3

「悟はさあ、お金が必要なの?」
「っえ、」
 思ってもみなかった問いに、思わず素の声が出た。
 金が必要なのか。金に困っているのか。そんなこと、今まで誰にも言われたことがない。周囲は悟が家賃が馬鹿みたいに高い部屋に一人で住み、馬鹿高いブランド物も躊躇なく買い、支払いを全てカードで済ませているのを目の当たりにしているから。それと、実家の近辺では実家は有名だった。『五条家』と聞けば誰もがああ、とある種の『理解』を示す。五条の名と貧乏という言葉は、この世で一番縁遠い。
 それなのに、傑は悟の現状を言い当てた。傑相手じゃなかったら一笑に付すような問い掛けだ。そんな訳ねえだろ、で終わり。実家に利用を停止されてしまっている所為で今は使えないが、ブラックカードだってまだ手元にある。それを見せれば、誰も悟に金がないなどとは言わない。でも傑がそう勘繰るということは、何か理由があるのだろう。金がないと思う根拠が。
「何でそう思うんだよ」
「ねえ、コーヒー飲んでいいんだよ。今日は何も入ってないから」
「今日は」
「うん、今日は」
 傑は悪びれもせずににこりと笑った。嫌でも、最初にここに来た時のことを思い出した。抹殺したい記憶だ。記憶を蘇らせると身体が熱くなりそうだったので急いで封じた。思い出すのは危険過ぎる。テーブルの上に置かれたコーヒーには意地でも手をつけないでおこうと心に誓った。  ――傑は信用出来ない。いや、信用してはいけない。この前も映画を見るだけと言った癖に、玩具のモニターをさせられたし……。また蓋をした筈の記憶が何処かしらの隙間から漏れ出て来た。落ち着かなくなって、悟はもぞもぞと身を動かした。
 傑の会社の事務所の応接スペースで、また傑と向き合ってソファに座っている。
 傑は今日も、髪をハーフアップにしていた。どうやら大学では後ろで団子、職場ではハーフアップ、と分けているらしい。普段の傑も落ち着いていて、大人っぽい、などと女子達が噂しているのを耳にすることがある。自分が子供みたいなことばかりしている自覚が多少はあったので、大学にいる時の傑が大人っぽいというのは理解出来ないこともない。でも今は、髪を半分下ろしていると一層大人びて見えて、大人びている癖に耳に大きなピアス穴が空いているなんていう悪そうな一面もあって、切れ長の目も、薄い唇も、その唇の間から発せられる低い声も、酷く色気があって……
「悟、どうしたの?」
 ハッと我に返った。傑の唇ばかり見つめていたことに気付いて、カッと頬に赤みが差した。
「なっ、何でもねえよ!」
 唇ばかり見て、キスしたいなんて考えていたことが、傑にバレただろうか。だが傑は挙動不審な悟の態度をそれ以上詮索せずに、短く「そう」とだけ言った。
「さっきの話だけど、私はこれでも悟の親友だから、悟を心配してるんだよ。急に大金が必要になったのかなって」
 親友、という言葉に不意にずきりと胸が痛んで、そんな自分の心境に戸惑う。親友だから、とはっきり口に出されることで、お前とは恋人じゃないと明確に告げられた気になるから。
 ――当たり前だ。傑は親友だ。親友であり、バイト先の雇い主。だから恋人じゃない。……なのに、傑とキスしたいだとか、傑に触れて欲しいだとか思ってしまうのは、おかしい。この前なんか、後ろにバイブを咥え込まされながら、傑のモノを挿れられている想像をした。相手は親友なのに。相手は悟のことを親友だと思っているのに。だから、この気持ちはおかしい。封印しなければならない。
「……大金なんか、必要じゃねえし」
「でも、それだと辻褄が合わないんだ。お金が要らないなら、このバイトもやめればいいと思うけど。続ける理由がない」
 傑からふいと目を逸らしながらぼそっと答えれば、畳み掛けるように傑の追撃が続いた。的を射た発言に、反論出来ない。実家から金銭感覚がヤバい奴認定されて仕送りがなくなったなんて、そんな間抜けな理由は言えない。
「う、」
「お金の問題じゃないなら、もしかして、玩具使われるのにハマッちゃったとか?」
「なっ……!」
 思わずがばっと顔を上げて傑を見れば、傑は足を組み、その上に頬杖をついて口端を歪めて笑っている。見透かすようなその笑みが気に食わないのに、顔が益々赤く染まる。肯定しているようなものだ。
 見逃してくれればいいのに傑の追求はしつこい。そして的を射ている。それが正解だとバレるのが嫌で、顔を伏せた。玩具を使われるのに――いや、傑に気持ちいいことをされるのに、ハマったから。だから今日も、新しい玩具の試作品のモニターをして欲しいと言われてここに来た。でもそれを今ここで認めれば、悟の方だけが一方的に傑と親友を続けるのが難しくなる。今も既に難しいのに。
 天秤に掛けてどちらかを選ぶしかない。玩具にハマったと認めるか、金がないと認めるか。どっちも嫌だが、ここに嫌々足を運んでいる体を保てて、傑との親友関係も維持出来る理由は、後者だ。
「……その、実家から、社会勉強しろとか言われて、仕送り止められて、……金が必要だから、来てるだけ、だし……」
 こんな情けない話を傑に聞かせるなんて嫌過ぎる。でも傑に玩具使われるのが気持ちいいからだと話すよりは遙かにマシだ。金が要るから仕方なくバイトしてるだけだという体を保ちつつ、また傑に気持ちいいことをして貰えるから。
「そう。それを聞いて安心したよ。変な事件にでも巻き込まれてるのかなと思ってたから」
「んな、わけねえし……っ、」
「じゃあ、私達は利害が一致してるから、バイト続けてもいいよね? 私はモニターしてくれる人材が必要だし、悟はお金が必要だし」
 すっと傑が立ち上がるのが、視界の端に映る。身を固くして身構えてしまうが、もはや逃げることは出来ない。逃げるという選択肢がない。この先を期待しているから。
 傑がローテーブルを回り込んで来て、悟の座っている長ソファの横に設置された木製のキャビネットに手を伸ばした。この前来た時にはなかったものだ。抽斗を開けると、中に細い金属製の棒が何本も並んで入っている。どれも細いが、太さが少しずつ違う。傑はそれをじっと見下ろして少し考える素振りを見せてから、真ん中辺りの、太さも丁度中間くらいの棒を取り出した。
「さとるなら、このくらいからいけるかな」
 一体どういう基準で選んでいるのか。それに、その怪しげな棒を一体何に使うのか、悟にはさっぱり分からない。分からないが、禄でもない物だということだけは分かるので、頬の肉が引き攣った。
「……そ、れ、何だよ」
「尿道バイブ」
「にょ……!?」
 さらっと名前を暴露した傑に、二の句が継げないまま固まる。
「うん。悟のおしっこの穴の中、これで掻き回してあげる。使用感をモニターしてよ」
 まるで世間話をするように気楽な調子で言いながら、傑は細いバイブの端を摘まんで軽く引っ張る。すると収納されていたらしいもう一回り小さな棒が出てきて、カチンと音をさせて固定された。新たに出て来た方の表面は、細かな突起にびっしりと覆われている。恐怖に目を見開いて、ひぐ、と情けないような声が口から漏れた。
「待、っそんなの、入る訳ねえだろ……!?」
「大丈夫だよ。私を誰だと思ってるの」
「ただのド変態前髪!」
「失礼だな。これでも専門職だよ」
 なんだよ専門職って。変な玩具いっぱい開発して俺を辱めてるだけだろ。
 傑は尿道バイブなる金属の細い棒と、小さな透明の硝子瓶を手に取ると抽斗を閉じた。瓶の中には小さな琥珀色の粒が入っており、傑の手の中でざらざらと音を立てた。顔が、更に引き攣る。
「ちょ、っと待てよ、また変な薬使うのかよ……!?」
 知らず、ソファの上で全力で傑から遠ざかろうと身体がソファの端に移動する。だがソファの空いたスペースを敵に大人しく明け渡す羽目になり、自分で自分を窮地に追い込んだだけだった。ソファに乗り上げた傑に片膝だけで身体を押さえ込まれ、ジーパン越しに太股の辺りにすすっと手を這わされた。ぞわりと肌が粟立つ。不快だからではなく、甘やかな期待の所為で。服越しの傑の手の感触がもどかしくて、直接肌に触れて欲しかった。
「っん……♡す、すぐる、」
「使わないで挿れる? 使った方が、気持ちいいと思うけど」
 傑の手が容易くベルトを外す。かちゃかちゃという金属音に緊張と高揚感とを否が応でも煽られる。ジッパーを下げられると、大人しく従順に足を開いてしまう。
「い、いれるって、何処に、」
 声に恐怖と期待とがない交ぜになる。傑はこちらが期待しているのを見透かすように緩く微笑みながら、下着の中に手を入れた。萎えたものを傑に握られただけで、身体の芯が熱くなる。
「ん? だから尿道。ここ」
 悟が両足を左右に開いた所為で取り出しやすくなった性器を引っ張り出して、傑がここ、と性器の先に指を這わせた。指先が触れただけで、ぞくぞくぞくっと背筋に痺れが走る。同時に傑の物騒な発言に背筋が凍る心地がした。
「っはあ!? だから、無理に決まって、ッん♡や゛……ッ♡」
 すり♡と傑の指が萎えた竿をなぞる。声が震えて、身体もびくんと震えた。こんな、少し触れられただけで変な声を出しているなんて、猛烈に恥ずかしい。だが、傑の指が焦らすようにすりすりと往復しているだけでぴくん♡ぴくん♡と肩が小さく跳ねて、次第に性器が硬く張り詰めていく。
「す、すぐ、るう……♡もっと、」
 無意識に腰を浮かせて傑の手に性器を擦り付けるように動かしながら、ねだる言葉を口にする。そこにナニを挿れるつもりかも、それに対する恐怖も一瞬忘れ去ってしまうくらい、目先にぶら下がった餌のことしか考えられない。傑にされることは何でも気持ちいいと、身体が覚えてしまっている。傑に気持ちいいことをされたいと、本能が求めてしまっている。なけなしの理性でもプライドでも制御出来ないくらいに、欲望が膨れ上がっている。
「も、もっと……、っちんぽ、しこしこして♡きもちよくして♡お願い、」
「随分素直だね、悟。可愛い」
 可愛いと囁かれると、可愛くねえよ馬鹿と突っぱねるよりも先に嬉しくなっている。末期だと思った。
 傑の手に竿を握り込まれ、上下に扱かれる。絶妙な力加減だ。弱くもなく強くもなく、丁度いい。性器がすぐに勃起して、ひくん♡ひくん♡と震えながら先走り汁を零し始めた。
「っん♡や♡あッ♡あ゛っ……♡♡」
「身体の方も従順で可愛い」
「う、るさい……ッ黙、ッはあ♡あッ♡ん、あっ♡♡♡」
 つい可愛くないことを口走ってしまいながらも、弱々しく傑の腕にしがみつく。腕を自分から引き離すのではなく、掴んだまま、切なげに吐息を零す。行動と発言が、噛み合っていない。
「腰浮かせて。……そう。いい子」
 怪しい玩具と怪しい薬を一旦傑が脇に置いて、前だけを寛げたジーパンと下着を脱がせる。抵抗もせず尻を浮かせて脱がされてしまう。脱がされた後に頭を撫でられて、心地よさに思わず目を閉じた。
「ひ♡あ゛っ♡すぐる♡すぐる……♡」
 竿を傑の手が往復するのが、堪らなく切なくて気持ちいい。時折裏筋やカリの括れを撫でられるのも。溢れ出る先走り汁が竿へとたらたらと伝い落ちて、それを絡めて扱かれるとぐしゅぐしゅと卑猥な水音が響いた。頭の中がぐちゃぐちゃになる。下腹がじんじん痺れて、ソファの上でびくびくと身が仰け反った。透明な蜜が小さな水溜まりを形成している中心の小さな窪みを指先でぐりぐりと押されて、びくん♡びくん♡と熱を持つ身体が何度も跳ねた。
「あ゛ッ……♡や♡待って、あ゛ッ♡そこ、ほじんないでぇ゛♡♡♡」
 思わず目を見開いて傑の腕を握る手に力を込める。傑はまた、意地の悪い笑みを浮かべながら敏感な穴を暴くように亀頭を左右にぐぱりと割り開いた。濡れたピンク色の亀頭の中心で、ひくひく震えながら時折先走り汁をこぷりと零している慎ましい穴を、傑の濡れた指がくちゅりと犯す。どっと溢れた先走り汁が傑の指を汚し、竿を伝ってソファにも垂れた。
「や゛♡すぐる、あ゛ッ♡待って♡♡そこやら゛♡♡だめ、」
「んー? でも、今からここ拡張するから、少し拡げておかないと」
「ッあ、……」
 さらりと言い放たれた恐ろしい言葉に、身が凍る思いがした。そうだ、そういえば、そういう悪趣味な玩具を使うと先程言われたばかりだ。
「ま、待って、すぐる……、それ、無理、」
 思わず涙目になりながら、ふるふると首を横に振る。こんな小さな穴に、あんな不気味な棒が入る訳がないと思った。想像しただけで恐怖で萎えてしまいそうだ。
「……やめるの? やめたらバイト代無しだけど、いいの?」
「う……」
 傑が手を離した尿道口が切なげに蜜を吐き出した。嬲られて色が濃くなっている。言葉に詰まったまま、悟は傑から視線を外した。
 また、このパターンだ。こちらに金がないのが向こうにバレた所為で、金を払わないと言われると拒否出来ないのだと、読まれている。でも、気持ちいいことだったらいいけど、痛いことは嫌だ。そしてそんな場所にそんな物を突っ込むなんて、どう考えても痛いに決まっている。
「で、でも……い、痛いの、やだ……」
「それは大丈夫だと思うけど」
「なに、――っひ♡ん゛ッ♡だめえ゛……ッ♡♡♡」
 何を根拠に、と反論しようとしたのに、言葉を封じるようにぬるぬると指の腹が亀頭を往復する。だから上擦った喘ぎ声しか出せなくなる。擦られている場所が火傷を負ったみたいに熱くて、気持ちよくて、どろどろに蕩けてしまいそうで、悟は気付いた時にはびゅくびゅくと精液を撒き散らしていた。
「あ♡あ゛ッ♡や、あ゛……っ♡♡♡」
「ふふ。可愛い。悟は先っぽ虐められるの、大好きだね?」
「ち、がうう……♡」
 ぐりゅぐりゅと、精液を全て吐き出させるように傑の手が亀頭を捏ねる。敏感になった身体ががくがく震えて、ぴゅ♡ぴゅく♡と精液の残滓が飛んだ。傑の手が漸く離れるも、ぐたりとソファの肘掛け部分に背を凭せ掛けたまま荒い息を吐き出していると、不意にずくりと性器が――というか、その中、狭い尿管の中が、疼いた。ビクッ♡と腰が跳ね上がり、未知の感覚と混乱が悟を襲う。ぶわりと額に汗が浮いた。
「あ、ッ待って♡何これ、ふあ、あ゛っ……!?」
 ずくり、ずくりと疼く頻度がものの数秒のうちに高くなり、酷くじくじくして、熱い。というか、
「す、ぐる……! な、なんか、痒い、やだ……♡」
「うん? どうしたの、さとる」
 傑はわざとらしく片眉を上げ、わざとらしい声で訊く。絶対、百パーセントオマエがなんかしたんだろ、と殺意に近い感情が沸くが、それよりも、時間が経てば経つ程に尿道口のその先の細い管の中が疼いて、熱くて、痒い。それはもう死にそうなくらいに。傑が何らかの方法でそうしたのだから、解決出来るのも傑しかいない。だから、甚だ不本意でも傑を頼るしかない。
 震える手で性器を持つ。精液と先走り汁とでどろどろに汚れて、出したばかりなのに、そこはまた硬さを取り戻し始めていた。ソファに半身を預けてぐたりとしている所為で、自分よりも高い位置にある傑の顔を上目遣いに見上げる。目が合うと、心臓がどくりと音を立てた。
「……ち、ちんぽのなか、かゆい……。掻いて、すぐるう……♡」
 かあ、と頬に血が集まった。傑の策略でこんな恥ずかしいことを言わされて、いや正確には自分から言っているのだが、羞恥に耐えきれなくなってまた目を伏せた。そうしている間にも痒みがどんどん酷くなって、気が触れそうだ。
「ふうん。お薬がちゃんと効いたみたいでよかった」
「は、へ……?」
 薬って、さっきのあの瓶の中身だろうか、とぼんやり考える。飲まされた覚えはない。なのに何で、
「っひ……♡♡♡」
 傑の指先がつつと竿をなぞって、その弱い刺激だけでびくびくびく♡と背が仰け反った。焦らすような触れ方がもどかしくて、焦れったくて、眉根が寄る。はく、と息を吐き出しながら、酷い痒みに頭の中はオーバーヒートしそうだ。
 痒い。とにかく、掻いて欲しい。そんな狭い場所をどうやって掻くのかは、全く分からない。
「っすぐる、」
「さっき、この中に直接流し入れちゃった。悟は気付かなかったみたいだけどね」
 ソファの端っこに放置されたままになっている薬の小瓶を、傑が手に持って軽く揺すった。ざりざり、と瓶の中で粒同士が触れ合って立てる音が、まるで終わりを告げる鐘の音のようだった。或いは、地獄の始まりを告げる合図。
 何でそんなこと、と困惑する。そして、困惑している場合ではないくらいに、痒くてずくずく疼いて、熱い。
「……っ傑、ねえ、お願い、」
「ここ、痒い?」
「っひッ!? あ゛んっ♡」
 ここ、と傑の指が先端の敏感な場所に軽く触れる。それだけで、身体に電気を流し込まれたみたいに、びりびりと頭の天辺から足の爪先まで、電撃のような痺れに貫かれた。触れられると痒みが一瞬だけ和らぐが、それもほんの一瞬のことだ。指では届かないその奥の細い器官の中が、とにかく痒い。むしろ中途半端に亀頭だけを撫でられると、奥が痒いということに余計に意識を持って行かれる。
「か、かゆいい゛……ッ♡♡なか、掻いて♡すぐる、お願い゛♡♡♡」
 ずくずくと脈打つ中が、痒い。強烈に。目眩がするくらい。腰を前に突き出して掻いてとねだるが、傑は悟をこんな状況に追い込んだ張本人の癖してしれっと「可哀想に」などと嘯きながら、相変わらず悟の赤くなった先端をくるくると弄んでいる。
「あ゛ッ♡も、やら゛ッ♡やだあ゛ッ♡なか、掻いてよぉ……ッ!」
 完勃ちした性器がふるりと震えながらどっと蜜を吐き出して、ビク♡ビク♡と身を震わせる以外に為す術がなく、抵抗も出来ない。あまりの痒みに耐え切れず、両目からぼろぼろと涙が零れた。中が痒くて、亀頭はじんじんして気持ちよくて、傑の指に開かせられた尿道口がくぱくぱと収縮しながら空気に触れているだけでも辛い。その開閉を繰り返している卑猥な穴にぐっと指をめり込まされて、目の前が真っ白に染まった。
「あっ♡♡あ゛っ……♡♡♡」
 どろりと粘り気のある白濁液が、指の隙間を縫って零れ出た。痒いのと気持ちいいのとが混在して、もう訳が分からない。ひぐ、としゃくり上げている間も、傑の指が容赦なくぐりぐりと鈴口を抉る。精液を塗り込めるようにして。身体が自分の物ではないみたいに勝手にびくびくと跳ねた。
「あ゛ッ♡も、待ってやだ♡さきっぽらめ゛♡♡奥、おくがいい♡」
「奥がいい、ってやらしいなあ。ちんぽ突っ込んで欲しいみたいに聞こえるよ」
 ぬるぬると指を這わせながら傑が放った言葉に、本当に後ろに傑のものを突っ込まれて掻き回されている妄想が頭を巡る。挿れて欲しいかも、と自然に考えてしまった自分が恐ろしくて、悟は必死にぷるぷると首を横に振った。
「や……♡ちがう、ちんぽのおく、かゆい♡さっきのバイブ挿れて♡♡掻いて♡♡おねがい……♡♡♡」
 全部、傑に仕組まれている。こう言うように誘導されて、傑の思い描いていた計画の通りになるよう、レールの上を走らされている。お行儀よく傑の言いなりになっている。そんなの、気に食わない筈だ。でももはやそんなことはどうでもいい。この凄まじい痒みから解放されたかった。
「うん、いいよ」
 傑が悪趣味な笑顔で悟の涙を拭った。くちゅりと鈴口を撫でてから指を離せば、指先と亀頭との間でねとりと白濁が糸を引いた。ソファの端に薬の瓶と一緒に放置されていた細長い棒を手に、涙で睫毛まで濡れた悟の目を覗き込む。
「痛かったら言ってね」
「う、ん……♡も、はやく、っひう♡」
 こくこくと頷けば、棒の先端部分が濡れた亀頭の表面を這って、冷たさに思わず身が竦んだ。傑の指によって随分と拡げられてしまった本来は小さくて狭い筈の穴の入り口に宛がわれる冷たい感触に、奥が痒くて仕方がない癖にやっぱり直前になると怯んでしまう。
「あ、ッすぐる、やっぱり待って、――ッああ゛ッ……♡♡♡」
 くりくりと慣らすように数度擦った後、ず♡と先端部分が鈴口に埋め込まれる。思わぬ場所への異物の侵入を身体が無意識に拒み、ぎくりと強張った。汗が、額からも脇からもぶわりと滲み出た。
「すぐる、……や♡それ、痛い♡やだ、」
「痛いの? ほんとに?」
 思わず反射的に口走った言葉が嘘だと見透かすように、傑が更に一センチ程バイブの先端を尿道口に埋めた。ざり、と小さな突起が入り口の熟れた粘膜を擦ると、ビクッ♡と腰が跳ねた。まるで、そこで快感を拾っているみたいに。
「ッあ、あ゛……っ♡」
 細い異物に今まで誰にも暴かれたことなどない場所を塞がれているのは、未知の感覚だった。だが、覚悟していたような痛みはない。むしろ浅い場所で前後に動かされると、玩具の冷たい感触が痒くて痒くて仕方なかった場所をさりさりと擦るのが想像以上に心地よかった。加えて、バイブの表面を覆ったいくつもの突起に粘膜を押し潰される感覚に、じんじんと舌先まで痺れる。うっとりと蕩けたような顔をしながら、悟はその未知の快感をいつの間にか受け入れていた。
「はあ……ッ♡♡♡すぐう♡ちんぽのなか、あつい♡」
「痛くない?」
「だい、じょうぶ……♡でも、おく、まだ痒い……♡」
「そう。じゃあ、もう少し入れても大丈夫だね」
 傑は両目を細めて愉しそうに微笑みながら、ず♡ぬぷ♡と少しずつゆっくりとバイブを奥へ埋めていく。細いバイブに、細い管の中を暴かれ、拡張され、犯される。自分のそんな場所に棒が刺さっている異様な光景にくらりとした。あまりにも現実感がなく、倒錯的だ。恐いのに、目が離せない。傑に使われた変な薬の所為で痒くて死にそうだった指では到底届かない場所を玩具に擦られ掻かれるのは、身体中どろどろに溶けてしまいそうなくらい気持ちよかった。イッてしまいそうなくらいに。
「あ゛っ♡ふあ、あ゛ッ♡はいって、うあ、あ゛ッ♡♡♡ちんぽのなか、犯されてりゅ♡ひ♡う……ッ♡♡」
「うん。悟の尿道、処女だったのにもうやらしい穴になっちゃったね。可愛い」
 卑猥な言葉で煽られ、ビク♡ビク♡と腰が揺れる。イッてる、と思う。頭の中が真っ白だ。だが、バイブに細い場所をみちりと塞がれている所為で精液は一滴も出せない。熱の解放を許されないままなのに、ずっとイッているような快感だけが続く。快感と、苦しいのとが重なる瞬間が時々あって、その時に訳が分からなくなる。狭い尿道を徐々にバイブに圧迫されて、悟は眉根を寄せた。思わず傑の腕にしがみついてしまう。
「はあ、あ……っ♡く、苦しい、すぐる、」
「大丈夫?」
「そ、それ、抜いて♡イきたい、」
「それは駄目」
 有無を言わさぬ口調であっさりと却下されてしまった。バイブの突起に覆われた部分が半分以上埋まってしまうくらいの場所まで押し進められて、恐くて汗やら涙やらが出る。なのに性器は勃起したままで、バイブと鈴口の間に僅かに出来た隙間からこぷりと先走り汁を零した。
「や゛……っ♡す、すぐるやだ♡抜いて♡」
「まだ駄目だよ、さとる。この中犯されるのがどんな感じが、ちゃんと詳細にモニターし終わってからね」
 そうだった、と不意に思い出す。これはそういうバイトだ。使用感をちゃんと説明しなければ。じゃないと、この邪魔な棒を取り払って射精することが叶わない。
 頭の中で口に出す言葉を選ぶより先に、早く熱を解放したいあまり震える唇を開く。だが開いた瞬間、まるでそのタイミングを見計らっていたかのように傑が玩具の端についた小さなつまみをぱちんと弾いた。このアルバイトを始めてからというもの、嫌という程聞かされた聞き覚えのあり過ぎる音だ。悪夢が始まる合図の、絶望の音。
 ビイイイイ、と細かく震え始めた細いバイブが、狭い管の中で暴れる。それは極小さな振動かも知れないが、狭く未開発な尿道の中を内側から破壊されるような恐怖と、中から蕩けるような凄まじい快感とを同時に味わうには充分過ぎる程の威力だった。ビクンッ♡♡♡と身体がソファの上で跳ね上がり、一瞬目の前が白く染まる。
「はひ♡あ、あ゛ッっ!? や♡だめ、♡ひう゛う゛うう♡♡♡」
「暴れたら危ないよ」
 思わずなりふり構わず逃げようとして、傑にそう制された。危ないと言われてしまえば、好きに動くのは恐い。だって動いた所為で棒がヤバい場所に入ったら、と考えただけで、心臓が爆発しそうだ。
「すぐう、それだめ゛♡無理、無理ぃ゛ッ♡♡♡」
「無理じゃなくてさ、具体的にモニターして」
 傑に顎を捕まれて、至近距離で目が合った。切れ長の目が、涙で濡れた悟の目をじっと覗き込む。いつもは優しい癖に、こういう時は無理と泣いても解放する気がないらしい。ドSだ。目を逸らしたくても、逃がすつもりのない傑から逃げるのは無理だ。獣のようなぎらついた目が、悟を真っ直ぐに射ている。顔が赤く染まった。
「う、……はあ♡ち、ちんぽの、なか、あつくて、……バ、バイブが、つめたいから、きもちくて、」
 舌足らずで言葉足らずで、知能指数の低い説明しか出来ない。語彙とか知性とかを全て奪われたみたいな。そんな下手糞なモニターじゃ駄目だよと言われるかと思ったが、傑はうんうんと頷きながら、刺さったままの尿道バイブをぐるりと中で円を描くように動かした。
「っあ♡あ゛ッ♡♡♡しゅぐう♡あッ! う、動かしちゃ、らめ゛え゛ッ♡」
 敏感な粘膜に突起がごりごりと擦れて、甘い絶頂感がひっきりなしに悟を襲った。イけない所為で、先走り汁が隙間からごぷっと溢れて竿を伝う。びくびくびく♡と身を震わせながら、穴が拡がって元に戻らなくなるんじゃないかと恐い。恐いのに、気持ちいい。
「そ、それえ゛、きもちいい♡♡♡♡や、あ゛ッ♡♡さわっちゃらめぇ♡♡」
 中をぐりぐりと掻き回されながらぷくりと腫れて赤くなった亀頭にもう一方の手の指先を這わされて、馬鹿になったみたいにビクンッ♡ビクンッ♡と痙攣が止まらない。ぬるぬると指を這わされながら竿まで握り込まれて、そうすると中の振動がダイレクトに性器全体にまで伝播して、暴力的な快感に目眩がする。
「あーッ♡あ゛ーっ♡♡♡やら゛♡離、ッひい゛ん゛ッ♡♡♡」
 イく、というか、イッてる、と思うのに、身悶えるような甘い射精の瞬間が訪れることは永遠にない。イッてる感覚だけが、延々と続く。
「はひ♡あ゛ッ♡♡♡しゅぐゆ、ぐりぐり、らめ゛♡」
 だめだ、ちゃんとモニターしなければと焦るが、傑が玩具を中で撹拌するようにぐるぐる混ぜる所為で馬鹿みたいなことしか言えない。傑がバイブの端を摘まんだままそっと引き抜き始めて、ひぐう♡と喉の奥から潰れたような奇妙な音が漏れた。その汚い音が自分の声だと気付くまで、少しの間が必要だった。
「ひ♡♡あ、あ゛っ♡♡せいえき、出そう♡♡♡なか、上ってくる♡あ゛っんあ、あっ♡」
 粘膜をごりごり擦られながらずず、ず、と少しずつ焦らすように引き抜かれ、バイブの動きに合わせて精液が尿道の中を競り上がって来る感覚がある。精液の速度を傑にコントロールされている。――管理されている。初めての感覚に、ぶわっと額に汗が浮いた。
「しゅぐ、う♡も、はやく、」
 早く射精したいと、頭の中がそれだけで一杯だ。散々尿道バイブに邪魔されてお預けを食らった所為で、飢えた獣が餌を欲するようにイくことしか考えられない。だが傑は、もう少しで全て抜けるという場所まで抜けていた棒を、ゆるりと笑みを浮かべながらまた奥へと押し戻した。
「っあ゛ー……ッ♡だ、だめ……♡♡♡♡」
 ビクッ♡ビクッ♡ビクン♡ビクン♡♡♡
 精液が押し戻される未知の感覚に、腰の奥が鈍く重く痺れる。絶望感と酷い快感に襲われて、目の前が真っ黒で、真っ白。こんな酷いことをしている癖に、汗まみれの前髪を梳く傑の手だけは優しくて、ぞくぞくする。くすっと小さく笑いながら「可愛い」なんて言われて、嬉しくなっている場合ではないのにきゅんと胸の奥が疼く。
「も、イきたい゛いい♡♡すぐる、お願い♡あッ! ひあ、あ゛ッ!」
 ぶるぶる震える玩具を、ぐぷ♡ぬぷ♡と狭い尿道に出し入れを繰り返される。その度に、中で精液が泡立ちながら往復する。今まで経験したことのない状況が恐怖でしかないのに、精液と先走り汁が溜まった尿管の中をごりごりと削り取られるように犯されるのは信じられないくらいの快感だった。病み付きになってしまいそうなくらい気持ちいい。
「せ、精液、なかで、出たり戻ったりすりゅ♡♡♡やだ♡出したい♡うあ、あ゛ッ♡♡」
「もう少し頑張ろうか、さとる」
 頑張れない。でも、優しく諭すように言われるとうんと頷いてしまいそうになるが、そもそも一体何を頑張るのか。疑問符と、涙と、絶望と期待と不安と、あらゆる物が綯い交ぜになった顔を傑に向ける。勿論、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃで、きっと酷い顔だと思う。
 ぐ、とさっきまでよりも深い場所に尿道バイブを差し込まれて、がくんと身体が仰け反る。自分でも知らない場所を無理矢理こじ開けられて暴かれるのは、恐怖以外の何物でもない。その筈なのに、自分も知らない自分の気持ちいい場所を傑に剥き出しにされて可愛がられることに、期待が募る。期待なんてしたくないのに。
 だめ、と弱々しく口走ると同時、奥の壁のような場所に棒の先端がこつんと当たった感覚があった。そこが多分一番奥だ。一番奥までを、傑が開発した玩具に貫かれてしまった。
「っや゛……ッ! すぐ、ッん゛っ♡♡やう♡あ゛ッ♡♡♡」
「全部入ったね」
 壁、というか、固くしこったしこりのような場所を、棒の先端がぐりぐりと捏ねる。未知の感覚が恐いのに、そこを犯されて背筋に走るのは紛れもない快感だった。肌が粟立つ。いつの間にか両足の膝を曲げさせられて、M字開脚のような体勢を取らされている。恥ずかしい場所が全部傑に丸見えで、猛烈に羞恥を煽られる。後ろの穴をローションで濡れた傑の指がすりすりと撫でる。中に入ろうとしているみたいに。
「う、うしろ、だめ♡一緒に、やら゛♡あ゛ッ♡」
「だめじゃないよね、どう見ても」
 指をつぷりと差し込まれてしまってビクッ♡と身体が跳ね上がった。
「ら、らめ、らってぇ゛……ッ♡」
 蕩けた顔でいやいやと首を横に振って必死に抗うが、アナルはきゅんきゅんと収縮しながら傑の指を締め付けている。もっととねだるように蠢いて、細い指に必死で絡み付いてひくひく蠢く。抵抗しようという意思に反して勝手に反応する己の身体が恨めしかった。
「だめじゃないだろ。二本目もすぐ入るし」
「んあ゛♡あ、あ゛ッ♡すぐう♡♡♡あ゛ッ!」
 ぬぷ♡と挿入された二本目の指も、穴がすぐに受け入れて二本分の指の太さに馴染んでしまう。抜き差しされ、粘膜を擦られ、ぬぽぬぽといやらしい水音が部屋に響いた。恥ずかしい。なのに身体は悦ぶようにびくびくと跳ねて、棒が埋まったままの性器の先からたらりと透明な蜜を零している。
「柔らかい。玩具もすぐに入りそうだね」
「っへ、あ……? 何、」
 指が、思いの外あっさりと中から出て行く。それを名残惜しいと思ってしまう。腸壁が寂しげにひくついて、何も埋まっていないのに、指を探し求めるように収縮を繰り返した。
「す、ぐる……ッ」
 後ろが寂しいから、ちんぽ挿れて。なんて、言える訳がないので下唇を噛む。見透かすように、薄く笑みを浮かべた傑が「寂しい? ちょっと待っててね」と言って身を起こした。
「流石に前と同時にだと、あまり太いのは可哀想だよね」
 何やらぶつぶつ独り言を喋りながら、傑は抽斗の中を探って今やすっかり見覚えのある形の玩具を取り出した。後ろに――アナルに挿入する、バイブ。血の気が引く。前に挿れられたものよりは細いとはいえ、今それを挿れられるのは――性器に尿道バイブが刺さったこの状態で後ろにそれを挿れられるのは、無理だ。死んでしまう。
「あ、……すぐる、待って無理、」
「こら、逃げない」
 じりじりと後退する腰を簡単に傑に押さえ込まれて、退路を断たれる。元より逃げ場などない。ソファの端に既に追い詰められていたのだから。人の悪い笑みを浮かべたまま、傑がバイブにローションをどぷどぷと掛けている。尿道バイブを抜いて悟を苦痛と快感から解放する気は毛頭ないらしい。寂しそうにひくついているアナルにバイブの切っ先が宛がわれて、ぞわりと鳥肌が立った。
「や、……ッだめ♡ちんぽのやつ、取って、」
「だーめ」
「――っあ゛あ゛ッ!?」
 意地悪く囁かれながら、ぐぷ♡と後ろに玩具をねじ込まれる。痛みはなく、むしろ柔らかく蕩けたような粘膜が機械にごりゅごりゅと嬲られて、また出さずにイッてしまった。ビクッ♡ビクッ♡と痙攣しながら、精液は一滴も出せないままの性器から透明な蜜がいやらしく滴る。アナルがきゅんきゅんと悦んで、玩具に犯される悦楽に意識も曖昧になりそうだ。朦朧として不明瞭で、はっきりとしない。じんじんと身体が痺れて、ソファの柔らかな肘掛け部分に背を預けたままずるずると滑り落ちた。殆ど傑に組み敷かれているような格好だ。
「は、ひ……♡♡♡きもひいい……♡♡♡」
「メスイキ上手になったねえ、さとる」
 何故か嬉しそうに言いながら、傑がバイブの摘まみを弾いてスイッチを入れた。一拍遅れて、ヴヴ、と聞き覚えのあり過ぎる低く唸るようなモーター音。バイブが中で暴れて、固くしこった場所をぐりゅっと押し潰した。
「ッあ♡あ゛ッ♡♡♡待って♡らめ゛♡ぜ、前立腺、らめ♡ひい゛ッ!?」
 ぬぷ♡と、尿道バイブの奥まで到達していた先端が行き止まりの壁を擦った。奇妙な感覚が走った。前と後ろから前立腺を挟み込まれているかのような――
「や、あ゛ッ♡しゅぐう、あ゛ッ♡」
「前立腺はこっちからも弄れるんだよ。どう? 悟。前と後ろから挟み撃ちにされるの」
「ひ♡あ、あ゛っ♡♡♡んッ♡♡やう♡♡♡♡」
 また、要らぬ知識を悟の耳に吹き込みながら、傑が尿道バイブの先端を指先で軽く弾く。何度も。傑がさして力を入れていなくても、少し揺らされただけで強烈な快感に身体が跳ねる。尿道から前立腺を弄られているだけでも頭がおかしくなりそうなのに、後ろでぬぷぬぷと内壁を捏ね回すバイブにまで押し潰され、嬲られ、執拗に虐められて、内側から壊れてしまいそうなくらい気持ちよくて、恐い。
「ねえ、ほら、感想は?」
「ひう♡あッ♡♡あッ♡♡」
 また出さずにイく。二度、三度とそれが続く。これ、癖になって、もう精液出せなくなったらどうなるんだろうと考えるとぞくっとした。
「しゅぐ、ッ♡らめ゛♡♡♡い、いっしょにするの、らめえ゛ッ♡♡♡♡も、取ってよぉ……ッ!」
 震える指先にぎゅっと力を込めて傑に必死でしがみつく。モニターなんてするどころではない。モニターしないと終わらないのに。泣き落としでなんとかなる相手だと思っている訳でもないのに、ぼろぼろと涙が溢れ出て止まらない。でも、涙を指先に優しく拭われながら尿道バイブをゆっくり浅い場所まで引き抜かれて、ほんの少し期待してしまう。中で散々掻き回された精液が、バイブの抜けるスピードに併せて競り上がって来る。
「あ……ッ♡」
 イく、出る、と、頭の中が射精への欲求だけで一杯になり、腰を前に突き出す。だが傑は無情にも、緩く微笑みながらまたぐぷっ♡と尿道の奥へとバイブを押し戻してしまった。ぐちゅん♡と狭い場所に精液が押し込められ、こつん♡と先端がまた前立腺に当たる。その刺激に身体がびくびくと跳ねて、甘くて苦しい絶頂感が悟を苛んだ。きゅんと後ろが収縮してバイブを締め付け、塞がれた出口からたらたらと先走り汁が零れる。
「っいあ、あ゛ッ♡も、やめ、ふあ゛♡あんッ♡♡♡」
「さとる、感想は?」
 こつ♡こつ♡と何度も前立腺を叩きながら、ぐちゅっ♡ぬちゅっ♡と後ろを何度も掻き混ぜながら、傑がモニターしろと要求する。薄く笑みを浮かべた悪魔が目の前にいる。さながら、悟を支配する魔王。その魔王から、目を逸らせない。彼からの支配を、拒めない。
「……ぜ、んりつせん、後ろと前から、っうあ♡ッ捏ねられるの、……き、きもちよくて、ッあ゛……ッ♡」
 言葉の途中で何度も玩具に内側を揺すられて、言おうとしていたことが頭から吹っ飛ぶ。思考力がなくなる。言葉が飛んで行かないように必死で繋ぎ止めながら、たどたどしく説明する声が震えた。
「め、めしゅいき、いっぱいするのも、きもちいい……♡♡♡」
「うん。よく出来ました」
 もはや、軽く頭を撫でられるのも気持ちいい。何処もかしこも、傑に触れられただけで背筋を悦楽が駆けた。
「ご褒美にいっぱい出そうね」
「っあ゛……ッ!?」
 ずるんっ♡と一気に尿道バイブを引き抜かれた。最後に先端が抜けて行くとき、きゅぽん、と間の抜けた音がした。急に擦られた狭い場所の襞がひくひく震えて、いきなり空洞になった拡げられた場所が、もう射精出来ると認識するのに数秒掛かった。
「あ、……ッ♡♡♡」
 その数秒の後、ゆっくりと這い上がって来た精液が、緩んだ穴からとろとろと吐き出されて伝い落ちた。散々我慢させられていたからなのか、精液に勢いがない。溜め込まされた白濁は色が濁って、濃く粘ついていた。
「はひ♡あ♡出て、る♡イッてう……♡♡♡」
 後ろからバイブが抜けていく。その刺激にさえも、ビクン♡と身体が反応する。ぽかりと空いたアナルの縁が赤く染まって、寂しげにひくつく。だらだらと長く尾を引く射精をしながら、ビクッ♡ビクッ♡と腰が震えた。
「……っすぐ、る、」
 ちんぽ挿れて。
 ぼんやりしたままその台詞を口に出しそうになって、――今何を言おうとしたんだ、とその言葉の異常さにギョッとした。その時まだ何かが埋まっているような違和感が拭えない尿道の奥から、精液とは別の何かが競り上がって来る感覚にまたギョッとした。精液とは違う。もっとさらさらで粘度がないもの。正体が分かってしまい、目を見開き、慌てて立ち上がろうとする。当然、力が抜けていて立てる状態ではない。
「っあ、待ってやだ、嘘、やだ」
「どうしたの、さとる」
 傑は急に慌て始めた悟を見てきょとんとしている。ヤバい、出る、と焦りが募る。説明している時間もないくらい切羽詰まっていると意識した途端に、自覚のないところで既に限界まで膨れ上がった膀胱から排出された尿が、しょろ、と性器の先から零れ出た。
「あ、……」
 一度出てしまうと、止めることは不可能だった。ぶるりと身を震わせれば、しょろしょろと止めどなく薄黄色の液体が迸る。革製のソファにぬるい尿が溜まっていく。それを、出しているのを、傑にじっと見られている。羞恥で死にそうだ。
「や、だ……見、んな……!」
 思わず腕で顔を隠した。尿は出続けて、止まらない。生暖かい感触が太股を伝うのが酷く不快だ。微かなアンモニア臭が鼻腔を擽った。もう散々出し尽くして枯れたと思っていた涙がまたじわりと目尻に滲む。
 最悪だ。絶対にドン引きされた。もうバイトクビかも知れない。親友もやめるって言われるかも知れない。最悪過ぎて死にたい。
 ようやく全て出し切るも、羞恥やら申し訳なさやら絶望感やらで傑の顔を見る勇気がない。顔を腕で覆い隠したまま、傑が何も言ってくれない所為で部屋に沈黙が漂った。その沈黙を破ったのは傑だった。
「さとる、」
「う、」
 腕を掴まれ顔の前から払われそうになるが、ぐっと腕に力を込めて傑に抗う。嫌だと首を横に振った。もうここに来なくていいと言われそうで、嫌だ。そんな言葉聞きたくない。だって……傑に玩具使われるのが気持ちいいから。……傑にちんぽ挿れて欲しいから。死んでも言えない言葉が、頭の中をぐるぐる巡る。
「さとる、ちょっと。ねえ、」
 ぐいぐい腕を引っ張られるのになおも抵抗するが、一瞬静かになった傑が次の瞬間さっきまでの比ではないくらい強く腕を引いて来て、顔からべりっと腕を剥がされてしまった。
「っやめ、」
 顔を見られたくない。
 顔を背けようとして、唇に柔らかいものが触れた。思考も動きも停止して、え、と目を見開いた。
 傑にキスされている。傑の顔が至近距離にあって、伏せられた目の上の睫毛まで子細に見ることが出来ることに、脳の理解が追いつかない。ただ身体が硬直して、触れ合った傑の唇が厚くて少し濡れていて、身体の芯に火種でも投げ入れられたみたいに、どろりと奥が熱くなる。
 何故、という疑問だけが脳内をループする。キスなんて今までしたことないのに、まるでそれ以上をねだるように、唇を開いてしまう。傑の舌と自分のを重ね合わせたいと思った。だが傑は悟の口内へ侵入することはせず、唇を離してしまった。
 寂しくなる。咄嗟に掴んで引き留めそうになるが、それをしてしまったが最後、戻れなくなるんじゃないかと踏み止まってしまった。
「……す、傑、」
「……っごめん、」
 ずっと余裕を見せていた癖に、傑が気まずそうに目を逸らしながら謝った。
 なんだよそれ、と思った。何で謝るんだ。いや、何でキスしたんだ。
 訊きたいのに訊けない。顔を俯かせてソファから身を起こす傑のズボンの前を、押し上げているものが目に入ったから。「お風呂沸かすから、入ってから帰ればいいよ」という傑の言葉が、耳を素通りしていく。風呂完備の事務所らしい。
 部屋の奥へと消えていく傑の背中を見つめながら、今更心臓がどきどきし始めた。さっきの唇の感触を思い出そうとするかのように、指を自身の唇にそっとなぞらせてみた。思い出せなくて、もう一回して欲しくなって、自分に苛立ってチッと舌打ちした。