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 G県の廃村での任務以降、あれ程悟の頭を悩ませていた乳首の気がふれそうな程の疼きは綺麗さっぱりなくなった。どうやらようやく粘液の効果が切れたらしかった。うろ覚えの記憶の中で、廃村で傑と情事に耽っている時に自分の身体の中から何かがぼとりと落ちたのを微かに覚えている。あれが、自分の体内に寄生していた呪いの残骸のような物だったのだと思う。
 勿論、いきなり襲って来る乳首の狂おしい程の疼きなど、ない方がいいに決まっている。そんなものがずっと続いていては生活にも任務にも支障が出る。だからこれは喜ぶべきことだ。なのに、悟はもやもやした気分を抱えている。
 ……もやもやし過ぎて、昨夜も乳首を弄りながら自慰をした。普段は疼くことはないが、自慰の最中にそこに触れると気持ちいい。すぐる、と小さく名前を呼ぶと、余計に感度が増す。傑に乳首を弄ばれているのを想像すると、ぞくぞくと興奮した。――実際に傑に触れてもらうことは二度とないと思うと、苦しくなった。

「……あれ。夜蛾先生は?」
 校庭の傍にある倉庫の鍵を開けていると、背後から声が掛かった。びく、と、反射的に肩が跳ねる。
「なんか、急に呼び出しが掛かって任務行った。体術の自主練しとけだってさ」
 悟は振り返らずに答えた。そう、と答える傑の声が耳に届く。ドキドキと、心臓が煩くなり始める。煩い普通にしろ緊張すんなと必死に心の中で言い聞かせても、自分の後ろに傑が立っているというだけで、どんどん心臓の動きが暴走する。俯いて、鍵穴に差し込んだ鍵を勢いよく回した。
 依頼された任務は自分達学生では手に余る内容らしい。しかしだからといって、自習時間に傑と二人というのは気まずい。せめて硝子もいればと思うが、硝子も昨日から任務で不在だ。
 倉庫の重い扉を開くと、がらがらと耳障りな音がした。埃っぽい倉庫は上の方に小さな明り取り用の窓があるだけで、そこから差し込む僅かな日の光が、雑然と置かれた掃除用具やら体術の練習に使うマットやらを照らしている。光が届かない隅の方は、薄闇に覆われていた。
「で、悟は何してるの」
「……別に。そ、掃除でもしようかと」
 まさか倉庫に隠れていようと思っていたなんて言えなくて、適当なことを言ったが余計に嘘っぽくなった。高専内の掃除だなんて、今まで自主的にやったことなどないしこれからもきっと一生しない。明らかに嘘だし、避けている、ということは、多分傑にはとっくにバレているだろう。
「悟、ねえ」
 倉庫の中へ足を踏み出した途端、腕を引かれて傑の方へ引き寄せられた。抱きすくめられる、と、期待なのか危機感なのか分からないものが芽生えて、咄嗟に傑を引き離そうとする。その行動もとっくに予測していたらしく、傑が自分から離れようとする悟の力を逆に利用して、悟の背を倉庫の壁に押し付けた。がたん、と鈍い音がして、背中に鈍痛が走る。
「った……、離、せよ」
 睨み付けると、サングラス越しに傑と目が合った。切れ長の黒い目が、悟を真っ直ぐに見ている。サボろうと決めて制服のままの悟とは違い、傑はちゃんと動きやすいジャージ姿だ。
 ぐっと身を寄せられて、傑の後れ毛が頬を掠める。ぞわりと肌が粟立った。声が、喉に貼り付いて出て来なくなる。
「悟、どうして私を避けるの。私何かした?」
 すす、と下唇に傑の指先が這う。ぞわぞわと、傑の触れている場所から妖しい官能が広がっていく。傑の腕を掴んでその指を舐めたい。訳の分からない衝動が身体を駆けたことに混乱する。感情に蓋をするみたいに、ふいと傑から顔を背けた。
「別に、」
「私達、付き合ってるんじゃなかったの? 私の告白にオーケーしてくれたのは、あれは嘘?」
「……」
 そっちこそ、あれは本気の告白だったのかと驚く。あの場の異様な雰囲気が傑にそう言わせたのだと思っていたし、それならそれで、傑のことは諦めようと思っていた。だって、どうせもう母乳は出ない。あの激しい疼きを鎮めるのに、傑の手を借りなくても済む。だったら傑もわざわざ悟を手伝わなくて済む。だからもう、傑と二度とああいうことは出来なくなる。
 傑は優しいから、困っている悟に手を貸してくれていただけだ。もう、その必要はない。
「す、すぐる、俺、」
 傑の方を見る。だが目が合うと心臓が跳ねて、顔が赤くなる。すぐにまた目を逸らした。
 そっと傑の手がサングラスを外すのを、止めることも出来ない。完全に流されているし、主導権を握られている。
「実は付き合う気なんてないって言いたいの?」
「ち、がう……」
 誤解されるのは嫌だった。だから意を決して口を開いた。
「お、俺、もう……ち、乳首、疼かない、から……だから、」
「だから私は必要ないって?」
 低く地を這うような声に背筋が凍る。ぐいと顎を掴まれ、無理矢理傑の方へと顔を向けさせられた。何怒ってるんだよと言う前に、傑の唇が己のそれを塞いだ。
 唇の感触に、ぞくっと背筋が震える。こんな場所で何考えてるんだと思う。硝子と夜蛾は不在だが、他の誰かが通り掛からないとも限らない。すぐにやめさせなければならない。なのに、舌先が強引に唇の間を割って入って来て、身体から力が抜ける。唇全体を覆うようにキスされたまま、倉庫の壁に身をもたせ掛けるようにしてされるがままになっている。
「っん、……ッ、」
 また、息が出来ない。思考力を奪われる。くらくらと眩暈がするのは、酸欠の所為か舌を吸われる快感の所為か、分からない。傑の舌が別の生き物のように口内を好き勝手に這い回るのが、逃げようとする自分の舌を捕らえられてしまうのが、身体の奥を熱くさせる。じんじんと熱くて、両目の端に涙が浮く。腰にそっと手を添えられただけで、ビクリと過剰に身体が跳ねた。
「ッあ、すぐる、」
「さとる、好きなんだ」
 至近距離で、傑が囁く。濡れた唇がさとると呼ぶと、息が唇に掛かる。腰の奥が疼く。あまりにもストレートな告白に、顔が真っ赤に染まる。両足の間に膝を差し込まれて、ぐり、と股間を押される。既に兆し始めている場所が、膝に擦られて益々硬度を増してしまう。
「っや……♡」
 こんな場所で、と身を捩って抵抗する。だが身体を壁に押し付けられたまま、傑に目を覗き込まれて理性が焼き切れてしまいそうだ。
「悟、好き」
「も、黙、れ……!」
「さとる、」
「や♡あ゛ッ♡だめ、傑、」
 ぐ、ぐり♡ごり♡
 膝頭に擦られる度、ビク♡ビク♡と腰が跳ねる。直接手で触って欲しくなる。際限なく身体が疼いて、さわってと口に出しそうになる。誰か来たら終わりなのに。むしろ、誰か来たら終わりだから興奮しているのかも知れない。傑に恥ずかしいことをされているのを、高専の誰かに見られる。想像すると、下腹が熱くなる。変態だ。
「悟、返事を聞かせて」
「……ッ、」
 返事をしないことには、延々と続けられてしまいそうだ。
 返事。ここで変に意地を張って俺は好きじゃないと言えば、傑はきっとすぐに諦めてしまう。優しいから。悟が嫌だと思っていることはしない。なら本当のことを言うしか選択の余地がない。だが傑のようにはっきりと口に出すには勇気が要る。猛烈に恥ずかしい。
「すぐる、」
 傑の肩をぎゅうと掴む。縋るような声が口から出てしまった。熱っぽい目で傑を見つめる。物欲しそうな、ねだるような目をしているかも知れない。
「……き、」
「聞こえない」
 消え入りそうな声に被せるように、傑がもっと大きな声で言うように冷酷に促した。相変わらず性格が悪い。そんな性格が悪い親友にいいようにされているのが、悔しい筈なのに被虐的な悦びとなって身体中を満たしている。
「……す、好き、だから……、も、もっと、して欲し、」
 耳まで真っ赤に染まって、心臓の音が煩い。教師が不在だとはいえ授業中なのに、だなんて、そういうこともどうでもよくなるくらい、身体が飢えて快楽という名の餌を欲していた。


 ちゅ、ちゅ、と濡れた音をさせ、傑の唇が白い首筋をなぞる。ぬろりと舌に首の皮膚を舐められれば、ぞわっと肌が粟立った。悪寒と紙一重のような快感が、首筋から神経を駆けて腰へ伝播する。周囲が暗くて視覚が役に立たない所為もあってか、耳が異様に音を拾う。感覚が研ぎ澄まされて、感度が上がる。
「す、ぐる……♡あ……ッ♡」
 はだけられたシャツの中に、傑の熱い手が入り込む。手の平が素肌の上をなぞる感触にぞくぞくする。思わず身を捩ると、腰掛けさせられている木製の棚ががたりと音を立てた。
 倉庫の中は暗くてよく見えない。傑がどんな顔をしているのか分からないし、自分がどうされているのかも感覚でしか知ることが出来ない。それが、余計に興奮を煽る。むしろ見えない分、羞恥心が減って大胆になってしまいそうな気がする。
 傑の指が、乳首を掠める。そのほんの一瞬の微弱な刺激さえ身体が快感だと認識する。ビク♡と腰が跳ねて、その続きを期待するように胸を前に突き出す。だが傑の手はすぐにそこから離れてしまう。焦らすように周辺の肌を撫でて、触れるか触れないかの微妙な場所ばかりを指先が擽る。
 焦れて、眉根が寄った。焦らされる程に感覚が鋭敏になっていく。触れて欲しくて、身体が火照る。頭の奥がじんと痺れる。 「傑、……や♡ねえ、お願い、」
 傑のジャージをぎゅうと掴んで上擦った声でねだった。暗がりで傑の影がふっと意地悪く微笑んだのが分かった。
「ちゃんとおねだりして。悟はいい子だから、おねだりの仕方も分かるよね?」
 悪魔の甘い声が、耳朶を擽る。その声に抗う術が、悟には分からない。無駄な抵抗も悪足掻きも全て無意味で、意志とは関係なく従ってしまう。
「……ち、ちくび、さわって♡」
 あっさりと陥落する。支配されるのを望んでいるかのように。
 俯いた視線の先で、傑の手が妖しく蠢く。両手の指が、左右の乳首を摘んでこりこりと転がす。待ち侘びていた刺激に腰がビク♡ビク♡と小刻みに震え、あっという間に乳首がつんと勃ち上がった。
「あっ♡あ゛……っ♡きもちいい♡傑、」
 両目が潤み、とろんと蕩ける。もっととねだるように更に胸を突き出すと、指の腹でぎゅうと押し潰されて悦楽が背筋を駆けた。 「っひ♡あ……っ♡」
 こりこり♡くりくり♡こすこす♡
 転がされ、捏ね回され、擦られる。しつこく蹂躙され、身体から力が抜ける。がくがくと腰が震えて、一度も触られていない前が、硬く張り詰めていく。
「ここ、ビンビンに腫れて女の子の乳首みたいだね。悟、ほんとにこのまま女の子になっちゃうんじゃない?」
「な、ならない……ッ、あ゛っ♡ひあ♡あっ、」
 傑に言われると、本当に女になってしまうんなじゃいかと有り得ない妄想に囚われる。傑専用の女にされて、可愛がられるのを想像してみる。想像だけで、下腹がきゅんと疼くのは我ながらどうかしている。
「母乳が出なくても、こんなメス乳首ビンビンに勃起させて悦んでる変態なのに、私がいなかったら一人でどうにも出来ないだろ。私が一生面倒見てあげるから安心しな」
「も、何、言って、ッあ♡んッあ……♡」
 傑の輪郭が暗闇で身を屈め、顔がぽてりと腫れた乳首に近付く。ふう、と温い息をそこに吹き掛けられ、感度の異様に高まった身体がびくびくと跳ねた。だが焦らすように息ばかり掛かって、もはや空気に触れているだけでも辛い。傑の黒髪を震える手で掴み、自分の胸元に押し付けた。
「すぐる、……な、舐めて♡いっぱい吸って……♡」
 ぬろ、と生暖かい感触が乳首を撫でる。期待した通りの快感が腰を蕩かせた。尖った先端を押し潰すように舌を押し付けられて、乳首全体を包み込むようにして舌が小刻みに往復する。もう一方の乳首は爪で何度もこりこりと引っ掻かれて、身体がぐずぐずに溶けてしまいそうなくらい熱い。
「あ゛あ……ッ♡んッ♡や゛♡あ゛ッ♡すぐる、」
 汗ばんだ手で傑の髪を掻き抱く。悟の所為で後ろの団子が乱れて、傑の髪がほつれていく。
 唾液で濡れた乳首をきつく吸われて、甘く切ないような愉悦に両目の端から涙が零れた。
「傑、……ッ♡あ゛っ、も、やめ、ッあ゛ッ♡」
「吸ってっておねだりしたのは悟だろ?」
「そ、だけど……っ、ひあ♡あ゛ッ♡も、吸われるの、やら♡」
 がり、と歯を立てられて、鋭い痛みと快感が同時に皮膚を襲った。ビクンと身が仰け反った拍子に、己の制服の布地を押し上げているものが、ごり、と身を屈めた傑の腹の辺りを擦った。その弱い刺激にさえ、頭の奥が痺れたようになる。
「あ、あ゛……っ♡はあ……ッ♡」
 ちゅ♡じゅぷ♡じゅぷ♡ぬちゅ♡
 こりこり♡こすこす♡しこしこしこしこ……♡
「だ、だめ……♡そ、んな、吸うな……ッ、」
 わざとなのか、下品な唾液の音をさせてしつこく吸われながらもう一方の乳首まで指で入念に愛撫される。狭い倉庫の中に卑猥な水音と自分の声が木霊して、羞恥を煽られた。
 吸われて、時折甘噛みされて、舐められる。反対側を擦られ、摘んで引っ張られる。甘い快感と小さく引き攣れるような痛みとを交互に与えられて、頭が霧架かったように意識がはっきりしなくなる。
「やあ゛ッ♡す、すぐる、もう、そこは、いい、からあ……♡した、も、」
 やめさせようと傑の肩を押すが、腕に全く力が入らない。
 一度も触れられていないのに、先走り汁が下着を濡らしてもうぐしょぐしょになっているのが分かる。少しでも快感を逃そうと傑の腹に押し付けるのを、無意識のうちに繰り返してしまう。ぐり、ごり♡と硬いものを擦れば、びく♡びく♡と悦んで腰が跳ねた。
「あ……っ♡」
 すっと傑が身を起こした。その所為で、性器を擦り付けていた傑の身体が遠ざかり、物足りなさに眉根が寄った。傑が少し身を屈め、今度は悟と視線を合わせる。ほんの少し暗闇に慣れた目に、傑の長い髪が自分の所為で解けて肩に掛かっているのが見えた。
「悟、ほら、上手にねだって」
 上手くねだらないとこのまま放置すると言われた気がして、傑の腕に縋り付いた。目先の快楽を追うことしか、もはや考えられない。
「ちんこ、さわって、お願い……」
「いいよ」
 ふっと意地悪く微笑んだ傑が悟の下半身へと手を伸ばした。ベルトを外され、手早くジッパーも下ろされる。下着ごと制服をずらされると、反り返ったものがぶるん♡と外に飛び出した。既にはち切れそうな程膨らんで、だらだらと先走り汁を零している。
 腰、浮かせて、と指示されるがままに尻を少し浮かせれば、傑の手が素早く下着と制服を膝の上辺りまでずり下ろした。
「すぐる、――っあ♡ひあ゛っ♡」
 勃起に傑の手が触れる。ほんの少しの刺激なのに、身体が過剰にビクビクと反応した。焦らされ過ぎておかしくなったみたいに。竿を握られ、絶妙な力加減で上下に擦られる。忽ちどぷどぷと先走り汁が溢れ出て、傑の手を見る間に汚していく。
「ッあ゛♡あ、あ゛ッ♡待って、ッあ゛っ♡」
「どうしたの?」
 当然待ってくれる筈もなく、傑の指がぬるぬると濡れた亀頭を這った。敏感な場所を擦られると腰が蕩けそうになる。びくびくびく♡と身が仰け反り、傑の手に勃起を押し付けるような格好になった。柔らかな指の腹が亀頭に食い込む。目の前で星が散った。
「待っ、あ゛ッ♡で、出る♡出ちゃう、」
 どぴゅ♡びゅく♡びゅっ♡びゅっ♡びゅっ♡
 白濁が勢いよく飛んだ。信じられないくらい早く果ててしまったことにショックを受けて混乱した。
 何で、とパニックになった頭で考えている間もなく、傑の手が先端にまだ残っていた粘ついた精液を絡め取った。くちゅくちゅと音をさせて先端で先走り汁と一緒に掻き混ぜられて、萎える間もなく性器がまた硬さを取り戻す。
「~~~~や゛ッ♡あ、あ、すぐる、」
「悟、足開いて」
 耳元に顔を寄せた傑が低く囁く声に、抗えない。いつの間にか片足から下着もズボンも抜き取られていて、悟は暗示に掛かったように太腿を震わせながらゆっくり足を左右に開いた。膝裏に手を差し込まれ、片足だけ座っている棚の上へと誘導される。傑に、後ろの穴が見えてしまう体勢だ。
 暗がりにいても、もう目が慣れて来て結構見える。多分それは傑も同じだ。――恥ずかしい場所が傑に見えてしまう格好に、顔が熱くなる。でも、足を閉じて隠すことが出来ない。何故って見られていると意識すると、身体の奥からぞくぞくと快感が沸き上がって来る。
「すぐ、る、」
 は、と期待するように口から熱っぽい息が漏れた。
 おもむろに傑がポケットに手を突っ込み、個包装の小さな袋を取り出した。封を破る手の平の上で傾けると、どろりとした液体が傑の手の中に滑り落ちていく。
「な、」
 何でそんな物用意してるんだよと動揺した。当然の疑問に傑が小さく笑いながら、手の中のぬるぬるを指に絡めて悟の尻の窄まりへとその指を差し込む。ポケットの中で傑の体温にずっと温められていたのか、温い液体で濡れた傑の中指がつぷりと穴に入り込んだ。ぞわ、と肌が粟立って、咄嗟に傑にしがみ付いた。
「っや……、」
「悟が、いつ発情するか分からない身体だったから」
 でも、これじゃ私の方がいつ発情するか分からないよねと囁かれ、今更ながら傑も発情しているのかと意識して心臓が煩くなった。
「すぐる、」
 ぬ、と指を奥へ埋められ、ビクッと身体が跳ねた。第二関節辺りまで埋まった指が、中で動く。指先に粘膜が擦れると腰の奥がじんと疼いた。頭の奥もじんと痺れて、じわじわと焼かれるような快感が身体を侵す。
「は、ッあ、あ……♡」
 ひくん、と穴が蠢いた。もっととねだるみたいに。眉根が寄る。
 物足りない。
 もはや指一本だけでは、中の空洞を埋めるには不充分だった。指よりももっと太いもので奥の奥まで貫かれる快感を知ってしまったから。あの鮮烈な快感を身体が欲して、細い指に必死に襞が絡み付く。
 二本目の指を差し込まれ、ぐちゅぐちゅと泡立った音をさせながら掻き混ぜられれば、がくがくと身体が震えて性器の先から透明な蜜が滴った。卑猥な汁を先端に塗り込めるようにして、傑の空いた方の手がぬるぬると這う。蜜がとめどなく溢れ出て、傑の指を濡らしながらたらたらと滴り落ちた。
「ふあ゛ッ♡あ、あ、ひあ、あッ♡」
「悟、気持ちいいの? やらしい汁がどんどん溢れてる」
 くちゅ♡といやらしい音をさせながら濡れた手に竿を扱かれ、指をばらばらに動かして後孔を蹂躙される。指が前立腺を掠めた途端、電流にも似た快感が背筋を走り抜けビクッ♡と身体が痙攣した。
「あ゛ッ♡あ、あッ♡だめ、」
 こりこりとしこりを嬲られると眩暈がした。イく直前特有のあの痺れるような感覚が腰を襲う。慌てて傑の腕を掴んで、首を横に振った。指だけでイかされるのは、嫌だ。咄嗟にそう思った。
「ん゛ッ♡あ゛ッ♡す、すぐりゅ、あっ♡やだ、」
「やなの? どう見ても嫌そうじゃないけど。ほら、」
 ぬぽ♡と指を引き抜かれる感覚にも、身体が震える。何も中を満たすものがなくなった空洞が、寂しげにひくんと疼く。
 ほら、と、性器を扱いていた手を見せつけるようにされる。ほんの少ししか差し込まない日光に、悟の体液で濡れた指が光っていた。恥ずかしくて指から目を逸らしながら、ゆっくりと両足を大きく開いた。M字開脚のような体勢で、後孔が傑から丸見えになっているのを強く意識する。
「嫌……っ、ゆび、じゃなくて、ちんこがいい、」
 ちんこ挿れてとねだれば、それを勝手に想像して下腹が熱くなった。じんじん痺れて、穴が物欲しげにひくひくと収縮する。生殺しの中途半端な状態に泣きそうだ。
「っ悟、君、随分と煽るね」
 口の端を歪めて、傑が苦しそうに笑う。余裕なんてないような顔で、ジャージの前を寛げる。既にバキバキに勃起した太い雄が現れて、悟の喉がひくりと鳴った。恐怖の所為ではない。これを奥まで挿れられたら、と考えただけで、身体の奥底が燃えるように熱い。
「すぐる……っ、」
「っねえ、挿れてもいい? ……ナマで、いれたい、」
 雄の支配欲を剥き出しにしたような顔で、どろどろの欲望を丸出しにしたような声で、獣じみたことをねだられて拒否出来る筈もない。もとより悟にも余裕などないし、多分、拒否しても無駄だ。傑はきっと、もはやナマで挿れる気しかない。
「責任、取るから、」
 女相手でもないのに一体何の責任だよと、平素なら冷静にツッコんでしまうような台詞にもドギマギして、体温が上昇したままの身体から汗が出る。
 にちゅ♡と傑の亀頭が入り口に触れる。穴がきゅん♡と悦んで、傑の先端にしゃぶりついた。もっと奥へ誘い込もうと吸い付いて、蠢く。ずぷ、ぬぷぷ♡と太くて硬いものが、壁を擦りながら悟の中へと入って来る。
「ッあ゛……ッ♡あひ、あ、あぁ゛ッ♡」
 容赦なく暴かれる悦びに身体が打ち震えた。痛みはなく、難無く呑み込みながら激しい快楽しか感じない。
 あまりの快感に一瞬意識が飛びそうになり、一番奥まで届いた瞬間に押し出されるようにしてびゅる♡と白濁が飛んだ。傑のジャージの胸や腹、自分の胸や顔にまで飛び散る。思わず顔をしかめるが、傑はお構いなしに容赦のない抽挿を続けた。ずりずりとカリが内壁の敏感な場所を擦りながら浅い場所まで出て行ったかと思いきや、またずんと奥深い場所を一気に貫かれる。舌の先まで痺れるような感覚が身体中を麻痺させた。
「あ゛あ゛……っ!?」
 呼吸も忘れるくらいの衝撃に見開いた目から涙が落ちた。
 イッたばかりで敏感になった身体がびくびくと何度も跳ねる。中で円を描くように亀頭で奥をごりごりと擦られ、許容量を超えた快感がスパークする。強制的にまた勃起させられた前が、先端に纏わり付いた白濁の隙間から先走り汁をたらりと零した。 「す、すぐ、ッ待っ、あ゛ッ♡だめ、」
「っごめん、待てない」
 覆い被さるようにして、口先だけは謝りながら傑が中を好き勝手に掻き回す。耳朶に触れる吐息が熱い。びくりと身を竦ませると首筋を舐められた。ぞわぞわと肌が粟立つ。
「や゛……ッ♡お、奥、やら♡すぐりゅ、ッあ゛ッ♡」
 抵抗なんて出来ない。されるがままに犯されて、身体を揺さぶられる度に勃起した前が傑のジャージの布地生地に擦れて、そこがまた快感を生む。既に悟の体液で汚れたジャージに、先走り汁が汚れを上書きしていく。
 ぬ゛♡ぬぽ♡ぐちゅ♡ぬちゅ♡
 ぱちゅ♡ぱちゅ♡ビクッ♡ビクッ♡
 暗い倉庫に濡れた音が木霊する。ビクンと腰を震わせる度、木製の棚ががたがたと音を立てた。
「ん゛ッ……♡あ゛っ♡すぐる、ッあ゛ッ♡あ゛っ♡」
 出し入れする度、傑の性器の形に中が馴染んでいく。出し入れを繰り返される度に粘膜が柔らかくなり、カリが襞を擦るのも、奥を亀頭で突かれるのも堪らなく気持ちよくて、先走り汁がびゅっ♡と飛ぶ。イきそうになって、傑の背に腕を回してぎゅうとしがみ付いた。
「すぐる……ッ♡も、もうイきそ、」
「っ私も。中に、出すよ」
「は……っ♡出して、すぐる♡俺のなか、すぐるのでいっぱいにして♡」
「……ほんとうに、君は煽るのが上手いな」
 これ以上大きくなりようもないと思っていた怒張が、また自分の中で質量を増した気がした。圧迫感と紙一重の快感が腰を蕩かせる。一層強く容赦なく腰を動かされ、ぶちゅ♡ずちゅっ♡と下品な音が結合部から聞こえた。
「あぁ゛……ッ♡はひ♡あ゛っ♡だめ、だめイく♡イッひゃう♡すぐう、」
「イけよ」
 普段と違う乱暴な口調で命令されるとぞくぞくした。逆らえる筈もなく受け止め切れない程の快楽の波に翻弄され、悟はぶるりと身を震わせた。目の前も頭の中も真っ白で、真っ白な景色の中で眩い星が幾度となく弾けた。
「ッあ゛……っ♡はあ、あ゛ッ♡」
 どぷ♡どぷ♡と精液が溢れ出て、また傑のジャージや自分の腹を汚す。
「……っさとる、」
 後ろが勝手にぎゅうと傑のものを締め付けて、傑が小さく呻きながら射精した。熱いものが身体の奥へと注ぎ込まれていく。嬉しい、と思った。嬉しくて、口元にしまりのない笑みが浮かんだ。
「は、はひ……♡」
「……ねえ、もう一回、」
「は……、」
 硬度を保ったままの性器でずにゅっと奥を揺さぶられ、頭もろくに回らないまま間の抜けた声を発する。奥まで差し込まれていた楔をまた引き抜かれ、ずろ、とカリが内壁を擦る感覚にビクリと身体が跳ねた。
「すぐりゅ、」
「さとる、好き」
「……ッあ……♡」
 好きと言われると条件反射のように反応するみたいに、前がまた硬くなる。パブロフの犬みたいだ。従順に反応する身体に混乱しながら、悟は弱々しく首を横に振った。
「傑、……も、もうやだ、」
「ごめん、まだ足りない」
 腰を前後に動かされ、ぬぽ、ぬぷ、と怒張が内壁を擦る。さっき中に出された精液が掻き混ぜられて、ごぽっと音を立てながらそこから溢れ出て来る。雌の器官のようにひくんと嬉しげに収縮しながら後孔が勝手に快楽を貪る所為で、びくびくと腰が震えるのを止められない。
「っあ、あ゛ッ♡すぐる、」
 ぶちゅっ♡ずちゅっ♡ビクッビクッビクン♡
 下品な音をさせて犯されながら、乳首にまで手を伸ばされる。尖ってこりこりになった赤い粒を指で転がされ、訳の分からないような愉悦が身体の中にひたすら蓄積されていく。
「すぐる、や♡やだ、っあ゛ッ♡」
 恐くなって傑の背に爪を立ててしがみ付きながら、長い足で傑の腰をがちりと掴んだ。
 不意に傑の手が伸びて来て、口先に人差し指を突き付けられた。黙れの合図に面食らうと、傑が切れ長の目でちらりと出口の方を見た。息を詰めて、身を固くする。足音が、倉庫の外から聞こえて凍り付きそうになった。
「七海ー! 何処行くんだよ?」
「別に。自販機で飲み物を買うだけです」
 後輩の灰原の明るい声と、同じく後輩の七海が冷静にそれに答える声がする。声を押し殺していると、傑がこちらに視線を戻した。口元に、微かに笑みが浮かんでいる。
 ぐり、と、傑の性器が前立腺を擦った。びく♡と肩が跳ね、危うく出そうになった声を、慌てて手の平で口を覆って押し殺す。涙目で傑を睨むが、傑が涼しい顔をして、悟の乳首を押し潰した。甘くて鋭い官能が背筋を駆ける。
「ッん……っ♡」
 鼻に掛かった甘ったるい声が自身の口から漏れ出て血の気が引いた。傑にやめろと目で訴えるのに、傑は悟のぷくりと腫れた乳首を撫で擦りながら前立腺を執拗に押し潰す。悦楽に腰が何度も跳ねて、イきそうになる。
「っあ、……♡」
 ぐりゅ♡と強めに捏ねられて、既にぐちゃぐちゃの前からまた白く濁った精液が垂れ出た。必死で声を殺しながら、ビクッビクッ♡と腰を震わせる。
 こんなこと、後輩にバレたら終わりなのに。異常な状況なのに。バレるかも知れないところで親友とセックスしていることに、意味が分からないくらい興奮していた。
「僕も行っていい? 夏油さんに出会うかも知れないし!」
「……どうぞ」
 鬱陶しそうに、しかし拒否はしない七海に、灰原が授業で分からないところがあって夏油さんに教えて貰おうと思ってだとか、今度夏油さんと任務に行くから夏油さんにいいとこ見せたいとか意気込んでべらべらと喋っている。その声が倉庫のすぐ外で聞こえるのに、灰原が崇拝している『夏油さん』は薄暗い倉庫の中で、悟に淫らな快感を与えながら笑みを浮かべている。ゲスだと思った。
 足音が遠ざかる。傑に文句を言ってやりたいのに、射精の余韻で腰をビクつかせながら、はあ♡と浅く息を吐くしか出来ない。
「声我慢出来て偉いね、悟」
 いい子、と傑が悟の頭を撫でた。ぷちんと切れて、オマエバレたらどうすんだ馬鹿と罵ろうと口を開いた。が、何か言うよりも先に更に深い場所を、ぶちゅっと傑の張り出したカリが通過する感覚があった。
「あ゛……ッ!?」
 喉を仰け反らせると、性器からとろとろと力なく精液が垂れ落ちた。連続でイかされた性器がひくひくと震えながら、流石に色が薄くなった精液を尿道口からこぽりと吐き出す。
 息が、出来ない。何も、見えない。気を失ったのかと思うくらい感覚が麻痺する。なのにイッている時の快感だけは続いている。涙がぼろりと零れて頬を伝った。
「……っすぐる、そこ、だ、だめ♡あ゛ッ♡」
「悟、可愛い」
 傑が腰を動かして、さっきこじ開けた場所に何度も小刻みに出入りする。ぶちゅ、ずちゅっと水音をさせて、カリが執拗にそこを擦る。傑に力なくしがみ付いたまま、悟は本能的な恐怖で首を横に振った。
「や、だ……♡すぐりゅ、やら♡あ゛ッ、だめ、あ゛ッ♡」
「っねえ、さとる、またこの前みたいに、潮吹きしてるとこ、見たい」
 悪趣味なリクエストに、悟は益々激しく首を振る。白い髪が乱れて、涙で濡れた頬に貼り付いた。
「む、無理♡無理ぃ゛……ッ♡」
「出来るだろ? 悟は最強なんだから」
 ごりゅっ♡ぐちゅ♡ぶちゅっ♡
 結腸を何度も何度も擦られて、何かが競り上がって来る感覚に鳥肌が立った。限界まで我慢した尿が出る瞬間のような。こんな場所で傑に見られながら漏らすなんて死んでも嫌だ。悟は必死で身を捩った。
「むり、ッあ゛ッ♡やら♡あ゛ッ♡出ちゃ、」
 ぷしゃあああああ……っ♡♡♡
 さらさらとした透明な液体が性器の先から勢いよく迸った。びちゃびちゃと傑の服を汚して、自分の顔にまで飛沫が飛ぶ。イッてるみたいな快感が続いて、ぐずぐずに蕩けてしまいそうだ。
「すぐ、う……♡も、もうやだ♡やだ……っ♡」
 ひぐ、としゃくり上げると、流石に虐め過ぎたと思ったのか、傑がごめんねと言いながら悟の濡れた唇にキスを落とした。震える身体を抱き締められて、傑の体温と匂いとに包まれる。どくんと心臓が鳴る。
 こんなの、べたべたに汚れて、さいあくだ。
 最悪な筈なのに、傑の言いなりになって潮まで吹かせられてしまうことに、ぞくぞくと支配される悦びを覚えてしまう。
「……責任、取れよ……」
 ぼそぼそと呟くと、悟を抱き締めたままの傑がくぐもった声でちいさくうんと答えた。
 傑の所為だ。傑がこんな身体に作り変えてしまった。だから傑が責任を取って、悟の所有者にならなければならない。
 自分で考えた無茶苦茶な理論に満足しながら、悟は傑の身体を抱き寄せて、涙と涎でぐしゃぐしゃの顔のまま小さく笑みを浮かべた。


 別々での任務もちょこちょこ入るが、今日は同じ任務に出ていた。
 今日も最強の二人にとっては簡単な任務だったので、予定より早く終わって自由になった午後に、クレープが食べたいと悟が突発的に提案して原宿に来た。
 晴れた街の、クレープ屋の屋台の前の小さなスペースに並べられたプラスチック製のテーブルを挟み、長身の二人がプラスチック製の椅子に座って向き合っている。
 クレープを食べるのは、やはり若い女が多い。彼女達の目がちらちらと悟に向く。気付いていて、無視する。傑以外は、どうでもいい。
「……それ、凄い量のクリームだな」
 胸焼けしそう、と傑がげんなりして悟が手に持っているクレープを眺めた。これが美味いんだよと言いながら、悟はそのクリームだらけの物体にかぶり付いた。うへえと呆れたような溜息を洩らしながら、傑はブラックのコーヒーを一口飲む。
 今日は平日だが、天気のいい街には人が大勢繰り出している。東京は、いつでも何処でも人が多い。
「悟、鼻の頭にクリーム付いてるよ」
 傑の手が不意に伸びて来て、悟の鼻の一番高い部分に触れた。掠め取られた生クリームが傑の指に付いているのを見て、悟は傑の腕を掴んだ。引き寄せて、傑の指を赤い舌でぺろりと舐める。クリームの甘味が口内に広がった。舐めるだけでは飽き足らず、咥えて、じゅぷ、と唾液の音をさせて啜る。
「……っ悟、やめなさい、こんな場所で」
 傑から抗議の声が上がる。
 当然、こんな場所だからやってる。鬱陶しい女達にわざと見せ付ける為だ。彼女達のギョッとしたような視線を感じながら、目的を果たせて満足したので、あっさりと指を離した。傑の指に付いていたクリームがなくなった変わりに、悟の透明な唾液が指を濡らしている。
「なあ、帰ったらしよ」
 サングラス越しに傑を見て不敵に微笑めば、傑がたじろいだ。少し顔を赤くして、「そういうことを外で言うもんじゃないよ」なんてまた正論を吐きながらも、傑のスイッチが入ったのを、確信する。
「責任取るんだろ? 今日も俺のこと酷く抱いてよ」
「悟、」
 咎めるような声にも構わず、挑発的に微笑んで「ね?」と小首を傾げる仕草をする。当然、酷く色っぽくて傑をくらりとさせる所作だと知った上でやっている。
「……ああ、分かった」
 悟から目を逸らして、傑がぼそぼそと言った。
 一見、悟の方が主導権を握っているようにも見える。だが実は逆で、寮に戻ったらまた前後不覚に陥るくらい激しく犯されるのだと思うと、悟はどうしようもなく身体の奥まった場所が、じくじく疼くのを感じた。

【完】