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 G県の山奥に以前はあった小さな村に、任務で派遣されることになった。
 そこはかつては存在した村で、今では人が住んでいない。廃村だ。近隣には今でもいくつか村が点在しており人が生活を営んでいるが、何故かその村だけが今では存在していない。人が住んでいた家や、集会所か何かに使っていたと思われる公民館、小さな商店、郵便局などはそのまま残っている。
 家、というのは不思議なもので、人が住まなくなった途端に忽ち老朽化していく。育児放棄された幼子が急速に弱っていくように。まるで家そのものが生きているみたいに、世話をする人間がいなくなると朽ちていく。だからその廃村にあるいくつもの空き家も、屋根が傾いて今にも落ちそうになっていたり、外壁が剥がれ掛けていたり、ぼうぼうの草が腰の辺りまで伸びて家全体をぐるりと覆っていたりした。
 誰も住んでいない集落を通る唯一の県道も、アスファルトがひび割れて草が所々から顔を出している。静かで、時たま頭上を飛ぶ鳥の鳴き声だけがする。この村だけ時が止まっているかのようで、昼間でも何処となく薄気味悪い。
「すげえー。なんか出そうだなーこれ」
 傑は駅からここまで送って来てくれた隣の村の男に丁寧に頭を下げているが、悟はもう運転手にも車にも見向きもしなかった。悟、と傑が咎めるように呼ぶので、仕方なく運転席にいる中年の男に向かってサングラスをずらし、あざっすと適当な礼を言う。
 隣の村の男はこんな不気味な場所からはすぐ離れたいとでも言いたげな顔で、挨拶もそこそこにさっさと車を出してしまった。  ――まあ、実際になんか『出る』のだ。なんかというか、呪霊が。だから呪術高専の生徒が二人派遣された。
「帳、必要なさそうだなー。ここ誰も住んでないって言うし、近隣の村からも人間の足だけじゃ来れないくらい離れてるし」
 悟は勝手に空き家の庭に入り込み、朽ちた民家の外観をしげしげと眺めている。
 どうにも、普通は人間はこういう場所に住むというのが未だにしっくり来ないのは自分の家が特殊な所為だろうが、こんな狭い場所に住めるのだろうかと思ってしまう。硝子と一緒に出掛けた時にそれを口に出して「これだから良家のボンボンは」と呆れられて以来、同じ過ちを犯さないようにしている。
 今日は補助監督の手が全く空いていない。悪いが、公共交通機関を使ってくれ。と夜蛾に言われた。駅から現地までは、隣村の人間に送迎を頼んである、と。この村が滅んだ原因も既に夜蛾から聞かされていたが、今時日本でそんなことがあるのかと半ば信じられないような話だった。
 この村の外れに湖があって、そこに住まうとされる水の神様がいたらしい。そのお陰でこの村の田畑は毎年豊作で、それを妬んだ近隣の村々の男衆がこの村を襲ったという。この村の男達は皆殺しにされ、女子供は売り飛ばされた。湖の水は全て抜かれてしまい、水の神様もそこに住めなくなった。そしてただの廃村と化してしまった村の湖があった場所に、かつて住んでいた女達の強い情念が呪霊として形成され、住み着くようになっただとか。
 昭和中期頃の話だそうだ。呪霊がいるといっても大した被害もなく、長らく放置されていたらしい。それが最近近くの村の若い男が次々と姿を消し始め、どうやらこの呪霊の力がいよいよ増して来た所為だということで高専の呪術師に白羽の矢が立った。限界集落では若い男は貴重だ。これ以上失いたくはないだろう。
 近隣の村々の住人からは、これは神隠しだとまことしやかに噂されているらしい。
「神様だとか皆殺しとか売り飛ばすとかさあ、この平成の世に今時そんな話があるって逆に凄くね? 時代錯誤も甚だしいっつーか」
 誰もいない道路をぷらぷらと歩きながら、ポケットから飴玉を取り出した。口に放り込むと甘ったるい苺の味が舌に広がる。任務中におやつを食うなと傑が咎めるように片眉を跳ね上げるが、構いやしない。糖分の補給は死活問題だ。それにこんな任務、最強の二人には簡単過ぎて飴玉を舐めていても出来るどころか目を瞑っていても出来る。閉じていても呪霊を視認出来る特殊な目だから。
 残穢は、湖に向かう形で地中を這っている。或いは、湖から這い出て何処かへ動いた際に出来た痕跡かも知れない。どうやら標的は地中を移動するらしい。どのみち湖まで行けば調査に何かしら進展があるだろうと、二人して村はずれにあるという湖まで向かっている。
「意外とそういう話は聞くよ。特にネットの掲示板とかだと、連日都市伝説とか田舎の村の伝統や言い伝えなんかのオカルト話の類が投稿されたり考察されたりしてる」
「はあ? 傑、まだあのオカ板に入り浸ってんのかよ? あんな出鱈目だらけの掲示板の住人とか、ウケる」
「出鱈目も多いけど、たまに信憑性のある話も紛れてるから。あと住人って程常駐してる訳じゃない」
 オカ板、とはネットの某巨大掲示板のサイトの中にあるオカルト板というスレッドのことだ。悟はそこに投稿される話なんて殆どが眉唾だと思っている。信憑性のある話が紛れ込んでいたとしても、膨大なガセネタの中から探す気にもなれない。ところが傑はその掲示板をよく漁っていたりする。曰く、情報収集らしい。何かの折に役に立つかも知れないので、噂や都市伝説の類にも目を通すようにしているだとか。
「つうか、神隠しだなんて漫画やアニメの見過ぎかよ? 呪霊の仕業だっつーの。しかもオマエ等の爺さんとか親族がこの村襲った所為だろ? 自業自得だって」
 がり、と舐め始めたばかりの飴玉を噛むと小気味良い音が耳奥で響いた。
 不本意な任務だ。この廃村に住む人間を殺したり売り飛ばしたりしなければ、呪霊なんて生まれなかったのに。勿論、傑は悟とは意見を異にするだろう。案の定、傑は何とも言えない表情で悟を見て溜息を吐いた。
「悟さあ、分かってるとは思うけど、」
「わーかってるよ。どうせどんな理由があろうと俺達呪術師は非術師を守る為にあるって言いたいんだろ?」
 傑がぴたりと足を止めたので、勝手に別行動を取る訳にもいかない悟も歩くのをやめざるを得なくなった。振り返れば、傑はじっと何か言いたげな目で悟を見ている。何か言いたげな癖して黙っている傑に、言いたいことあるならさっさと言えよと言いたい。でもそれだと自分が傑にそう言うように仕向けられたみたいで気に食わない。
 自分で思っているよりも険のある言い方になってしまったのはよくなかったとは思う。でも、苛立つ。傑の正論だけに苛立っているのではない。完全に自業自得の人間達の尻拭いを呪術師がしなければならないというのが、納得出来ない。
 というか、そもそもそんな難しい話じゃなくて、このただ一人の親友を好きになってしまったかも知れないということに、無性に苛立っている。感情の行き場がなくて、何処にぶつけたらいいのか分からない。一番ぶつけたくない相手にぶつけていることに、焦燥感が募った。
「……そんな正論ばっか言うんだったらオマエ一人で祓えよ。どうせこんな簡単な任務に最強二人もいらないだろ」
 ちがう。こんなことを言いたかったんじゃない。でも、口が止まらない。任務中に喧嘩なんかしている場合じゃないのに。
「最強の無駄遣いじゃん」
 声が二人以外に誰もいない周囲に響いて、虚しく散った。傑はなおもじっと悟を見つめていたが、一つ瞬きをするとすいと悟の方へ手を伸ばした。
「どうしたの、悟。らしくないね」
 落ち着けとでもいうように、指が頬を撫でる。ぞわ、と肌が粟立った。反射的に傑の手をバシッと払いのけていた。
「触るな!」
 大声が木霊して乾いた空気に吸い込まれていく。
 違う。別に傑に触れられるのが嫌なんじゃない。何故怒鳴ったのか分からない。混乱した。冷静さを欠いている悟と対照的に、傑は大声を出されても平静を保ったままで、溜息を吐いた。居たたまれなくなって悟は身を翻した。
「一人で行く。オマエはそこにいろ」
「待て。単独行動は危険だ」
 今度は傑は慌てたように悟を止めた。腕を掴まれて引き戻され、思わず顔をしかめて傑を振り返った。
「はあ? 意味分かんねえ。俺は最強だぞ。危険な訳ないだろ」
 不意に傑の言葉の意味を理解した。いつもなら危険な訳がない。『今の状態では』単独行動は危険なのだ。――いつ何時、また乳首が疼き始めるか分からないから。だからこのわざわざ最強二人が出向く程でもない任務に傑も同行したのかと勘繰ってしまう。一人では対処しきれない、と傑に思われているから。傑にお荷物だと思われているから。
 気に食わなかった。最強だという自負がある。か弱い非術師のように、傑から守って貰うなんてプライドが許さない。
「……一人で行く。ついて来たら、オマエも呪霊ともども祓ってやる」
 傑との間の空間に、ぴしぴしと奇妙な音を立てて空間のひずみが生まれる。非術師が見ても、そこだけが歪んでいるなんて気付かない。だが傑には、悟が何をしようとしているのかすぐに分かったようだ。ギョッとしたように顔を強張らせ、じり、と一歩後退った。
「悟、」
 何もない空間で風が起こる。悟の前髪が浮き上がり、白い額が露わになった。咄嗟に避けようとした傑の脇を、激しい爆発音と共に衝撃が襲う。傑の身体が文字通り吹っ飛び、中空に投げ出された。
 術式反転『赫』。かなり手加減したしわざと身体の中心から逸らしたが、時間は稼げる筈だ。
 悟は傑に背を向けて、とっとと歩き始めた。どのみち傑はこの程度のことで怪我なんて負わない。放っておいても大丈夫だ。悟、と呼ぶ声がするが、立ち止まりもせず振り返りもしなかった。


 ところが数分もしないうちに、またあの忘れもしない感覚が、身体を襲って責め苛み始めた。最悪のタイミングとしか言えない。
「ッは、はぁ……ッうあ、あ、く、……ッ、」
 ずく、ずく、と脈打つように乳首が疼く。歩く度に乳首が服の布に擦れて、耐え難いようなじんじんと痺れる感覚を全身へと伝播させている。
 廃墟の壁に手を付いて思わず立ち止まれば、そのまま膝から頽れてしまいそうになる。むしろ立ち止まるのはこれ以上進めなくなりそうで危険だと判断して、歯を食いしばって足を前へ踏み出した。だが殆ど進まないうちに、布地に擦られた乳首から腰に甘い快感が伝わって、また歩くのを止めてしまう。
「ッあ゛……ッ♡」
 こんな時に限って絆創膏を貼っていないのは、いい加減に粘液の効果は解けているだろうと勝手に結論付けていたからだ。いや、結論付けるというか、解けていて欲しいという願望だ。全くどうにもなっていなかったらしい。
「はあ♡う、あ♡」
 少しでも気を緩めれば手が乳首へと伸びてしまいそうだ。触れれば気持ちいいともう知ってしまっているから。そこに手が伸びそうなのを、溶けてなくなりそうな理性で辛うじて押し留めながら口から荒く息を吐き出した。勿論そんなことで疼きが治まる訳はなく、時間の経過と共に酷くなる。
 泣きそうだった。下腹まで疼き始めて、壁に手を付いたままで身を捩った。下着の布地が性器に触れるのでさえ微弱な快感となってビクン♡と腰を震わせる。理性、という最後の防波堤が、欲という波に少しずつ削られていくのを感じる。
 湖まではまだ距離がある。というか小さな村の癖に、外れにある湖はやたら遠い。どうせならそこまで車で送れよと思ったが、車が通れない程の狭い道が続いているとさっき説明されたことを思い出す。だったら歩いて行くしかないのだが、歩行さえままならない。
 詰み、という言葉が頭に浮かんだ。もしくはチェックメイト。万事休すだ。
「はあ、クソ……ッ、す、」
 すぐる、と無意識にさっき吹っ飛ばした親友の名前を呼びそうになっていることに気付いて、慌てて下唇を噛んだ。傑がいなくてもこんな任務は一人で出来ると啖呵を切ったばかりだ。だが名前を呼ぶのは直前でやめられても、傑のことが勝手に頭に浮かぶのは止められない。むしろ考えないようにしようと思えば思う程記憶が蘇る。
 傑の指でつんと勃った乳首を捏ねられ、押し潰され、転がされ、あられもない声を上げる自分。挙句そこを濡れた舌に舐められたり甘噛みされて、微かな痛みと共に身体の奥底から湧き上がって来るような快感に耐え切れずに乳白色の液体を迸らせる自分の姿、それを見る傑の目が、獲物を狙う肉食獣のようにぎらついていて――
「っう、あ……♡」
 そろ、と手が乳首へと伸びた。と、その時背後で何かが砕け散るような大きな音が響いた。
「っえ、」
 素早く反応しなければならない場面なのに、身体に力が入らない所為でいつもより振り返る動きが数十倍は遅い。のろのろと振り向いた悟はもう一度え、と中途半端に声を発したまま硬直した。六眼が限界まで大きく見開かれる。
 あちこちひび割れたコンクリートの地面を突き破り、気持ち悪いぬらぬらとした太いものが突き出ていた。しかも一本だけではない。四本の、――蛇? いや、目も鼻も口もない。表面は血が通っていない皮膚のように白く、ぶつぶつと疣のような物に覆われている。何の液体なのか判然としないぬるついたものがその表面を濡れ光らせていた。
 ぞ、と肌に鳥肌が立つ。生理的嫌悪感が何よりも先に来て、その得体の知れない物体からなるべく遠ざかりたいと本能が告げる。  がらがら、と音をさせてコンクリートが砕けて、水面から身体を突き出すように、地面からその謎の物体が全容を現した。ばらばらとコンクリートの破片が散る中、太さの違ういくつもの触手が不気味に蠢きながら、固まっている悟の方へとうねうねと伸びて来た。
「っひ、」
 息を呑んで後退ろうとすると足がもつれて無様に尻餅をついた。普段ならこんな間抜けな真似は絶対しない。さっさと術式を使って祓っている。その反応を即座に出来なかったのは乳首がじくじくと疼いて身体に力が入らない所為だ。
 足首に濡れた触手が一本絡み付く。全身の毛が総毛立つような悪寒に、喉の奥から奇妙な声が漏れた。
「う、」
 術式、と咄嗟に体勢を立て直そうとするが、ぬるぬると気持ち悪い動きの癖に凄まじい速度で伸びて来た触手が、あっという間に太腿や腰の辺りにまで絡み付いてしまった。ずる、と引っ張られてバランスを崩し、仰向けに地面に倒れ込む。反動でサングラスが手の届かない場所まで飛んで、かしゃんと乾いた音をさせてコンクリートの上に落ちた。ヤバいと思った時には触手が胸の辺りにまで伸びて来ていた。
【男だ】
【おとこだ】
【子孫繁栄の為】
【お前の精を寄越せ】
 表面をびっしりと覆う疣が数個ぱくりと割れて、口のように開閉しながら皺枯れた声で気が狂れたようなことを言う。
 まごうことなき呪いだ。これは間違いなく湖に住むとされる呪霊だ。滅びた村の子孫繁栄の為に若い男ばかりを狙う、女達の怨念が形成した呪霊だ。
 有り得ない、と思った。五条悟ともあろう人間が、狂おしいような乳首の疼きに苛まれていた所為で呪霊の気配を察知出来なかったなんて。それだけでなく、術式を発動出来ずにあっさりと呪霊に身柄を拘束されるなんて。
 ――これはきっと悪い夢だ。全部全部ぜんぶ、最初から、任務で粘液を浴びたところからぜんぶ。夢だ醒めろ醒めろ醒めろさめろ、
 事実を認めたくなくて現実逃避している場合ではなく、口の中にまでぬるぬるした触手を差し込まれて、んぐ、とくぐもった声を上げる以外は、意味のある言葉を紡ぎ出せない。
「ッん、んん゛、」
 息が出来ない。酸素が脳に行き渡らなくなり、ボーッとし始める。
 暴れようとする身体に執拗に絡み付かれて、シャツの合わせ目から細い触手が易々と侵入する。冷たい感触にぶわっと鳥肌が立つ。
 触手はまるで悟の状況を知っているかのように、腫れてじんじんと疼いている乳首へと辿り着いてくにくにと撫でた。途端、触りたくて仕方のなかった場所に与えられる強い快感に、ビクン♡と腰が跳ねた。
「ん゛……ッ♡」
 嫌だ。嫌悪感と吐き気に襲われる。だが同時に酷く気持ちいい。その快感から逃れようと身を捩ると、ずるりと口の中から触手が抜け出た。触手の粘液なのか自分の唾液なのか分からないものが、つうと口の端から顎へと伝った。首筋を粘液で濡れた触手が這うのが強烈に不快なのに、ぞくぞくと背筋に震えが走る。
「や♡ッあ、あ゛っ♡やだ♡」
 激しく暴れようとする傍から触手に乳首を強く擦られ、あっという間に力が抜ける。腫れて疼いている乳首を執拗にこすこすこす♡と擦られて、湧き上がる拒否感と恐怖より、快感の比率が徐々に大きくなっていく。
「や、だぁ゛♡も、離っ、あ゛っ♡」
 こすこすこす♡くりくり♡ぐりゅ♡ぐちゅ♡
 濡れた音が耳の鼓膜を犯す。腫れてじんじん疼いている両方の乳首を、触手の表面をびっしりと覆った細かい突起が一つ一つ押し潰していく。凄まじい快感にビク♡ビク♡ビク♡と腰が何度も跳ね、とっくに兆して制服の前を押し上げている中心が、じゅわりと先端に先走り汁を滲ませた。
「だめ゛……っ♡あ゛っ♡ん♡あ、あ゛ッ!」
 いつの間にか学ランも中のシャツも前をはだけさせられていて、素肌の上を複数の触手が這う感触にぞくぞくぞくっ♡と身震いした。
 正気ではない。いくら山奥の廃村とはいえここは屋外だ。近くの村にはまだ人が住んでいる。早くどうにかして祓わなければと思うのに、触手がズボンの中にまで入り込んで来る。退路を塞がれていく絶望感に目の前が暗く染まるようだった。
「だ、だめ……ッあ゛っ♡や、やだ♡」
 ぬる、と濡れた感触が下着の中に侵入して、するすると勃起に触手が巻き付く。まるで手で扱くようにぬ、ぬちゅ、と上下に触手が這い回る。突起がざりざりと竿を擦る未知の快感に、目の奥で火花が散った。擦られる度に小さな快感の粒が爆ぜるように、延々と甘く切ないような感覚が続く。嫌なのに気持ちよくて、頭の中はパニックに陥っている。
「あ゛ぁ……ッ♡やら……っ、おねが、ッやら……ッ♡」
 いやいやと小さく首を横に振るが、呪霊がそんなことで解放してくれる訳もない。ずるずるとズボンと下着が足から抜け落ちていくのをどうしようもないままに、片足からズボンも下着も抜き取られてしまう。
「嫌……っすぐる……っ、」
 すぐる、と呼ぶ声が中空に虚しく木霊する。傑に助けて欲しい。だが傑のことは今しがた自分が吹っ飛ばしたばかりだ。後悔が胸に押し寄せるが、もう遅い。
「はぁ゛……っ♡」
 ぬ゛♡ぬちゅ♡ぐちゅ♡ぬぷ♡
 酷い音をさせて、触手が竿を擦り上げる度にとぷ♡とぷ♡と透明な先走り汁が大量の雫となって零れ落ちた。露出した亀頭を、別の触手が這いずり回る。敏感な亀頭の粘膜を細かい突起がさりさりと擦って押し潰すと、鈴口からどぷっと透明な蜜が溢れ出した。 「あ♡ひあ♡あッ♡あッ♡」
 眩暈がするくらい気持ちいい。嫌なのに。腰が勝手に揺れる。くちゅ♡くちゅ♡と卑猥な音をさせながら窪みに出来た水溜りを掻き混ぜられて、涙で視界が霞んだ。ぽってりと腫れた乳首を何度も何度も押し潰され、このまま堕ちてしまいたい、という思いが理性を崩壊させていく。その証拠を示すかのように、前に傑のを挿れられた場所が、ヒク♡と物欲しげに蠢いた。  堕ちたら終わりだ。必死に抗おうと身を捩る。無駄な抵抗だと分かっていながら。目をぎゅうと閉じると、瞼の裏側に傑の姿が浮かび上がった。
「や、だ……っ、すぐる、すぐるのが、いい♡ん゛ッ♡あ゛っ♡だめ♡イっちゃ、ッあっ♡」
 イきそうだ。ぶるりと身を震わせて腰を前に突き出したその時、どちゅ、と気持ち悪い音と共に、下半身に纏わり付いていた触手が数本焼失した。
「っえ……?」
 口から間抜けな声が漏れた。ずぶ、ぶちっ! と何かが切れるような音がして、身体に巻き付いていた触手の感触がどんどん消えていく。閉じていた目を恐る恐る開けば、野犬が数頭、触手を無我夢中で食い千切っていた。気味が悪い緑色の液体が犬の口元から垂れ、地面にも飛び散っている。触手の血のようなもの、だろうか。
 いや、野犬に見えたがそうではない。呪霊――傑が使役している呪霊だ。前に見たことがある。
 狂暴な野犬に似た傑の呪霊達により、廃村に棲み付いた呪いは一瞬で祓われてしまった。後には緑色の血痕と、数頭の犬型の呪霊と、ほぼ身体に何も身に付けていない悟だけが残される。身体にはまだぬらぬらと触手が這った跡が残り、性器は先走り汁でべとべとになっている。
 のろのろと上半身を起こし、すぐるは、とぼんやりしたまま首を巡らせていると、背後から足音がした。
「……悟、」
 苦虫を嚙み潰したような傑の声。緩慢な動作で振り向けば、声と同じに苦虫を噛み潰したような顔の傑が立っている。さっき悟が吹っ飛ばした所為か、髪が少し乱れて団子がほつれていた。慌てて駆け付けたのか、額に浮いた汗を袖で拭っている。
 ――怒っている、のだろうか。
 それはそうだろう。術式で吹っ飛ばされた挙句、一人で行くと啖呵を切った癖に無様に呪霊に襲われていた悟を助ける羽目になって、怒らない筈がない。幻滅されたかも、と思うと涙が出そうになって、歯を食いしばって耐えた。謝らなければと思うが、声を出したら声が震えて泣いてしまいそうで、悟は俯いて顔を隠した。俯くと自分の酷い有様が目に入り、居たたまれなくなって斜め下に視線をずらした。
「……とりあえず服、着たら。任務も終わったし、隣の村の人に連絡して迎えに来て貰おう」
 傑が呪霊を引っ込めたので、静まり返った廃村に自分と傑の二人きりになる。そっと目を上げて窺い見ると、傑は悟から顔を背けている。やっぱり怒っているのだ。ポケットから携帯電話を取り出して、操作し始める。さっきの男に連絡を入れる為だろう。
「……」
 身体が、まだ火照っている。触手にまさぐられて、射精する寸前まで追い詰められていた身体が。熱の解放を求めてじくじくと疼く。後ろが物欲しげにひくひくと収縮を繰り返して、空洞を埋めるものが何もないのが、辛い。
「悟、大丈夫? 服、」
 身動ぎせず固まっている悟を不審に思ったのか、傑が携帯をポケットに戻し、身を屈めてはだけた悟のシャツを直そうとする。偶然傑の手の甲が乳首を掠めて、ビクッ♡と悟の肩が大きく跳ねた。
「あ……ッ♡」
「っ、すまない、」
 パッと傑が手を離そうとする。咄嗟に傑の腕を掴んで、手の甲を自分の乳首に押し付けた。こりこりに尖った乳首をぐいぐいと押し付けると、頭の芯がじんと痺れる。もはや自分が何をしてしまっているのかだとか、恥ずかしいだとか考える余裕がない。ただ気持ちいいことをしたいと、頭の中がその思いだけで一杯だ。
「っひ♡あ♡あッ♡」
「っ悟、ちょっと、」
 戸惑ったように言いながら、傑が手を引っ込めようとするのでその腕をますます強く握りしめた。皮膚に爪の痕が付くくらい強く。蕩けたような顔で手の甲に乳首を擦り付けると、またじわりとそこが濡れるのが自分でも分かった。
「すぐる……ッ、ち、ちくび、触って、お願い、」
「悟……」
 困ったように眉尻を下げながらも、切羽詰まったような悟の声に傑は無碍に断ることも出来ないようだった。迷うように少し視線を彷徨わせていたが、指がそろりと腫れた赤い乳首に伸ばされる。そっと触れられただけで、じーんと甘く切ないような快感が頭の天辺から足の爪先までを貫いた。
「あ゛……ッ♡♡♡」
「っ、触るだけで、いいの?」
「や♡擦って♡すりすりってして♡ひあ♡あ゛っ♡」
 指の腹にすりすりと優しく擦られて、むず痒いような快感が全身を駆ける。びくびくと小刻みに身を震わせながら傑の腕にぎゅうとしがみ付き、傑の手に押し付けるようにして胸を前に突き出した。勃った乳首が指に押し潰され、また新たな快楽を生む。両目に涙が浮いて、口内に溜まった唾液が口の端から零れ落ちた。
「きもちい……♡すぐりゅ、もっと、」 「っ悟、こんな場所で発情してるの? 乳首もこんな硬くして……さっきの呪霊の所為?」
 傑の目に、明らかに色欲が浮かんでいる。だが呪霊にいいように身体を弄ばれていたことが面白くないのか、激しい嫉妬の色が、同時に滲んでいた。
「や……ッちが、うから、……っ傑に、……すぐるにして欲し、――っん゛っ、あ♡あ、あ゛ッ♡」
 ぎゅう、と強めにつねられて、目の前で星が明滅した。びくびくびく♡と身を仰け反らせると、尖った粒に爪を立てられて鋭い痛みと甘い官能が同時に神経に伝わった。痛いのに気持ちいい、というか、むしろ痛くて気持ちいい。
「……前から思ってたけど、」
 ゆるゆると慰めるように乳輪を指先になぞられ、もどかしさに眉根が寄る。腰が揺れて、勃ったままの性器がたらりと蜜を零す。物足りない刺激に焦れた絶妙のタイミングで、また尖った乳首に爪を立てられてビクン♡と腰が震えた。
「ッあ、あ゛……っ!」
「悟、痛いの好きだろ? わざと痛くしてるのに、こんなビンビンにさせて。ここ、もう女の子より敏感なんじゃない? しかも、前より大きくなってる気がするし。もう乳首だけでイけるんじゃない?」
「やぁ゛……っ♡それ、は、無理、無理ぃ……ッ♡下も、さわ、ッう♡あ♡すぐりゅ、」
 煽るようなことを言われながら乳首を捏ね回され、下も、とおねだりしながら勃起を傑の膝辺りに擦り付ける。傑に触れてもらうより先に待ちきれず自分で刺激した所為で、布地が竿に擦れる感触に身体が悦んでびくびくと跳ねた。
「悪い子だね。『待て』も出来ないの?」
 意地の悪い声が耳元で囁く。膝が離されて、それを追うように腰を前に突き出すが、傑の足はもう届かない位置までずれてしまっている。はち切れそうなのに刺激を加えて貰えない。辛くて、涙が出た。
「ごめん、なさ、ッう♡悪い子、だから、お仕置きして、っひ♡ああ゛っ♡」
 水溜りが出来ている先端をくちゅくちゅと音をさせて指先に抉られ、ビクンと身が仰け反った。乳首と同時に刺激されると気持ち良過ぎて眩暈がする。触手に散々弄ばれてイく寸前だった身体が、傑の手で呆気なく陥落させられてしまった。
「すぐりゅ、ッあ゛っ♡イく♡イく♡」
 どぴゅ♡どぴゅ♡びゅる♡びゅくく♡
 上からも下からも濁った白い体液が迸る。もう訳が分からないくらい気持ちいい。傑の方に身を寄せてぎゅうと抱き着くと、ほつれて少し解けた傑の黒髪が頬に触れた。
「ッあ゛♡すぐる、きもちい♡すぐる♡すぐる……♡」
「……っ」
 ぐいと顎を掴まれて、え、と思った時には傑にキスされていた。蕩けて思考が纏まらない脳が、何で、とぼんやりと疑問を浮かべるが、口の中に容易く差し入れられた傑の熱い舌に舌を絡め取られると思考が靄みたいに全部霧散して、理由なんてどうでもよくなる。ただ傑と口の中の粘膜同士を擦り合わせているのが気持ちよくて、ひたすらずっとそうしていたいと、麻痺したような脳味噌がぼうっとそう考えている。
「すぐ、る、」
 唇が離れていくのが惜しい。行かないでというように傑の背に強くしがみ付く。焦って余裕なんて一切ないような顔をした傑と、至近距離で目が合った。ずくり、と下腹が疼いて、まるで待ち侘びるように後孔がひくん♡と収縮した。 「すぐる、ちんこ挿れて、……奥、いっぱい犯して、」
 思考も、理性も、何もかもとっくになくなっていた。


 背後から傑に腰を掴まれて、ヒク♡ヒク♡と卑猥に蠢く後孔に、硬く勃起した傑の雄を宛がわれる。期待するように背筋がぞくぞくして、入り口の肉が、媚びるようにちゅ♡と傑の亀頭に吸い付いた。
「は、ッあ♡う……ッ♡」
「……、さとる、いつからこんな、やらしい身体になったの」
 ずぷ、と太いものが、身体の中へ入って来る。歓喜に全身が震えた。もっと、と貪欲に奥へ誘い込むように粘膜が竿に絡み付いて、ぎゅうぎゅうと締め付ける。後ろで傑が苦しげに短く呻いた。
 空き家の壁と傑の身体に挟まれて逃げられない。元々逃げるつもりなどない。壁に身を押し付けるようにされながら、熱い楔がどんどん奥へと埋められていくのが堪らなく気持ちいい。身体が全部溶けてなくなってしまいそうなくらい。
 喉が仰け反って、ひ、と甘く掠れた声が喉奥から漏れた。
「わかんな、い、……ッあ゛……ッ♡」
「やっぱりさっきの呪霊の、所為?」
 そうかも知れない。あの粘液に催淫剤でも混ざっていたのか、身体が疼いて疼いてどうにもならない。傑に犯されたい、中出しされたいと、淫らなことだけが頭の中を埋め尽くしている。
「妬けるね」
 微かに苛立ったように言いながら、傑が少し乱暴に腰を前後させる。ぬ゛♡ぬぷ♡と卑猥な音をさせて、屹立が穴の中の敏感な粘膜を擦る。既に祓った後の呪霊に嫉妬するなよと思うどころか、傑の暗く淀んだような声にぞわぞわする。
 嫉妬されて、嬉しくなっている。傑のものだと、独占欲を剥き出しにされるのが嬉しい。
 もっと、傑に独占されたい。傑だけのものになってしまいたい。
「すぐ、う……ッ♡」
「マーキングし直さないと」
 ぐちゅ♡と泡立った音をさせて、性器を一層深い場所へと捻じ込まれた。一瞬息が詰まって、目の奥が霞む。無理矢理こじ開けられていく場所が、きゅう♡と傑の亀頭に吸い付く。死にそうなくらい気持ちよくて、焼け爛れた塊でも腹の奥にあるみたいに、熱くてどろどろして、一緒に溶かされてしまいそうだ。
「ッあ゛……ッ♡あっ♡すぐる♡っそ、なおく、だめ♡」
 どぷ♡と先走り汁が零れて空き家の壁を濡らした。中を攪拌するように傑の性器が擦りながら、ずるずると出て行く。張り出したカリが内壁に引っ掛かり、ずり♡ずり♡と擦り上げる。襞がきゅん♡と悦んだ。埋めるものがなくなった空洞が寂しげにひくつくが、すぐにまた粘膜を擦りながら入って来る性器に、そこが喜んで絡み付く。まるで、傑専用のメスだ。
「はぁ゛♡う、あ゛ッ♡傑の、ちんこ、気持ちいい、」
「……っはは。素直」
 どちゅ♡と奥に亀頭がぶつかるのに合わせるように、ぷしゃ♡と先走り汁が飛んだ。ぐいぐいと捻じ込むようにして押し付けられ、イきそうになる。それを見透かすように傑の手に勃起の根元を縛られて、熱の解放を阻止される。腰の奥で熱が溜まってぐるぐると渦巻く。耐え難い程にぐるぐると。
「ッや゛♡い、イきたい、すぐる」
「だめ」
 意地悪い声が耳朶を擽る。一番奥へと挿れられたまま、うなじにがりっと歯を立てられた。鋭い痛みが走るのに合わせて、悦ぶように身体が跳ねる。
「っあ♡や♡痛っ、あ゛っ♡噛む、なぁ゛……っ!」
「やっぱり酷くされるのが好きだろ」
「ちが、すきじゃな、ッうあ゛っ♡あ゛ッ♡」
「嘘つき」
 耳朶に傑の息が掛かり、甘く痺れるような感覚にぶるりと痙攣した。唇が柔らかい耳朶に触れたかと思うとそこにも歯を立てられる。痛いのに、耳朶を噛まれると同時に手を離された性器から、どろりと粘り気のある精液が溢れ出た。ぼたぼたとアスファルトの表面に落ちて、灰色の地面に白い模様を描いていく。
「はひ♡あ゛っ♡や……ッ、何で、」
 ビク♡ビク♡と腰を震わせながら、噛まれたからイッたみたいで混乱した。ちがう、そうじゃない、堰き止められて我慢を強いられていた反動だ。痛いのが好きだからじゃない。違うのに、
「マゾなんだね、悟」
「ちが、ッあ゛……ッ!」
 否定した傍から傑の言葉で事実を書き換えられていく。刷り込ませるような傑の言葉を違うと否定しようとするのに、ぐぷりと音をさせて奥を揺すぶられると、残滓のような少量の白濁が性器の先から流れ出た。
「っやだ♡も、おく、だめ♡すぐる、」
 片足の膝裏へ手を差し込まれ、片足だけを高く上げさせられてしまう。不安定な体勢のまま壁に上半身を預ければ、ずるんっ♡と、これ以上奥へは入らないと思っていた場所に傑のカリ首までが入り込んだ。
「っひ!?  あ゛……ッ!?」
 息が詰まり、痛いのか苦しいのか気持ちいいのかも分からないのに、その瞬間性器からとろとろと白濁が力なく流れ落ちた。イッてしまったらしいということに、数秒遅れて気付く。
 ずにゅ、と張り出した先端が狭い場所から出て行ったかと思いきや、また奥の秘められた場所にぶちゅっと音をさせて入り込む。意識が飛びそうな程の快感に、休む間もなくまた勃起させられた前がひくひく震えながらこぽりと蜜を吐き出した。
「す、すぐりゅ♡待っ、今、だめ、」
「さとる、好き」
「ッあ、あ……っ♡」
 好き、と耳元で囁かれながら亀頭をごりゅごりゅと深い場所に押し付けられ、びくびくびく♡と身が仰け反った。ぷしゃ、と透明な液体が飛び散って、廃屋の壁やアスファルトの地面を濡らす。後孔がきゅうと疼いて、中を一部の隙もなく埋め尽くした傑の性器を締め付ける。
「好きだ。ねえ、私のものになって、悟」
「何言っ、ッは♡あひ♡あ゛ッ♡んっあ、あ゛っ♡」
 ぱちゅ♡ぱちゅ♡と濡れた音をさせて、太くて硬い性器に奥を穿たれる度、口から甘い声が出る。ぴゅ♡びゅ♡と性器の先端から潮が飛ぶ。
 思考もままならない脳味噌が、傑の言葉の所為で更に混乱した。
 好き、だなんて、この場の異様な空気に当てられて口にしているだけだろうと冷静に考えれば分かることだ。だが冷静さを欠いた今の脳味噌は、おめでたい方向にしか解釈出来ない。だから、好きだと聞いて、悦ぶように粘膜が収縮する。俺も、と口に出してしまいそうになる。
「……っ悟のして欲しいこと、何でもしてあげるから。ねえ、」
「あ゛……ッ♡すぐる♡っち、ちくび、も、」
 口走れば、傑は本当に悟の言う通りにじんじん疼く乳首に手を伸ばした。両方の乳首を背後から伸びて来た傑の手に摘ままれて、押し潰される。身体中に電気を流し込まれたみたいに、びりびりと痺れる。
「っん♡あ゛♡はあ……っ♡」
 母乳の出を促すみたいに、傑が乳首を指で摘んでくにくにと弄る。腰を思い切り奥に押し付けられて、ずちゅ♡と先端が深く狭い場所を抉った。熱っぽい吐息が耳朶に掛かる。
「悟、好きだ」
「あ、あ゛……っ♡も、イ、く……♡♡♡♡」
 びゅる♡びゅ♡びゅっびゅ♡どぴゅ♡
 ビクッ♡ビクッ♡ビクンビクン♡
 乳首と性器の先から同時に母乳と精液とが迸った。ぼと、と何か大きな塊のような物が身体から落ちたような気がする。だが何か確かめる余裕もない。
「う、あ……♡すぐる♡すぐりゅ、ッあ、あ……ッ♡」
 何もかもどうでもよくなるような凄まじい快感が、前後不覚に陥らせてわけがわからない。
 ぎゅう、と後ろを締め付けてしまい、傑が微かに呻くのが聞こえた。熱くてどろりとしたものが、奥へと勢いよく注ぎ込まれていくのが、傑の所有物という烙印を押されたみたいで、嬉しい。
「さとる、」
 傑の甘い声が耳朶を掠める。傑はどんな顔をしているんだろうと思った。耐え切れずに、涙と涎で汚れた酷い顔のまま後ろを振り返った。目が合う。傑の目が、恍惚に蕩けた悟の顔をじっと見ていた。普段の温厚さなど微塵も感じられない獰猛な獣のような目が。心臓が跳ねる。
 途端、傑にキスされた。繋がったまま、唇の間を割って傑の舌が口内へと潜り込む。舌先を絡め取られて、舌の粘膜同士を擦り合わされる。顎を手に掴まれて、歯の裏側までなぞられる。ぞくぞくぞくっ♡と身体が震えた。心の奥までどろどろと熱い塊で満たされていく。
 ずっとこうしていたい、と思った。ずっとこのまま、誰も来ない場所で傑と気持ちいいことだけしていたい。だが傑の唇が離れて、糸を引く透明な唾液が、互いの唇の間を繋いだ。
「んっ、ふあ……♡」
「……っねえ、悟、……私と、付き合ってよ」
 傑の頬が赤い。つられるように自分の顔も赤く染まるのが分かった。こんな言葉だけで赤面するなんてガキかよと思う。それ以上の過激なことまで既に散々しているのに。
 恥ずかしい。傑が目を逸らしてくれればいいのにと思いながら、結局悟の方が耐え切れなくなって視線を外した。
「……」
 こくりと小さく頷く。好きというたった二文字の言葉は、口に出せなかった。