最寄り駅の駅舎の中、男子トイレへと誘われる。田舎の駅で、女子の制服を着た悟が男子トイレに入るのも誰も見ていなかった。
「す、傑、」
 無人のトイレの中、抵抗しようと腕を引く。その腕を掴まれ、逆にぐいと乱暴に引き寄せられた。バランスを崩し、傑の方へ倒れ込む。抱き留められれば、ドク、と心臓が鳴る。
「離せ、って、」
「もう無理だって悟が言ったんだろ?」
 う、と言葉に詰まっているうちに個室へ引っ張り込まれてしまう。傑が鍵を掛ける。狭いトイレの個室に長身の男二人。窮屈以外の何物でもない。
「……傑、」
 壁に身を押し付けられ、ヒッと情けない声を出す。目を逸らそうとするのに、顎を掴まれて、無理矢理視線を合わす羽目になる。……何だこれは、壁ドンと顎クイだなんて、何処の少女漫画だよ。と思うのに、ドキドキして、いやそれよりも、ローターで散々虐められた身体が疼いて、もう限界だ。
 散歩だなんて言いながら、ベッドの上で悟の後孔にローターを埋めて前にもローターをテープで固定した傑の手際のよさが恐い。そのまま外へと連れ出されてしまった自分も恐い。何故って、本気で嫌なら術式でも何でも使って逃げればいいだけなのに、それをしないということは、傑に恥ずかしいことをされたいと望んでいるということだから。自分も知らない自分の本性を、傑に暴かれるのが恐い。
「ねえ、スカートの中どうなってるのか、私に見せてよ」
 顔を寄せた傑がねっとりと囁く。ずくりと腰の奥が疼いた。
 抗えない。言いなりになってしまう。言うことを聞けばご褒美を貰えると知っているから。
「すぐる、……ッも、もう、これ、取って、」
 恥も外聞もなくスカートを捲り上げて傑にねだる。露わになる白い太腿と、淡いピンクのショーツと、中に窮屈そうに収まっている性器とに、傑の視線が注がれる。ショーツの中で不自然に膨らんだ先端で、ヴヴ、と玩具が震えている。
 恥ずかしい。なのに見られていると意識すればする程耳の奥で血がドクドクと騒ぐ。見られると気持ちいい。腰が揺れる。その拍子に奥に埋まったローターがいいところに当たって、悟は「ひう、」と情けない声を上げた。
「取って欲しいの? これ」
 つつ、と傑の指先がショーツ越しに性器を這う。焦らすようなその所作と微弱な刺激に眉根が寄った。堪らず性器を傑の指に押し付けるようにする。ごり、とまた後ろの粘膜をローターが擦り、びく、びく、と悟は身を震わせた。
「あ゛……ッも、はやく、しろ、」
「言葉遣いがなってないよ、悟」
 ショーツをずらされ、ぶるんと反り返ったものが外へと飛び出す。亀頭に押し付けるようにして、ピンク色のローターがテープで固定されている。更にローターが絶対ずれないように、性器はローターごと上から薄いコンドームで覆われている。先端の僅かに余ったゴムの先に、先走り汁が溜まっていた。
 悪趣味で倒錯的で変態的だ。なのに頬に血が集まる。焦らされるのが辛いのに、傑はわざとゆっくり見せつけるように、勃起を覆うゴムを外していく。透明な体液が中で揺れているそれの口を縛って、小さな棚に投げ捨てる。その指先を目で追ってしまう。早く触れて欲しくて、おかしくなりそうだ。
「すぐる、」
「これ、取らない方がいいんだろ。だって悟、嬉しそう」
 これ、と傑の指が、テープで固定されたローターに触れる。ぐ、と性器に押し付けるようにされて、機械の振動がよりダイレクトに亀頭に伝わる。快感が一気に敏感な場所に押し寄せて、ビク、と大きく喉が仰け反った。
「ッあ゛ッ!? や、だめ、あ゛ッ!」
 刺激に不慣れな弱いところを絶え間なく震える玩具に嬲られ、眩暈がした。びくびくびく、と身体が何度も跳ねる。跳ねれば跳ねる程、後ろのローターが粘膜を擦って新たな快感を生む。スカートを捲り上げている手も汗ばんで、殆ど力が入らなくて、手を離してしまいそうになる。
「傑……ッ、」
「悟、気持ちいいの? 悟のクリトリス、ひくひくしてる」
「ふあ゛ッや゛っあ、あッ!」
 耳元で囁かれながら、ぐり、とローターを強く押し付けられる。どぷ、と溢れた先走り汁が、既にべとべとの竿を更に汚した。嬲られて赤くなった亀頭に執拗にぐりぐりと押し当てられて、快感に何度も腰が跳ねた。陸に上げられた魚みたいに。溢れ出る先走り汁がぶしゃ、と音をさせてローターの隙間から漏れ出て来る。訳が分からないくらい気持ちいい。
「や……ッも、取って、傑、お願い゛、やら゛ッ、あ゛っ」
「何がどう嫌なのか説明して」
 声と共に、傑の生暖かい息が耳朶を擽る。ぞわぞわぞわっと背筋が震えた。
「ひっあ゛ッ、あ゛ッ、く、クリトリス、ぐりぐりされて、あ゛ッだめ、」
 クリトリス、などという自分にはない筈の器官の名を口に出しているだけで身体が妖しい官能に支配されるのに、言葉の途中で蜜を溢れさせている尿道口にぐりゅ、とめり込ませるようにされて、他人に暴かれたことなどない小さな穴が、容赦ない振動に晒された。頭の中が真っ白に染まり、悟は思わず片手をスカートから離して傑の腕にしがみ付いた。
「も、だめ、イく、イッちゃ、」
 ぶる、と身を震わせる。どぷ、どぷ、と白濁が零れ出て、ローターの表面を白く汚した。恍惚に喉が仰け反り、両目に涙が浮いた。腰から下がどろどろに蕩けてしまいそうだ。
「あ、あ゛……ッはひ、あ、」
「ローターでクリ責めされてイくなんて、悟は女の子みたいだね」
「うる、さい、……馬鹿、――っうあ、あ゛……っ」
 人のよさそうな顔をしてしれっと隠語を口にしながら、傑がイッたばかりの悟の萎えた性器にまたローターを押し付けた。悟の精液で白く汚れた小さな玩具がぶるぶる震えながらより感度が鋭くなった先端を嬲る。ビク、と腰が跳ねるのを、止めることが出来ない。
「や゛め、ッあ゛っ!? すぐる、待、ひい゛ッ!?」
 低いモーター音の合間を縫うようにして、ぬちゅ、と精液が卑猥な音を立てる。また前が勃起して、赤くなった亀頭の表面を透明な蜜で濡らした。
「悟、また濡れてるよ。クリトリス、そんなに気持ちいいの?」
「ひあ、よくねぇ゛ッん゛っあ、あ゛ッだめ、クリトリス、だめ、」
「素直じゃないね」
 思わず手を離してしまったスカートが、ひらりと悟の陰部を覆う。その直前に傑に裾を掴まれて、くるくると捲り上げられたかと思えば生地をベルトに挟み込まれてしまった。恥ずかしい場所が傑の前に晒されたまま、角度を変えて当てられ続けるローターが、先走り汁とさっき出した精液を混ぜるようにぬちゃぬちゃと音を立てる。敏感になった身体にその刺激は毒でしかなく、何かが競り上がって来るような嫌な感覚に、ぶわ、と鳥肌が立った。
「待……っ傑、や、待って、」
「どうしたの。言ってごらん」
 囁く言葉は優しげなのに、傑のしていることは悪魔そのものだ。縋れる相手が目の前にいるこの悪魔しかいないのも、悟にとっては最悪以外の何物でもない。悪夢だ。いっそ本当に全部悪い夢だったらいいのに。
「わ、分かんねえ、けど、……ッで、出そう、」
「何が?」
「何って、」
 言いたくなくて、口を噤んでで目を伏せた。だが黙り込んだからと言って傑がやめてくれる訳もなく、今やはっきりと尿意だと分かるものが益々込み上げて来る。観念して震える唇を開き、消え入りそうな声で呟く。
「しょ、小便……」
「そこは可愛く『おしっこ』って言いなよ」
「……っ」
 言えない。小さく首を横に振れば、ぐいと手を引かれて強引に身体を便器の前へと誘導された。背後に立った傑が耳元で「ここでしなよ」と囁く。
「見ててあげるから」
「や……だ、」
 拒否しながら、かあ、と耳まで真っ赤に染まった。
 嫌だ。そんなの、傑に見られたくない。そう思っている筈が、何故か排尿している姿を傑に見られているのを想像すると、身体中が熱くなる。嫌なのに。ぞくぞくと身体が痺れる。見られたいかも、だなんて、どう考えても有り得ない。
「悟は強情だな」
 しなよ、とまた優しく囁きながら、傑がつつとローターを竿に滑らせた。排尿を促すように濡れた竿を上下に扱かれ、忽ち身体から力が抜けた。もはや尿意は意志の力では押え込めない程限界だ。
「だ、め……すぐる、も、出る、ッあ゛……ッ」
 ぶる、と身体が震えた。しょろ、と少量の尿が出て、だめだと思うが一度出てしまうともう止められなかった。じょろろ……と薄黄色の液体が間の抜けた音をさせて尿道口から零れ出て、便器の中へと吸い込まれていく。じょぼ、と便器に落ちた尿が更に恥ずかしい水音を立てて、微かなアンモニア臭が鼻腔を掠める。悟はあまりの羞恥に消えてしまいたくなった。
「も、嫌だ……ッ見る、な、馬鹿、」
 ぽろ、と涙が零れる。泣いているなんて傑に知られたくなくて俯くが、鼻を啜る音で多分バレた。傑の視線を痛い程感じる。
「は……、可愛いな、悟」
 欲に塗れたような声に、ぞくぞくぞくっと背筋が震えた。変態じゃないのかと思った。尿を出している姿を見て可愛いだなんて。そう言われて悦んでいる自分も大概だ。
 見られて、興奮している。だなんて死んでも認めたくない。だが尿を出し終わった性器が緩く勃ち上がっていて、言い逃れ出来ない。当然傑にも気付かれていたようで、ぶるぶる震えるローターをまた亀頭に押し当てられて、悟はびくびくびく、と腰を跳ねさせた。
「待……ッ、今だめ゛、ッあ゛ッふあ、あ゛ッ」
「おしっこするところ私に見られて興奮してる癖に、何が駄目なの」
「やだ、ッあ゛っ、も、ローター、やめ゛、」
 尿と先走り汁と精液が混じり合って濡れている亀頭をぐりぐりと押し潰すようにされて、頭の中が真っ白に染まる。後ろのローターがこりこりといい場所ばかりを引っ切り無しに擦って、気が狂いそうだ。どぷ、どぷ、と溢れ出る先走り汁が便座に垂れ落ちて、イッてしまいそうなくらい気持ちいい。身体に力が入らない。
「傑、ローター、取ってぇ……ッ、」
 意図せずくたりと背後の傑にもたれ掛るような体勢になってしまいながら傑を振り返るが、傑はローターを取るどころか、意地悪く微笑みながら背後から悟のショーツをずらすと腰を掴んだ。尻の割れ目に、熱く脈打つ塊の先端が当たる。
「すぐる、」
 ひ、と息を呑む間に、太くて熱い楔がぬぷ、と一気に奥まで貫いた。性器に押し込まれるようにして、後孔を蕩かせていたローターまで一緒に奥へと入ってしまう。
「ッあ゛…………ッ、」
 舌の先までびりびり痺れる。声にならない悲鳴を上げながら、押し出されるようにして悟の性器からとろとろと白濁が流れ落ちた。あまりの快感に視界が霞む。気持ちいい、だけで頭の中が一杯で、蕩けてしまいそうだ。頭がボーッとする。なのに追い討ちを掛けるみたいに、後孔の空洞を奥まで塞いだ傑の雄が中で動き始めて、ビクッと身体が痙攣した。
「待、ッあぁ゛ッ、あ、だめ、」
「だめ? どこが」
 ずず、と内壁を擦りながら浅い場所へ移動した怒張がまた深い場所を穿つと、ぱちゅ、と卑猥な音が個室に響く。ぶつけられると同時に震えるローターが粘膜に振動をダイレクトに伝えて、快感が身体中に伝播する。休む暇もなく強制的にまた勃起させられた前がたらりと蜜を垂らし、傑の手が敏感な鈴口を抉るようにそこにローターを押し当てた。イッたばかりで敏感になった身体が壊れた玩具みたいにがくがく跳ねる。
「も、離、――っひあ、あ゛ッやら、あ゛っ!」
「悟、おまんこの中きゅうってして悦んでるよ。クリトリスも、ローター当てられるの好きなんだろ?」
「ん゛ッあ、あッ、すき、ローター、好きぃッ、あぁ゛っ」
 好きな訳がないのに、気付かないうちに好きだと口走っている。じゃあもっとしてあげるねと、傑が虐められ過ぎてぷくりと腫れた亀頭に震える玩具を押し付ける。思わず腰が引けると、ローターと傑の性器がごりゅ、と深い場所を抉る。
「ッあ゛ぁッ!」
 逃げ場がない。
 前も後ろも気持ちよくてもう訳が分からない。
「っはは。悟はクリ責めされながらおまんこにちんぽ突っ込まれるのが大好きなんだね?」
 信じられないような下品な言葉を吐きながら、傑がローターごとごりゅごりゅと中のいい場所を抉る。ビクッビクッと腰が何度も痙攣し、気持ち良過ぎて死にそうだ。
「ひあ、あ゛ッ、好き、すぐるのちんぽ、すき、」
「悟にそういうやらしいこと言わせるの、すごく興奮するなあ」
「ら゛って、も、きもちい、好き、」
 自分が何を口走っているのかも殆ど分かっていないまま、うわ言のように好きと繰り返す。身体が、射精の瞬間を待ち侘びるようにぐっと仰け反った。
「ッあ、あ……っ」
 精液がまた流れ出て、連続でイかされた身体ががくがくと震えた。なのに傑が手を緩めてくれる気配はなく、死にそうだ。不意に傑に片腕で抱き寄せられて、心臓が止まりそうになる。
「悟、好きだよ」
 思ってもいない癖にと非難したくなる。好きだなんて、ただの口から出任せだ。なのに好きと言われるときゅう、と心臓が奇妙にねじれた。それが嬉しいという感情なのだと、理解すると同時にその感情を消し去ってしまいたくなった。
「さとる、すき」
「――ッあ゛あ……ッ!?」
 出る、と思った瞬間に、ぷしゃ、と性器の先から透明な液体が迸った。精液ではないさらさらの透明な液体が、ローターの隙間を縫ってびゅ、びゅく、と断続的に飛び散る。不規則な噴水みたいに。
 何だこれ、また漏らしたのかとパニックに陥るが、さっきのようなアンモニア臭がない。ビクンッビクンッと身体を痙攣させながら、気持ちいいと恥ずかしいとが交錯して頭の中がぐちゃぐちゃだ。いや、身体の方も既にぐちゃぐちゃだが。
「悟、潮まで吹いたの? やっぱり悟は女の子みたいで可愛いね」
「う、るさい……、」
 女の子じゃねえよ馬鹿と言い返したくとも、荒い息の合間に震える声で煩いと言うだけで精一杯だ。
 好きとか可愛いとか、どうせ他の女にも言ってんだろ、と思う。傑のそんな言葉なんて、信じるのは馬鹿げていると思う。なのに言われると嬉しい。どうかしている。最悪だ。
 ちゅ、とうなじに吸い付かれてぞくぞくする。前を責め苛んでいたローターのスイッチが切られ、甘く苦しい地獄のような快感から解放されるのかと期待するが、そうではなかった。まだ硬いままの傑の性器が、ぐり、と粘膜を擦る。耳元で傑が声を出すと同時、息が掛かってぞわりとする。
「じゃあ次はちゃんとイこう」
 ずぷんっ! と勢いよく突き刺された性器が、ローターごと奥を抉る。喉が仰け反り、身体中がビリビリと痺れた。もう無理、と思うのに身体が健気に反応する。また勃起してしまった前から、名残のような潮がびゅ、と飛んだ。
「ひ、ッあ、あ゛ッ……すぐりゅ、も、無理、やだ、」
「何言ってるの。まだイけるだろ」
「だ、だめ、ッあ゛……ッ」
 立っていられない。思わず目の前にあるタンクを掴むと、傑の方へ尻を突き出すような格好になる。腰を掴んだ傑が中をみっちりと埋めた質量のある性器でごりゅ、ぐりゅ、と粘膜を抉り取るように攪拌し、ずるずると引き抜く。張り出したカリが壁に擦れて、堪らなく気持ちいい。
「すぐ、る……ッだめ、あぁ゛ッ、あ、あ、」
 奥へと突き立てられる度、快感が脳天まで突き抜ける。傑の亀頭とローターとに同時に擦られて、死ぬ程気持ちいい。襞を擦られる度に感度が鋭くなっているような気がする。本当に『女』にされているみたいだ。
「悟、だめなの? おまんこの中、擦られるの好きじゃない?」
「ひ、あ゛……ッ好き、すぐるのちんぽで、おまんこ、こひゅられるの、すき、」
「はは。素直。ご褒美あげなきゃだね」
 傑が背中に覆い被さって来る。
 セーラー服の胸元にローターを持った傑の手が入り込んで来て、ブラジャーの中へと滑り込む。つんと勃った乳首に悟の体液で濡れたローターが当てられて、ヴヴヴ……と小さな機械が震えながら乳首を刺激する。甘く切ないような快感にビク、ビク、と腰が揺れて、どろどろの酷い有様の性器からびゅ、と先走り汁が飛んだ。
「あ゛ー……ッ、だ、だめ、ちくび、だめ、」
「どこが? こりこりになってるのに。乳首、気持ちいい?」
 ぐり、と震える機械に押し潰されて、恍惚に喉が反る。後ろからも傑の太い雄で穴を穿たれる。快感ばかりひたすら蓄積されて、コップから水が溢れ出るように、両目から涙が零れ落ちる。
「きもちいい、もっと、」
 嫌だと言い返したいのに、何故か傑に訊かれると素直に快感を認めてしまう。そんなことを口走れば自分が酷い目に遭うだけなのに。それとも酷い目に遭いたいのだろうか。それはあまりにも趣味が悪過ぎる。
「へえ。既に自分で開発済か」
「ち、がう、――っあ、あひ、あ゛ッ」
 その通りなのだが、そうだと肯定出来る訳もないので咄嗟に否定した。否定した途端、ずぷ、と性器が奥をこじ開けて入り込んで来た。ローターが傑の亀頭に押し込まれて捻じ込まれて、もう二度と取れないんじゃないかと思うくらい深い場所でぶるぶる震える。頭の中も目の前も真っ白に染まった。
「ッあ゛、……も、イく、」
 びゅる、と白濁が飛ぶ。弧を描いて便器の中へと吸い寄せられていくのを呆然と眺めながら、後孔に熱い欲をぶちまけられているのを感じる。どくどくと注ぎ込まれる精子が、自分を傑の色に染めてしまうようで、肌が粟立つ程の興奮を覚える。
「すぐる、……」
 熱に浮かされたように名前を呼びながら振り向けば、濡れた唇を傑の唇で塞がれた。ちゅう、と舌を吸って唇が離れて、普段とはかけ離れた肉食獣のような目で自分を見つめている傑と目が合う。
「悟はやっぱり、女の子より可愛いな」
「……可愛く、ねえよ」
 目を逸らして、乱暴に唇を拭った。
 比較されるのは気に食わない筈だ。比較すんなと、この前のように怒りたかった。怒るべきところで、可愛いと言われて嬉しくなっているのが、悔しい。


「なー腹減った。なんか食って帰らね? あ、そうだあの店行こ」
 ぶらぶらと高専に向かって歩きながら、悟が高専の近くにある鄙びた定食屋の名前を出した。およそ悟が今着ている名門の女子高の生徒が立ち入らないような古くてボロい定食屋だ。古くてボロいが、味が美味いのでよく傑や硝子と一緒に行く。
 日が沈みかけているが、夕飯時というにはまだ早い時間だ。
「……でも、早く帰って風呂に入った方がいいよ」
「いいんだよ。オマエのだから、洗い流さなくても」
「え?」
 隣からまじまじと見つめられているのを感じて、すぐに顔が赤く染まった。言うんじゃなかったと後悔した。というか何でそんなことを言ったのかも分からない。目を伏せると、何故か手を繋がれた。それも、軽く繋ぐだけではなく指と指を絡めて。所謂『恋人繋ぎ』というやつをされる。
 ドドドド、と一気に心臓が不規則に脈打ち始める。不整脈かも知れない。
 何でと混乱する。さっきまでしていたことに比べたら、たかが手を繋ぐなんてどうということはない筈なのに。まるで初恋の中学生みたいに、緊張している。手が汗ばんで来る。傑に気持ち悪いと思われているかも知れない。
「……やっぱり洗い流した方がいい。お腹壊すから」
 気まずそうにそう言った傑をそっと盗み見た。もう悟の方を見ていない。何故か顔が赤い。
 ――何で、オマエまで赤くなってんだよ。
 とは訊けず、黙って手を繋いだまま歩く。手の平の汗を拭いたかったが、傑と手を離してしまうのも嫌で繋いだままにする。  何故傑が手を繋いだのか分からない。いや、多分無意味だ。他の女達にしてきたのと同じことを、無意識にやっているだけだ。  自分にそう言い聞かせても、傑と指を絡めているのが嬉しいと思ってしまうのを止めることが出来なかった。